【蕎麦スス流】Vol.93〜全国制覇!? 日本の立ち食いそば〜
蕎麦を使わない変わりだね「よもだそば」のニラ天玉ラそば【銀座】
Vol.93
銀座よもだそば
ニラ天玉ラそば+半よもだカレー
590円+350円
立ち食いそば屋には、稀に「蕎麦」を使わないそばを出すお店がある。では代わりに何を使うかというと、それは「中華麺」。いわゆるラーメンの麺だ。
しかも、つゆはそのまま日本そばの伝統的なスタイルで、鰹出汁と醤油・みりんカエシによるもの。正直なところ、かなりの違和感だ。はたしてそんな調理法が成り立つのか、おいしくいただくことができるのか、心配になってしまう方もいらっしゃると思う。
今回訪問するよもだそば銀座店はそういった変わりだねを取り扱う。名称は「ラそば」。くすっと笑ってしまうネーミングだ。名付け親は本品を考案した社長さんご自身。いろいろと試作をしているなかで偶然発見したらしい。よもだそばのつゆは昆布ダシの旨味の強いもので、これと中華麺が思いのほか相性が良かったのだとのこと。
■つゆ:昆布と鰹節の良いダシ。しょっぱさ控えめでマイルドなカエシ。あっさりしているが旨味あり。
■タネ:ニラ天、シャキシャキしたニラをこんもりとかき揚げにしたもの。衣のサクサク具合とニラの風味のバランスがとてもよい。
まずはさっそく食べてみよう。黄色く細い中華麺をツルッとすすってみる。かるく噛むと小麦粉のふわっとした甘い香りと鹹水(かんすい)のアルカリ感が口中に広がり、あっさりした日本そばのつゆは中華麺の風味を際立たせる。あたりまえではあるが、蕎麦とはまったく異質の風味だ。
糖質成分の多さもあってか、この段階ですでに筆者の脳髄には幸福感が駆け巡り、さらには数分後の血糖値の上昇を予感させるものがある。「これはうまい、もっと食べたい」と思わずにいられない瞬間だ。蕎麦にはないガッツリ感があるといえばいいだろうか。
面白いのは、トッピングとなる具材は蕎麦のメニューそのままであること。今回は「ニラ天玉」をいただいた。筆者も好きなこの店の名物だ。丼の縁によりかかってすっと立つ姿は凛々しい。
まずはこれを端から崩し、サクサクを楽しみながら食べ進む。ある程度攻略してつゆに溶けてきたところを麺に絡めて食べる。後半戦は玉子を割って天ぷらに絡めていただく、といった3通りの楽しみ方ができる。また、想像した以上に中華麺と天ぷらの相性はよい。
表の看板に書いてあるとおり、よもだそばは「インドカレーの店」としても有名だ。前出の社長さんによれば、カレーへの心血の注ぎかたはそばをしのぐものがあったという(とテレビ番組でおっしゃっていたのを見た)。
玉ねぎをじっくり炒めたベースに数種類のスパイス、そして柔らかく煮込まれた鶏肉といった成り立ちは、ルーを使ったいわゆる「そば屋のカレー」とはまったく異なるものだ。とくに筆者がうれしいのはスパイスの本格さ。この日は仕込み直後であったからか、ホールスパイスであろうフェンネルの風味が鋭く、夏の暑さを忘れさせる爽快な刺激をいただくことができた。
ここ銀座店は近隣に高級ブティックや百貨店・ホテルなどが立ち並ぶ華やかな土地柄で、客層のほうもそれに負けないおしゃれなかたをよく見かける。女性のおひとりも珍しくない。また、外国人観光客に備えてメニューには英語表記あり。店内に流れるBGMはコニー・フランシスやニール・セダカといったアメリカンオールディーズ。カウンターは狭いものの清潔・小綺麗にまとめられ、雰囲気のよいお店だ。
券売機にはとくに「ラそば」の表記はないため、まずは普通にそばの券を買い求め、注文時にカウンターで「ラそばでおねがい」と告げればよい。その時点から茹で始めるので、調理時間が数分余計にかかることを覚えておきたい。なお、いくつかある支店のなかで「ラそば」は銀座店でのみの提供となる。
住所:東京都中央区銀座4-3-2 銀座白亜ビル1F
アクセス:JR有楽町駅 中央口 徒歩5分
営業時間:7:00~22:30
定休日:年中無休
評価:3点 ☆☆☆
※本記事は取材当時の情報です(取材日:2023/7/29)
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写真・文/ケビン(平林啓一)
オートバイに乗って900軒の立ち食いそば店を探訪。最盛期には年間300軒を食べ歩く。立ち食いそばチェーン店・個人経営店にかかわらず食す。また、生めん・茹でめん・冷凍めんにこだわらず、どれも大好き。