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ダイワ 漁網アップサイクルプロジェクト

ここ数年、ファッション業界のキーワードになっている「SDGs」。持続可能な社会を目指して、多くのブランドで急速に意識が高まってきています。環境に配慮した素材の採用や、長~く使えるようにするためのリペアサービスの開始など、その取り組みの内容は実に多種多様……。本連載では「SDSEEDs(エスディーシーズ)」と称して、ファッション業界のサスティナブルの種を紹介していきます!

今回ビギンが注目したのは、日本が世界に誇るフィッシングブランド「DAIWA(ダイワ)」のサスティナブルなモノづくり。これまで廃棄されるほか使い道のなかった使用済みの漁網を再生して新たに服へ変換する、「BE EARTH-FRIENDLY -漁網アップサイクルプロジェクト-(以下:漁網アップサイクルプロジェクト)」に取り組んでいます。キーマン、内海さんにお話を伺いました。

教えてくれたのは……

グローブライド フィッシング営業本部 内海輝久さん

グローブライド アパレルマーケティング部 内海輝久さん
2021年入社。フィッシングフィールドで培われたDAIWAの技術力やノウハウをベースとした、アパレルブランドD-VEC(ディーベック)のマネージャー。前職はスポーツ系アパレルメーカー。釣り人歴=勤続年数。「気づけば釣り好きになってしまう環境です(笑)」

「地球に優しく」あるために活動

D-VEC TOKYO EXCLUSIVE ディーベックトウキョウエクスクルーシブ

グローブライドが展開するDAIWAは、ビギナーからプロまで、世界中の幅広いクラスの釣り好きから信頼を寄せられている日本のフィッシングブランド。リールやロッドなどフィッシングタックルを総合的に取り揃えており、釣りをライフタイム・スポーツとして世界中に発信しています。

また、同社はフィッシングを楽しむ重要な要素のひとつ、アパレル製品の開発にも力を入れています。内海さんが総指揮を取るD-VEC(ディーベック)は2017年に誕生。表参道ヒルズなどに直営店を構える他、ファッションの祭典であるRakuten Fashion Week TOKYOへ参加するなど、業界からの注目度も高いブランドです。

スローガンは「Be Earth-Friendly」

ダイワ Be Earth-Friendly

「フィッシング」を軸に事業を拡大しているグローブライド。主たるフィールドである川や海には特別な思いを抱いており、環境保全運動に力を入れています。2010年から「Be Earth-Friendly」というスローガンを掲げて、定期的な清掃活動を加速させたことに加え、市場に出回らなかった未利用魚の料理イベントを開催するなど、地域の漁場と協力したDAIWAならではの活動に注目が集まっています。

アパレル関連としては、海洋汚染の改善につながる環境対応商品「レスマイクロプラスチック フリース」を用いた製品の開発。当連載でも紹介したブリング活動に参画して、衣服の回収事業も行っているんだとか。

そして、サステナビリティのさらなる強化を目的にスタートしたのが、2021年から取り組んでいる漁網アップサイクルプロジェクト。不要になった漁網を使って、漁業関係者が着るワークウエアをはじめ、一般ユーザー向けのTシャツやジャケット、パンツ等を企画・生産しています。

漁網問題って知ってましたか?

ダイワ 漁網アップサイクルプロジェクト

では、なぜ漁網のアップサイクルが必要なのか。それは漁業に使われ寿命を迎えた漁網の処分方法が、環境保全の観点から問題となっているから。というのも、漁網を廃棄する際、現状は埋め立て処分するくらいしか手立てがないのです。そのため、持続可能な社会に向けて新たな処分方法が模索されています。

「実のところ、私もこのプロジェクトに携わるまでは、こんな問題があるなんて知らなかったんですね。しかも多くの場合、一年サイクルで漁網を変えなければならないみたいで。廃棄予定のものは産業廃棄物になりますし、簡単に捨てられない。そこで立ち上がったのが今回の取り組み。北海道各地の漁協を束ねる北海道漁業協同組合連合会、サーキュラーエコノミーを実践する再生資源メーカーのリファインバース社と協力しています」

漁網のアップサイクルは決して簡単ではない

ダイワ 漁網アップサイクルプロジェクト

北海道漁業協同組合連合会では、今回のプロジェクト以前から廃棄漁網の処理問題についてアクションを起こしてきました。しかし、漁網をリサイクルするためには出荷する前に分別しなければならず、部材ごとに分別するには全て手作業が必要になります。人手も時間もかかるので現場の負担になっていることが課題となっていました。内海さんも、「漁網をアップサイクルするのは決して簡単ではない」と語ります。

「ある程度の量が貯まると、よく洗浄してからブロック状に圧縮します。その後、裁断して溶かしチップ状にする工程へ。そのチップを再び溶かして糸にしたら、複数本で撚り合わせてようやく繊維として使用できるスタートラインに立てるんです」

ダイワ 漁網アップサイクルプロジェクト

漁網アップサイクルプロジェクトで使用しているのは、リサイクルナイロン樹脂のREAMIDE®(以下、リアミド)。廃棄物を製品原料として再利用するマテリアルリサイクルの手法を採用しています。環境負荷が少ないので、リファインバース社の調べによると、一からナイロンを製造するときと比べて約85%も削減できるといいます。

