今日から始める美味しい暮らし[ベジカジライフ]
折り畳みナイフのパイオニアが磨き上げた歴史に残る傑作ノコ
「ビジカジ」に始まり、あらゆる分野でカジュアル化が加速する昨今。次のジャンルは? と問われれば、それはズバリ、ガーデニングである! ベジタブル×カジュアル、名付けて「ベジカジ」。週末農家・坂下史郎さんが徒然なるままに書き連ねる、ちょっぴり土臭くて小粋なファッション放談。
週末農家・坂下史郎のベジカジライフ
オピネルのフォールディングノコギリ No.12
「桃栗三年柿八年」とはよく言ったもので、4年前に植えてようやく実をつけるようになった我が家のクリが、今年は例年より多く実った。とはいえ植えているのは一本だけなので、実際に食べるとなると1〜2食分程度だろう。
クリが実をつけるのは夏である。葉がどんどん芽吹き、緑色のアブラムシが大量に発生し始める頃、同じく碧いイガイガの小さな実たちが枝の先に顔を出し始める。ガーデニング界隈では嫌われ者のアブラムシ、確かにびっしりとくっついていてちょっと気持ち悪いのだが、日々観察していると、いる場所がちょくちょく変わっていることに気づく。
日当たりのいいところにみんなで一斉に移動したり、雨の日は葉の下あたりに身を寄せ合って固まっていたり。団体行動があまり得意ではない自分からすれば、こんなに大勢で移動している姿は少し尊敬してしまう(笑)。
話は逸れたが、クリはなぜこんなにも棘に包まれた形状になっているのだろう? 当然外敵から身を守るためだろうが、そこで棘に行き着いたのは相手が嫌がるのがわかっていたからで、そう考えるとなかなか賢い。毒などで食べた後に相手に害を及ぼすのではなく、食べられる前に近寄らないで、と防御することは意外と平和的な解決手段なのかもしれない、と収穫しながらぼんやり考えていた。
とはいえこのクリの木もだいぶ大きくなり、狭い庭に調子に乗って色々な木を植えているので、ここ数年は周りとのバランスが取れなくなってきた(まあ、自然の生存競争に任せても良い気がするが……)。クリの木陰に隠れている草木にも十分に日が当たるよう伸びきった枝を剪定しなければ、とノコギリを引っ張り出した。ハサミで切るには太すぎる枝を剪定するとき、重宝するのがこのオピネルのノコギリだ。ブランドの代名詞であるビロブロック機構という、刃の付け根部分の金具をぐるりとまわして出した刃をロックする作りがクラシックで気に入っている。最近は実用性が伴わないお洒落だけのギアはほとんど使わなくなったが、このノコギリはとにかく手にしっくりきて、サイズ感ともに使い勝手がすこぶる良い。コンパクトに折り畳んでポケットに入れて、ハシゴの上で必要に応じて出し入れできるのも便利である。
ここに居を構えて約8年。植えた木々もそれなりに大きくなってきて、最近はハシゴを掛けて剪定をすることが増えてきた。夕方からぐっと冷え込んでくる今ぐらいの季節は、切り落とした枝たちを焚き火に焚べてワイン片手に暖を取るのが恒例になっている。
オピネルのフォールディングノコギリ No.12
柄元のパーツを回転させることでロックを掛け、刃の誤作動を防止するビロブロック機構を搭載したノコギリ。サイズごとにナンバリングされており、その形状の美しさとも相まってコレクション心がくすぐられる。全長約29cm(収納時約17cm)。4950円(ハイマウント)



坂下史郎
さかしたしろう/1970年生まれ。セレクトショップや著名ブランドのMD職を経て独立。2015年から都内と山梨・塩山での二拠点生活を始め、以来週末の山暮らしがルーティンに。デザイナーとしての顔も持ち、自身が手掛けるブランド「221VILLAGE(221ヴィレッジ)」と「迷迭香(マンネンロウ)」には、その趣向を反映させた街⇄山で活躍する機能服が揃う。
※表示価格は税込み
[ビギン2023年1月号の記事を再構成]文/坂下史郎 写真/丸益功紀(BOIL)