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数年の間に世界を一変させる可能性を秘めた「DX(デジタルトランスフォーメーション)」にフォーカスする連載「プロジェクトDX」。時代の変化やニーズにDXを通じて応える優れたサービスの開発者やその現場を訪ね、未来を変える可能性やサービスに込められた思いを紹介していきます。

SNSが発達し、学習方法も多様化しました。スクールやセミナーなどリアルの学び場へ行かずとも、スキルアップがオンラインで完結できる時代です。そんななか、近年勢いを増しているのが音声メディア。ラジオ、ポッドキャスト、オーディオブック、SNS音声プラットフォームの4種類に大別され、それぞれで学習系の番組も充実しています。今回は2021年3月にローンチされた、プロから直接学ぶ音声メディア「VOOX(ブックス)」をご紹介します。

プロジェクトDX 〜挑戦者 No.14〜一冊を10分×6話でお届け! 音声メディア「VOOX」

VOOX代表 洪 貴花 。1990年生まれ。中国出身。2012年三井物産入社。社内起業を果たし、2021年にVOOXを立ち上げる。

ビジネスパーソンの学びを支援するVOOX。ベストセラー本やビジネス書の内容を、著者の肉声データに変えてユーザーに届けるアプリケーションです。新作は月に4本〜6本追加され、最新話は公開から2週間無料で楽しめます。現在120タイトル以上のコンテンツがアーカイブされており、有料会員に登録すると過去作も全て聴くことができます。スキマ時間を活用して知識をインプットしたいと考える、全ての人々に役立つ学習系音声メディアです。

ユニークなところは、話し手がナレーターや声優ではなく、著者本人だということ。本の内容が本人の肉声で耳に届くと、まるで講義を受けているようなライブ感があります。目で文字を追うよりも頭に入りやすいと、ユーザーからも高評価の感想が寄せられています。

さらに、おもしろいのが一冊を一話10分の6部構成に編集しているということ。10分単位なので洗濯や掃除の最中に聴きやすく、重要な部分を拾い上げてくれているので情報も効率よく入手できます。顔出しNGでベールに包まれた著者も、VOOXならば本人の肉声を聴くことができます。音声メディアならではの強みを活かしたスペシャリティにも注目が集まっています。

こうした特徴はVOOXの名前にも反映されており、“V”はVoiceの頭文字、“X”は10分という意味を表します。間に“OO”を挟んだのは、発音をBooksと揃えるため。同じブックスでも、こちらは掃除機をかけながらでも読める、もとい聴けるので、家事で1日が終わってしまう休日がもっと有意義になります。VOOXを利用すれば、“学び”に対しての概念が大きく変わります。

「はじめは、一冊100話くらいを想定していたんです。でも、それじゃ一つのコンテンツを仕上げるのに大変すぎて。聞き手もシリーズ全作を聴く時間なんてないですし(笑)」と、笑いながら失敗談を語ってくれたのは、VOOX代表の洪貴花さん。ブックスを立ち上げたきっかけは、洪さん本人が音声メディアのヘビーユーザーだったから。

「海外の音声サービスを使っていて、日本版もあったらいいなって。もともと読むより聴く方が、内容を理解しやすいタチなんです。本を読み始めると30分で寝てしまいます(笑)」

興味をそそる高い編集力が、コンテンツを豊かにする

三井物産グループの社員や組織からのアイデアをもとに「0→1」の新しい事業を自らつくり出すことを目的に立ち上げられたベンチャースタジオ。2018年8月に誕生し、米国と日本に拠点を持つ。

洪さんは根っからのビジネス畑で、エンジニアの経験も知識もゼロ。丸腰で挑んだ新しいビジネスの創造を後押ししたのは、洪さんが所属する2018年設立の三井物産グループMoon Creative Lab Inc. (以下、ムーン)。三井物産グループ社員や組織からのアイデアをもとに新規事業開発、インキュベーションを推進するベンチャースタジオで、ムーン所属のエンジニアやデザイナー、プロダクトマネージャーなどの専門スタッフが事業アイデアの可能性や潜在力を引き出し、成長をサポートします。

VOOXの編集は、洪さんを含め5人の編集者が担当。外部編集者も在籍しており、編集長にはビジネス書籍や雑誌の編集に30年以上携わっている岩佐文夫氏が就任しています。

