いざ収穫の時! 和歌山&ビーミング by ビームスの綿花プロジェクト

ビーミング ビームス simple yet シンプルイェット

ここ数年、ファッション業界のキーワードとなっている「SDGs」。環境配慮型素材の採用や、長く使えるようにするためのリペアサービスの開始など、その取り組みの内容は実に多種多様……。本連載では「SDSEEDs(エスディーシーズ)」と称し、サスティナブルの種を紹介していきます!

日本のファッション業界を牽引するビームスは現在、和歌山県で完全無農薬の綿花栽培に挑戦しています。その詳細は前回の記事にてご紹介しましたが、今回はその続編。前回から約4カ月が経過し、待ちに待った収穫の時を、徹底リポートいたします!

厳しい気候を乗り越え……

そもそも、このプロジェクトが始まったのは、2022年4月のこと。素材を育てるところから洋服づくりに携わるというかつてない試みで、ビームスのライフスタイルレーベル「ビーミング by ビームス」のメンバーを中心に、生地商社やニッターなど、現地のサプライヤーとともにチーム一丸となって、事業を進めてきました。

ビーミング ビームス simple yet シンプルイェット

昨年収穫した和歌山コットンは、収穫量や着心地の追求を理由に、アメリカ・インド・トルコ・ウガンダの4カ国から仕入れたオーガニックコットンと混紡。その糸でカットソーに編み立て、ビーミングの新ライン「シンプル イェット」から、Tシャツとして9月中旬に発売しました。

ふっくらと空気を含ませて優しく編まれた生地は、とてもソフトな肌触り。かの有名な、アメリカを代表するインナーメーカーのTシャツを彷彿とさせる、ベーシックで着まわしやすいデザインもポイントです。まさに、大人の秋冬コーデにふさわしい出来栄えでした。今年もコットンは大豊作だったので、来年のアイテムにも期待大♪

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しかし……今回の綿花プロジェクトは、決して収穫まで順調に進んだワケではありません。というのも、主たる原因は8月上旬、和歌山県に上陸した台風7号による影響。大雨と強風に見舞われて、畑一面浸水。花を咲かせる直前まで成長していた苗は、倒れたり水に流されたり、全体のおよそ3割が収穫の時期を待たずダメになってしまいました。

種を蒔き直しましたが、昨年に比べて気温の下がる時期が遅く、苗の成長具合はところによってマチマチ。ある程度の収穫量を確保するために、試行錯誤を重ねながら、収穫の日を迎えたのでした。

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しかも、冒頭で少し触れましたが、このプロジェクトでは、完全無農薬のオーガニック製法を採用しています。安全で高品質なコットンを収穫するために、除草剤や殺虫剤を使用せず、雑草の処理や害虫の駆除は全て手作業。もちろん収穫も例外ではなく、アナログな方法で、地道に作業を進めます。

ワタがなっているのは、花が咲き終わった後に残る硬い実の中。ポップコーンのように弾けた状態で、茎にぶら下がっています。ワタは手で摘んで引っ張るとスルッと抜けるから、作業自体は簡単……なんですが、とにかく一株にできる量が多い(汗)。下の方にもびっしりと実っているため、しゃがんだ体勢での作業時間も長く、同じ場所からなかなか動けません。

ちなみに、コットンの名産地であるアメリカの収穫方法は、枯葉剤で綿花を枯らしてから、専用の機械を使って刈り取るのがスタンダード。和歌山では一房ずつ手摘みするので、時間も体力も消耗しますが、触れた時に人の温もりを感じられる、コットンが収穫できるんです。

無事、大豊作でした!

困難を強いられた今年の綿花プロジェクトですが、結果は上々! 11月と12月の二回に分けて収穫をしますが、一回目の取れ高だけでも、昨年の記録、合計約80キロを上回る見込みです。

予想以上の出来を受けて、収穫作業に取り組んだ皆さんも大変な喜びようでした。

育て方を改善して、収穫量をアップ!

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FCプランニングオフィス 野田倫生さん

無事に綿花が育ったのは、やっぱり日頃から畑の様子を見守ってきた現地のサプライヤーのおかげ。糸やテキスタイルの企画製造販売業者である「FCプランニングオフィス」の野田さんは、和歌山とビームスを引き合わせた仲人役。昨年に引き続き、綿花栽培にも情熱を注いで、地域を盛り上げます。

「昨年の反省を活かして、今年は二つの新しい育て方を取り入れてみました。一つ目は種の数を減らして、苗が育つ感覚を広くとったこと。一本一本に日光が当たり、風通しが良くなるように環境を整えました。前回は綿花同士が密集しすぎて、収穫の時も大変だったんですよね。葉っぱをかき分けなければ、コットンボールを見つけられない状況でしたが、今年は比較的スムーズに収穫できたと思います。二つ目は、ある程度まで成長したら芽切りをして、大きい実に栄養を集中させること。この作業のおかげで、取れ高が増えたんじゃないかなと。ただね、どうしても実のなった枝を切り落としてしまうのは、もったいないと思っちゃう。カットしようとしてはためらっちゃって、作業が進まない!なんてこともありましたね(笑)」

気がかりだったけれど、上出来で安堵

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美和繊維工業 代表 風神充宏さん

農地を提供してくれているのは、ニッティング工場「美和繊維工業」の三代目、風神さん。和歌山コットンを使ったTシャツも、ハイブランドの製品も請け負う同社が編み立てています。

「畑の一つが自宅の隣で。台風の影響もあって綿花の成長が気がかりだったので、特に風の強い日や雨降りの朝は、起きてすぐに部屋の窓から畑を眺めて綿花の様子を窺うのが習慣になっていました。昨年と比べると綿花のサイズはやや小さいかも? でも、収穫量自体は増えそうだし、上出来ですね!」

関西のビームススタッフも巻き込みたい

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ビーミング by ビームス 統括ディレクター 村口 良さん

このプロジェクトの発起人で、ビーミングのディレクターを務める村口さんは、東京から和歌山に隔月のペースで出張。現場主義の精神で、プロジェクトの成功に魂を燃やしました。

「部署や立場の垣根を越えて、社内での賛同の声が増えているのを感じています。来年からは、ぜひ他のスタッフにも、プロジェクトに参加してみてほしいですね。新入社員には入社時にプランターと綿花の種をセットで渡して、家で育ててもらうのもアリかも、なんていう話もあります。素材を一から育てる苦労や喜びを知ることで、これまで以上にファッションを楽しめると思います。今後も、この取り組みを広げていきたいですね!」

2024年の春をお楽しみに!

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和歌山コットンを使用した春の新商品は、その製作がすでに進行中。上の写真のTシャツが、そのファーストサンプルです。これからサイズ感やデザインの微調整が入る予定ですが、完成は近々。来年の春に乞うご期待!

問い合わせ先/ビーミング by ビームス
https://www.beams.co.jp/bming/


写真/丸益功益(BOIL) 文/妹尾龍都

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