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ここ数年、ファッション業界のキーワードになっている“サスティナブル”! 持続可能な社会を目指して、メゾンブランドから個人ブランドまで、SDGsへの意識が急速に高まっています。長く使えるようにするためのリペアサービスや環境配慮型素材の採用など、その取り組みの内容は実に多種多様……。本連載では「SDSEEDs(エスディーシーズ)」と称して、名門ブランドのサスティナブルの種を紹介していきます!

今年、ブランド生誕115周年を迎える「コンバース」。オールスター、ワンスター、ジャックパーセル……など名作モデルが頭に浮かびます。激レアなヴィンテージ品もいいし、自分が履き込んだプライスレスな一足もいい。デニムのように愛着があるから、“ソールがすり減って履けないけれど捨てられないコンバース”がシュークローゼットに眠っている、な〜んて話もよく聞きます。

ですが、昨年11月、そんなコレクション化した一足を救済する、世界初のオフィシャルリペアサービスが始まったんです。日本にシューケアの文化を根付かせた「R&D(アール&ディー)」とタッグを組むことで、これまで難しいとされてきたソール交換が可能に! 今回は、東京・浅草にある「アール&ディー」の直営店「FANS.(ファンズ)」で行われたリペアの様子をお届けます。

教えてくれたのは……

「R&D」神谷さん
約10年間、街のシューリペアショップで経験を積み、現場スタッフとして2020年に入社。所属店舗を持たず、デキる助っ人として都内の直営店を転々と飛び回る。「もともと古着やヴィンテージシューズが好きで。モノの歴史をつないでいくリペア業界に飛び込みました!」

バルカナイズ製法ゆえに、修理が不可能だった!


オールスターやジャックパーセルは、アッパーとアウトソールの圧着にバルカナイズ製法を採用しています。熱圧着されたゴム製ソールは、屈曲性が高く加水分解などによる経年劣化も起こしにくいのが特徴なんですが、その一方で、踵がすり減ってもソールを交換できないというデメリットもあります。

無理矢理お直しをしようとしても、アイコニックなヒールラベルやフリクションテープの意匠が修理の難易度を上げてしまう要因となり、「コンバース」はオフィシャルでリペアサービスを展開してきませんでした。

そうした状況に対して、「コンバースジャパン」には、「どうにか直す方法はないのか⁉」「思い出の一足を長く履き続けたい!」とスニーカー愛好家から修理についての要望が多数寄せられ続けていたんだそう。

老舗のシューケアメーカーが救世主に

「コンバースジャパン」では、環境問題に対する取り組みの一環としてもスニーカーのリペア方法を模索。日本中のリペアショップに相談を持ちかけて、理想のクオリティを保障してくれる協力会社を探していました。

そこで白羽の矢が立ったのが、1975年創業の「アール&ディー」です。同社の起源はシューケア用品の輸入業者。当時シューケアの概念が浸透していなかった日本に、ヨーロッパから革靴用のワックスやクリームを仕入れ、革靴をケアしながら長く履く文化を広めていきました。革靴好きなら誰でも知っているシューケア用品ブランド「エム.モゥブレィ」も、「アール&ディー」のオリジナルです。

「エム.モゥブレィ」など、多数のシューケア用品が店頭に並んでいる

現在は「エム.モゥブレィ」の直営店「ファンズ」を、都内を中心に全国に9店舗展開中。どの店舗にも、一般社団法人 日本皮革製品メンテナンス協会が定める靴磨き・革靴お手入れ技術者“シューケアマイスター”が在籍し、質の高いサービスを提供しています。

間に合わせではない修理を心掛けています


実は同社が靴のリペアに着手したのは、今からおよそ4年前。「修理も一緒にしてほしい」という顧客からの熱い要望に応えるため、経験豊富な腕利きの職人を招集し体制を整えました。彼らのリペア技術に老舗のシューケア専門店ならではの視点を掛け合わせた、長持ちさせるための修理サービスを提供しています。

「当社はカウンセリングをていねいに行い、じっくり時間をかけて一足一足に向き合います。それは元通りの状態に戻すのではなく、長く履き続けるための処置を施す感覚に近い。そうした情熱が、コンバースさんにも届き、今回お声かけいただいたんだと思っています。」(神谷さん)

構想から2年の月日を費やし始動
全4種類!オリジナルのリペアメニュー

オフィシャルリペアサービスは、踵のすり減りやサイドテープの剥がれやオールスター クップシリーズのカップインソールの交換など、日本国内における正規品のみを対象に、「ヒールリペアA」「ヒールリペアB」「サイドテープリペア」「オールソールリペア」の全4種類のメニューが準備されています。

今回はその中から、ユーズドのオールスターを使用した「ヒールリペアA」の修理工程にクローズアップ。削りから貼り付けまで、大きく分けて工程は7つもあります。

不可能を可能に変えたソールパーツ


「ヒールリペアA」に使用するのは、こちらのソールパーツとヒールラベル。どちらもオフィシャルリペアサービスならではの修理用アイテムです。特にスペシャルなのが、「コンバースジャパン」の技術チームと「アール&ディー」が協力し発明したソールパーツ。何度も失敗と試作を繰り返し、ようやく完成に辿り着いたという代物です。オリジナルソールと同じゴム素材を採用し、歩行時の快適性、デザイン性、接着のしやすさを考慮したつくりになっています。

種類は3色3サイズ


このソールパーツが出来上がったことにより、オフィシャルではフォローできていなかったヒールの交換ができるように。パーツはスニーカーのサイズに合わせて、あえてひと回り大きいものを貼り付け、削って形を整えます。気になる修理工程は下をご覧あれ♪

工程①~③
職人技が試される削り作業

数ミリ単位で傾斜を調整

修理の工程において一番神経を使うのが、ヒールパーツの傾斜に合わせてソールの踵部分を削ること。数ミリ単位の調整が必要とされるため、限られた職人しか担当できないんだそう。

「修理内容は至ってシンプル。革靴のヒール交換の際にも使う技術を使用するのですが、コンバースの場合はソールの傾斜を合わせるのに繊細な力加減が必要で」(神谷さん)

工程④〜⑥
耐久性を左右する貼り付け作業

凹凸をつけて接地面を増やすことでガッと接着!