「最初はVOOXの社員だけで運営しようとしていましたが、全く魅力的なコンテンツに仕上がらなかったんです。私に関しては営業職が長かったので、どうしても合理主義なところがあって。教科書のような正しいコンテンツは作れますが、それって欠点はないけど面白くない。学校のカリキュラムみたいな(笑)。予定調和で、たとえ学びの意識の高い人がユーザーに多くても、それじゃ飽きられてしまうと思ったんです」

原稿は用意しない。生の声を活かしたデータにまとめる

わかりやすく会議の内容はイラスト化。ホワイトボードにその痕跡を発見した。

VOOXでは、コンテンツの内容を月に一度の企画会議で決定しています。著者に依頼するときは、話の手引きとして箇条書きにした簡単な質問を用意するのみ。多くの場合、ムーンのミーティングスペースに設けた即席のスタジオで10分×6回にわけて収録をしています。

「できる限り著者の喋り方の癖を残したいと思っています。こちらから台本を用意して、一言一句話すことを決めたりしない。収録もほとんど一発録りみたいな感じで進んでいきます。ほとんどの場合は録音データの編集は行いません。ただ、人によってはインタビュー形式がいいと言われる方もいるので、一番その人らしさが伝わる方法で柔軟に対応しています」

コンテンツの内容は、ビジネスに化学、生き方や自己啓発までさまざま。宇宙や少年院、夜の街の話などニッチな層に向けたテーマも準備されています。反響のあるジャンルは、仕事や日々の悩みなど身近なテーマに関するもの。最近では哲学について話したコンテンツが、VOOXチームの予想に反して人気だったようです。

VOOXのアプリを開くと、コンテンツを選べるページに。画面に写っているのは、小野龍光氏。

「場合によっては、本を出版されていない方に出演いただくこともあります。例えば、私が編集を担当した僧侶の小野龍光さん。もともと彼はベンチャー経営者で投資家でした。あまりにも急な人生転換の理由や、出家してからの心境の変化をフリートークしていただきました」

原作の魅力を最大限引き出して、満足度を上げていく

「他メディアといかにして差別化を図るかという質問をよく受けます」と、ビギンの質問に笑って答えてくれる洪さん。今や音声メディアは数多ありますが、「VOOXVOOXのコンテンツを充実させていくことが大事」と話します。

「差別化に躍起になったところで、ベンチャーができることは限られている。それに、ChatGPTみたいな人工知能チャットボットがいきなり社会を変えてしまうこともある。だったら、私たちは今VOOXを利用してくれているユーザーを大切にして、そして満足してもらえるように全力を尽くしたい。それを続けていれば、自ずとキャラクターになっていくと思っています」

洪さんによると、ユーザーの6割がコンテンツをきっかけにして、その書籍を購入しているんだそう。VOOXは音声を通して人と著者をマッチングさせ、本の魅力を広める役割も果たしています。この6月と7月は2か月にわたって、VOOXのコンテンツをまとめた書籍を発売予定。リリースを記念したイベントの開催も控えており、会場はファンの集いの場になりそう。

「以前はインプットとアウトプットの両方を提供できてこそ“学び”の音声メディアであると考えていました。ですが、実際にVOOXを運営してみてそうじゃないと気づいたんです。我々は我々が楽しい、有益である、そんな風に思えるコンテンツをお届けすればいい。あとは聴く人の自由。気楽な気持ちで聴いてもらえたら嬉しいですし、内容が少しでも聴く人のインスピレーションや生活の助けになれば十分です」

著者の肉声で聴く新感覚。原作を読みたくなる音声コンテンツ


正直なハナシ、筆者はラジオ以外あまり親しくなかったのですが、この取材を機にVOOXをダウンロードして自分もコンテンツを聴いてみました。選んだタイトルは、経営学者の楠木建さんの『絶対悲観主義』という本。著者が好きで一度読んだことがありましたが、肉声で聴くと親近感が湧き、まるでラジオを聴いているような感覚に。音声もクリアですし、なんといっても10分ずつに編集されているから、聴き始めるハードルが低い! 職業柄、活字絶対信者なところがありましたが、これはこれでアリ。もう一度、本を読み返そうとページを捲るきっかけになるほど、私にとっては大満足の体験でした。

通勤中の満員電車に揺られながら、可愛い愛子の育児中に片耳で。VOOXは日々のちょっとしたスキマ時間を、頭と心の成“聴”期に変えてくれそう。“本を聴く”体験を、ぜひあなたも味わってみてください。


写真/大見謝星斗 文/妹尾龍都

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