一方で、リサイクル業界の主流はケミカルリサイクル。化学や熱を利用して廃棄物を分解し、他の化学物質に転換する方法です。ナイロンの種類が異なっていたり汚れが目立ったりしてもリサイクルできますが、化学的処理の過程で熱加工などを行うため、それ相応のCO2排出を伴ってしまいます。

「マテリアルリサイクルを採用しているのは、うちならではのポイントの一つですね。10者10様のやり方があっていいと思いますが、自然あってこその釣りであり、スポーツですので、なるべく環境に優しい形で新しいものへと変換する方法が望ましい。数値的な根拠やトレーサビリティも明確であるリアミドを使用することは、プロジェクトが始動した当初からのこだわりでした」

漁師の方々も喜んでくれました

ダイワ 漁網アップサイクルプロジェクト

漁網アップサイクルプロジェクトが始動して2年目、2022年2月にコレクションで発表し、今では完成品が北海道の漁師に届けられています。出来上がったのはレインジャケットやサロペット。リサイクル素材を使っているとはいえど、企画しているのは世界のDAIWA。2.5層素材の特徴を活かした軽量性と透湿防水性能を兼備するボディ、防水ジップの採用、二重袖の仕様など細かいディテールにも抜かりなし。品質はオリジナルウエアとなにも変わらず一級品です。

「フィールドテストを繰り返し行い、製品を作り上げるというのがDAIWAの文化。今回も漁師さんに試着してもらいながら機能性やシルエットの調整を進めました。現場のリアルな意見を反映させてこそ、実用性が高まります。漁師の皆さんも喜んで着用してくれていると聞いています。納品した後も、今も北海道漁業協同組合連合会とは密にコミュニケーションをとらせていただいており、次回に向けての構想も始まっています」

やっとここから、一般のお客様にも届けていける

ダイワ 漁網アップサイクルプロジェクト

今年の春夏、リアミドを使用した製品がディーベックから初めて発表されました。セットアップやTシャツに加えて、秋冬にはアウターのリリースも控えています。本格始動するのは2024年の春夏から。プロジェクト関係者だけでなく、一般ユーザーの手元にも、廃棄漁網を使ったアイテムが届けられる予定です。

「ただし、まだまだ課題は山積みなんですけどね」と語る内海さん。その理由は、供給面やコスト面において改善の余地が残されているから。リアミドを使用したアパレル向けの開発は始まったばかりで、漁網アップサイクルプロジェクトで使用されている糸もまだ2種類です。

生地としての品質基準をクリアしつつ安定供給をさせるにはまだ課題も多い状況です。現在リリースされているものも、試作を何度も繰り返してようやくできた渾身作。「計算上ではうまくいくはずでも、いざやってみるとうまくいかないことばかりで(笑)。バージン素材の商品とは違うため、必然的に手間もコストもかかっています。そうしたモノづくりの背景も、お客様に届けていきたいですね」と内海さんは語ります。

「昨年、表参道ヒルズの階段を使ってインスタレーションを行った際、来場されたお客様の関心が想像していた以上にあって驚きました。その後もディーベック直営店では継続して接客の中でこの取り組みを伝えていますが、未来の自分たちにとって大切なアクションであると、この取り組みに共感してくれるお客様が増えてきているようです」

世のメリットになる活動を続けていきたい

ダイワ 漁網アップサイクルプロジェクト

「今、社内ではいろいろなプロジェクトが広がっている最中ですし、やっと一般のお客様にも製品をお届けできる体制ができてきました。これからリサイクル製品の購入がもっと自然なことになってくれば、商品企画も幅が広がっていきますし、お客様も購入する選択肢が増え、お買い求めもしやすくなっていきます」

そして、内海さんはその先の未来も見据えています。

「今回は北海道漁業協同組合連合会さんとお取り組みをさせていただきましたが、我々は現実的に循環型ができる一つのケーススタディを示したまで。将来的には全国の漁業や水産関係の皆様とも協力していきたいですね。また、これに限らず、漁網を取り巻く問題を解決する取り組みが他にも出てくることを望んでいますし、我々は我々のルーツや事業をベースに世の中のメリットにつながる活動を今後も続けていきたいです」

漁網からできた、“海運”Tシャツを捕獲せよ!

 

ダイワ 漁網アップサイクルプロジェクト
ディーベックのRECYCLED FISHNET JERSEY SAILOR COLLAR S/S TEE/1万7600円

7月に漁網アップサイクルプロジェクトの一環として発売されたのが、Tシャツ。海軍のヴィンテージアイテムから着想したデザインで、前身頃は波を彷彿とする切り替え、後見頃にはセーラーカラーが施されています。ネックはつまり気味で、シルエットは少しゆったりめ。漁網でできた一枚を着て釣りに行けば、大漁間違いなし⁉ 一枚でもサマになりますし、インナーにも使えるので、もちろん街着としてもおすすめですよ〜。

問い合わせ先/グローブライド ☎0120-506-204


写真/工藤 恒(アルフォース) 文/妹尾龍都

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