修理を可能にしたもう一つのポイントは、強力な接着剤の存在。粘度が硬ければよくくっつくが、それは瞬間的なもので、歩行中に直ぐ剥がれてしまいます。そこで今回のリペアサービス専用に、数十種類の中から厳選した接着剤を独自のレシピで配合し、コンバース仕様のオリジナル剤を開発したんだそう。表面を削ることで接着面の表面積を増やし、素材に浸透しやすくすることで、パーツとソールをくっつけ、はがれにくくなっています。

工程⑦:最後にヒールラベルを貼ったら……

「ラベルはゴム製で伸縮性があるため、少し左右に引っ張りながら貼り付けるのがポイントです。その力加減が意外と難しい。最後の仕上げまで本当に気が抜けません」(神谷)

ヒールパッチ全部で14種類。現行モデルとほぼ同じデザインの一枚を貼り付けてくれる

オフィシャルだからこそのクオリティ
すり減ったソールが美しく蘇る!

右:修理前の右足 左:修理後の左足
右:修理前の右足 左:修理後の左足

仕上がりはご覧の通り。プラスのオプション料金を支払えば、ヒールをぐるりと磨いてくれナチュラルな色合いで美しい後ろ姿に。黒いラインテープよりもヒールがすり減ってしまっている場合でも、パーツを追加すれば修理可能です。新品で購入するのとは違い、アッパーのユーズド感はそのままなので、自宅に眠っているオールスターも再び第一線で活躍することは間違いなし!

全国各地から問い合わせが殺到中です


「まだサービスを開始してから一年経っていませんが、浅草本店には一日に6件くらいのペースで問い合わせをいただいています。オンラインや郵送でスニーカーを拝見し、修理できるかできないかの判断をさせていただいている状況です。オーナーが受付を担当してくださっているのですが、午前中はコンバースの修理対応だけで終わっている日もあるようで(笑)。皆さんに喜んでもらえるように、これからもどんどんリペアをしていきたいです!」

変化をしても、普遍的なまま
115周年目の新しいコンバース

「コンバース」は、2019年にエコ素材やエシカル素材を使用するサステナブルシリーズ「コンバース e.c.ラボ」、2021年にソールの張替えが出来るブーツタイプのシリーズ「ロングライフ」を次々と展開。それに続く取り組みとしてローンチされたオフィシャルリペアサービスは、「思い出の一足をもう一度履くことができてうれしい」と長年のファンからも反響を呼んでいます。

さらに、今年からアニバーサリーを記念してコーポレートロゴを一新。同じタイミングで、リサイクルマテリアルを使用したオールスターの次世代モデル「オールスター Ⓡ(オールスター アール)」も新たにリリースされました。環境に優しいだけでなく、デザインも快適性も妥協しないニューモデルとあって、こちらの売上も好調なんだとか。

未来に向かって、より良い変化を続けていく。「コンバース」のシューリペアサービスの取り組みを利用して、シュークロゼットの一足を蘇らせたら、あなたも将来に向けて新しい挑戦ができるかも⁉

履き潰したコンバースが命を吹き返す!

メニューは全部で4種類。“元通りに戻すのではなく、長く履くためのリペア”をモットーに、再びお気に入りのコンバースで出かけられるよう、履き潰した一足を美しく蘇らせてくれます。なお、オフィシャルリペアサービスの対象スニーカーは日本国内における正規品のみ。また、オールスターにジャックパーセルのヒールラベルを付けるといったカスタマイズは行っていないので要注意。

ヒールリペアA
オリジナルのソールパーツとヒールラベルを使用して踵のすり減りをカバー。対象モデル:オールスターとワンスターシリーズのホワイトテープ×ブラウンソール、ホワイトテープ×ブラックソール、ブラックテープ×ブラックソール。5500円(税込)

ヒールリペアB
踵のすり減りをオリジナルソールパーツで補強。新しいオリジナルヒールラベルを貼り付けて修理。対象モデル:オールスターのオールホワイト、ジャックパーセルのホワイトテープ仕様のアイテムなど。4950円(税込)

サイドテープリペア
ソールとアッパーの隙間に入った汚れを除去。コンバースオリジナルのラストで成形しながらテープを圧着。対象モデル:オールスター、ジャックパーセルなど。2200円(税込)※片足

オールソールリペア
オールスター クップシリーズのカップソールを交換。ソールとアッパーを縫い付けていたステッチを解いて、ソールをまるごと交換。対象モデル:レザー オールスター クップ OXと同様のホワイトソールのアイテム。 1万1000円(税込)
(問)
コンバース オフィシャルリペアサービスセンター 
03-5811-1831

写真 /宮前一喜 文 / 妹尾龍都

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