特集・連載
アンティークウォッチの沼を知るColumn 時計マニアの偏愛モノ語り
センスがエグい腕時計ガイド ビギンは考えました。センスがいい人は、腕時計選びの背景にも光るものがあるはずだ。時計との巡りあわせは、時にその人の生き様までも垣間見えるのです。だからこそ、えげつないセンスを感じさせる愛機の選び方を知りたい! 時計は、持ち主の味(センス)が現れるものだから。 この記事は特集・連載「センスがエグい腕時計ガイド」#33です。
場所を取らないせいか、時計は1本、また1本と増えがちで、気づいたらその道のけっこうなマニアに、なんてケースはありがち。ここではアンティーク時計の沼にハマった先輩に、自身が魅了された経緯などを語っていただきました。
①50年代製のロレックス・バブルバック。②友人から購入したジャガー・ルクルトのトリプルカレンダー・ムーンフェイズ。40年代製。③70年代製のIWC。ペラトン自動巻き搭載。④巨匠ジェンタがデザインしたオメガ・シーマスター。70年代製。⑤18KWGケースのレベルソも所有。これは新品で購入。⑥60年代製IWC。オールドインターらしい気品たっぷり。名機Cal.89搭載。⑦50年代製のエアキング。これも友人から購入。⑧厳密にはアンティークではないが、タグ・ホイヤーが90年代にリリースした復刻カレラ第一弾も最近購入。手巻きのレマニアムーブ搭載のレア品。⑨30年代製のオメガ。これでアンティーク時計に開眼。
「あまり細かなことにこだわらずバラエティ豊かなデザインを服に合わせて気軽に楽しみたい」―スーツスクエア 藤長さん
若い頃から古い家具や雑貨などが好きで、アンティーク時計に興味を持ったのもその流れです。最初に買ったのはこの30年代製オメガ(⑨)。服飾系専門学校に通っているとき、神戸・三ノ宮の古道具屋で購入。デザインやサイズ感、イイ味に焼けた文字盤などをたまらなく愛おしく感じて。今でもとてもお気に入りのモデルですね。
⑨30年代製オメガ
コレクターには特定ブランドやジャンルに絞って集める人が多いのですが、私は自分の装いと照らし合わせ、必要と思う時計をコツコツ収集してきました。
金釦のブレザーには金張りのルクルト(②)が似合うぞとか、茶のローファーにバブルバック(①)の枯れた色を合わせたら粋かも、といった具合。実際毎日そんな感じで時計と装いの合わせを楽しんでます。残念ながら周囲はなかなかそのこだわりに気づきませんが(笑)。
左から①バブルバック、②ルクルト
ちなみに完全オリジナルの状態以外は価値がないと断じる人もいますけど、私は研究者じゃありませんし、もう少し気楽に向き合っています。文字盤や針が当時のモノじゃなくとも、それをわかった上で全体の雰囲気が気に入れば買うこともある。どうしても気になるなら、あとでオリジナルの針や文字盤を探せばいいんですから。
いま若い世代でアンティークの時計が注目されているようですが、気持ちはわかります。古いモノを大切にするのは時代のマインドとも一致しますし、雰囲気ある佇まいは装いの格上げにも効く。何よりデザインのバラエティの豊かさが楽しい。
人気ブランドは値段が高騰するばかりですが、探せばお値打ちアンティークはまだある。一緒に沼にハマりましょう(笑)。
最愛の1本は金張り角形ケースのルクルト。サイズもデザインも完璧♡
語り人
スーツスクエア TSC商品部 副部長
藤長 淳さん
某大手アパレルのチーフデザイナーを経て2011年入社。バイヤー兼企画として活躍。古い時計が好きで、今回お持ち頂いたのは一部。
[ビギン2023年8月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。