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SHAKERのLADDERBACK CHAIR

用途に対して完璧に設計されている

昔から好きなシェーカーボックスというオーバル型の箱があるんですが、ふと「シェーカーって何だ?」と気になって調べたのがこの椅子を知ったきっかけでした。

シェーカーというのはプロテスタントの一派で、18世紀にイギリスからアメリカに移って大きくなった教団。彼らの生活様式が今で言うシンプルライフに近いものだったんです。

自給自足をしながら、必要最低限のものを極力自分たちで作る。共同生活を送る中で、飲酒も喫煙もせず、住宅にも無駄なものは置かない。家具や内装もシンメトリーに配置したり、整然とさせていたというのを後から知りました。

この椅子も、教徒の中にいた職人さんが作ったもの。彼らの家の壁には部屋を囲むようにペグボードが付いていて、例えば掃除するときなど、そのペグにこの椅子を掛けられるように設計されているんです。

だから、丈夫だけどすごく軽い。デザインも綺麗ですが、それよりも用途に対して完璧に設計されていることが用の美の究極だな、と。

壊れたら自分たちの手で直していたそうで、アメリカ=消費大国のイメージとは正反対なのも面白いですよね。現代のサスティナブル観にも通じると思うし、外出自粛という今の状況で、自分たちのコミュニティ内で生活を成り立たせていた彼らから学べることもある気がします。

僕自身は現代っ子で都会っ子なので、同じ生活は送れそうにないですが(笑)、できないからこそ、リスペクトを感じるんですよね。(南 貴之)

「用の美や シンプルライフが 知恵の跡」

SHAKERのLADDERBACK CHAIR

BRAND:SHAKER
ITEM:LADDERBACK CHAIR
AGE:1921

1830年頃には教徒の中で定着し、数千脚以上が生産されたというシェーカー家具の代表型。座面が埃を被らないよう、天地逆さで吊り下げるのが一般的だった。9万5000円(ヒビヤ セントラル マーケット / キャビネット オブ キュリオシティーズ)

DETAIL

SHAKERのLADDERBACK CHAIR

上にかけて広がる背もたれなど、座り心地のよさやその他の実用性を求めてたどり着いた無駄のないフォルム。見た目にも美しい。

SHAKERのLADDERBACK CHAIR

編み込みの座面は当時のオリジナルのまま。天然の植物製の編みひも以外に、カラフルな布のテープが使われている個体も存在する。

南 貴之

南 貴之

1976年生まれ。国内外のブランドのPR業、グラフペーパーの主宰など、型にはまらず活動中。公私混同しながら世界中のマーケットを巡り、日々新たな良品を探し求めている。

 


[ビギン2020年7月号の記事を再構成]写真/上野 敦(プルミエジュアン) 文/今野 壘

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