string(38) "https://www.e-begin.jp/article/364429/"
int(1)
int(1)
  

ひと昔前までは事務用品として、実用性が最重視されていた文房具。近年は会社支給から個人で購入するものとなり、どうせ自腹で買うなら自分の好みやスタイルに合うものを使いたい、と考える人が増えている。そのため、様々なテイストの文房具がお店にも並んでいるが、中でも「かわいい」は一大ジャンルのひとつだろう。

しかし、この「かわいい」という言葉、日常生活でもよく耳にするが、改めて考えてみるとその定義は難しい。英語の「cute」は対象が持つ属性を表現するものなので、ある程度類型化できるという。いわゆるベビースキーマ(幼い動物が持つ身体的特徴)、体に対して大きな頭、短い手足、ぎこちない動作などがそれにあたる。

これに対して、日本語の「かわいい」は対象を見る側の胸の内に生じる感覚である、という説がある。そのため、対象の特徴として一律に定義づけることは難しいのだ。「cute」なもの、例えば赤ちゃんや小動物は多くの人が「かわいい」と感じるだろうが、虫や爬虫類、無機物など「cute」とは言い難いものであっても、人によっては「かわいい」と感じることがある。なので、英語でも「かわいい」は「kawaii」と表現される。「cute」を含みつつもさらに幅広い、日本独自の概念といえるだろう。

そしてどうやら「食べ物」に対しても、日本人は「かわいい」と感じるらしい。ペットに「ショコラ」や「きなこ」といった名前をつけるのも、その表れだろうか。文房具に対しても例外ではなく、かわいい系文具には食べ物絡みのものが少なくない。スイーツやクリームソーダをデザインのモチーフとして直接的に取り入れるケースのほか、ペンなどの筆記具では本体やインクの色に美味しそうな名前がついていることもある。

今回紹介する「ユニボールワンP」は、三菱鉛筆の人気ゲルインクボールペン「ユニボールワン」シリーズから最近発売されたもので、まさにこうした「かわいい」のエッセンスがてんこ盛りだ。

まず目を引くのは、小さくてコロンとした形。ベースとなった「ユニボールワン」と比べてもその違いは明らかで、クリップまでむぎゅっと圧縮されたような太さと短さだ。これはまさにベビースキーマの一種である、といえるだろう。

そして軸の色である。合計8色のカラーバリエーションでどれもかわいらしいが、注目したいのは色名だ。ボール径0.38mmが「もも」「コーヒー」「みかん」「はっか」「ソーダ」、ボール径0.5mmが「バナナ」「ヨーグルト」「ぶどう」と、いずれも食べ物である。メーカーの三菱鉛筆によると、これは「小さくてかわいいキャンディから着想を得た」らしい。キャンディをかわいいと感じるのは、まさに日本的な感性ではないだろうか。

かわいさ以外の点でも、ユニボールワンPはなかなかおもしろい。この短さでありながら、リフィルが他のユニボールワンシリーズと共通なのだ。本体がリフィルとほとんど変わらない長さなのにどうやって?と思ったら、なんとノックの中にまでリフィルが刺さっている。本来であれば、リフィルの先端とノックの間にあるはずの、ペン先を出し入れする機構もノック部分の中に入っているとのこと。

これにより、ノックがユニボールワンよりもかなり太めになり、それに合わせて本体軸も太めになった、とも考えられる。短さともあいまって、コロンとした独特のシルエットが誕生したわけだ。

そしてこの短さと太さが、携帯用の筆記具として使い勝手がいい。近年流行中のM5サイズのシステム手帳や、ポケットサイズのメモ帳との相性も抜群だ。小さめのバッグにもポンと放り込んでおけるし、ジーンズの前ポケットに挿してもジャマにならない。

ただ、一般的な筆記具と比べかなりの太軸なので、人によっては書く時に違和感を覚えるかもしれない。細軸に慣れている方は、店頭で試し書きをしてから購入するほうが良いだろう。ちなみに、太いペンが好きな私は、試しに1本買った後で気に入りすぎて、すぐにもう1本別の色を買い足してしまったぐらいだ。

余談だが、SNSを見ると2本以上購入しペン軸の上下を入れ替えて、オリジナルのツートンカラーを楽しむアレンジをしている人も多いようだ。……あれ、キャンディで2つ一緒に食べて味が変わるって……ブルボンのキュービィロップではないか!なつかしい〜(と思って調べたら、まだまだ現役で販売中らしい)。

キャンディでもペンでも、かわいくて美味しい、自分だけの組み合わせを見つけるのは楽しいものだ。ふたつ以上のカラーを手に入れたら、ぜひ味変も試してみてほしい。

三菱鉛筆
ユニボールワンP

550円
https://www.mpuni.co.jp/products/ballpoint_pens/gel/uniball_one/one_P.html

※表示価格は税込み

ヨシムラマリ

ヨシムラマリ

ライター/イラストレーター。神奈川県横浜市出身。子供の頃、身近な画材であった紙やペンをきっかけに文房具にハマる。元大手文具メーカー社員。著書に『文房具の解剖図鑑』(エクスナレッジ)。

文房具(グ)ルメとは? 価格やブランド名だけでは価値が計り知れない、味わい深い文房具の数々。フランス料理店でシャンパングラスを傾ける記念日もあれば、無性にカップ麺が食べたくなる日もありますよね? そんな日常と重ねあわせて、文房具に造詣の深い気鋭のイラストレーターが気になるアイテムとの至福のひとときをご紹介!

特集・連載「文房具マニア・ヨシムラマリの文房具(グ)ルメ」の最新記事

ユニボール ワンPは「美味しくてかわいいキャンディ!?」

Begin Recommend

facebook facebook WEAR_ロゴ