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浅草ゴッドハンド探訪 前編

日本の製靴の聖地「浅草」でゴッドハンド探訪[前編]

職人の街・浅草は名工ひしめくシューメイキングの聖地。ココで生まれ育った新米編集・オオヤマが同地の靴作りに詳しい荒井さんとともに、神ってる職人芸の数々を訪ねます!
 

新人オオヤマがゆく!

新人オオヤマがゆく

 

案内人

荒井弘史さん

浅草の靴作りを知り尽くす
荒井弘史さん

1972年生まれ。山形の老舗メーカー「宮城興業」で10年以上経験を積んだのち独立。現在は自身で製靴業を営みながら、拠点とする浅草の職人たちと交友を深めている。

 

今知るべきは“浅草・靴デルタ”だ!

浅草・靴デルタ

多くが分業制で各工程ごとに特化した職人たちが連携を取りながら一足一足の完成を目指していくことで、より高いクオリティを実現している浅草の靴作り。達人たちは浅草各所に存在するが、特に明治通りや隅田川に囲まれた、左の三角地帯の内側はそれが顕著で、ビギンはこのエリアを“浅草・靴デルタ”と勝手に命名!

一枚の革が立体的なグッドデザインのシューズになるまでの流れが、この中だけでも完遂できちゃうほど密集しているのが特徴だ。荒井さんのナビゲートのもと、そんな重要スポットに早速オオヤマが足を踏み入れる!

オオヤマ 荒井さん

オオヤマ「生まれ育った街に神が潜んでいたなんて!」 荒井さん「知らない世界をお見せしましょう」

完成までの順を追いつつ、神ワザ職人芸を覗き見!

配属3か月のド新人ながら、生まれも育ちもこの浅草ということで今回白羽の矢が立ったオオヤマ。この日は朝イチで荒井さんのもとを訪れ、挨拶を済ませると早々に街へと繰り出すことに。

路地を曲がれば「あ、この公園……。私、小さい頃にここで遊んでました!」と、どうでもいい情報を小出しにしてくるオオヤマをあしらいつつ、荒井さんがまず連れて行ってくれたのは革の裁断を手掛ける西川商店。

工房といえど門構えは至って控えめで、ガラスの引き戸に“金鳥中敷”の文字とロゴがあるのみ。この地に長く住んでいたオオヤマも一人歩きだったら確実に素通りしていそうだ。我々を迎え入れてくれた西川さんは、製靴業に携わって50年という超ベテラン。

荒井さん曰く「靴の性能や外見に大きく影響する作業だから、靴作りの工程の中でも一番優秀な人が担当することが多い」んだとか。

西川春夫さん

なめされたレザーを台に置き、手際よく金型を機械でプレスして裁断を続けるその手捌きもさることながら、瞬時に革の適正部位や方向を見極める審美眼にも脱帽だ。

その様子に感動したオオヤマは「ぜひご自身のお写真も!」と詰め寄るも、「恥ずかしいから俺はいいですよ(笑)」と西川さんはバッサリ。結局、50歳下の新米編集の圧に負け、撮影に応じてくれた西川さん。革のニオイで満ちた工房の壁に貼ってあったお孫さんからの手紙にほっこりしつつ、この場を後にした。

次の職人さんはめちゃくちゃ若いですよ。でも、ウデは確かです」と、しばらく歩いた先には、まだ20代の男女が切り盛りしている新進気鋭の工房が。

谷本 花さん

片隅に古きよきロックのレコードが置かれた作業場で、黙々と手を動かしていく2人。探訪の舞台はいよいよ靴の立体化の工程へと移っていく……!

【裁断の神】西川春夫さん

メーカーが靴のデザインを決めて、まず行われるのがパターン作り。西川さんの仕事はこのパターンの形に製作された金型を使ってアッパーの素材となるレザーを切り出していくことだ。

しかし、単なる型抜きのように簡単にはいかない。何せ天然のレザーはクセや傷も少なくなく、この型入れ次第では製品の見た目や機能が台無しに。革の特性を見極め繊維の脆い部位は避けながら、革を無駄なく使い切るという両極が求められる。

革は方向によって伸縮性が変わるため、そこにも計算が必要だ。ちなみに型をプレスする裁断機の圧力はなんと18t。危険も伴う、集中力が不可欠な重要工程なのだ。
 

ムダなく裁断する技術

裁断機

荒井さん「イイ革靴を作るうえで超大事な工程」

緻密裁断

オオヤマ「“革の目”を読んだ緻密裁断が革靴作りの出発点なんですね」

西川春夫さん

【裁断の神】西川春夫さん

昭和2(1927)年に中敷作りから製靴業をスタートした父の後を継いだ2代目。自身もこの道半世紀以上という正真正銘の熟練職人で、74歳になった今も有名デザイナーズブランドからの依頼が絶えない。

【製甲の神】谷本 花さん

手縫いモカシン
一針ずつ作られる手縫いモカシン。革靴の顔となるパーツを形成していく。

革靴のアッパーはほとんどが実際に人がミシンを踏んで縫製していて、その質次第で耐久性や仕上がりの美しさに雲泥の差が出る。さらに、パーツが重なる部分は厚みを調整するために革を部分的に漉く(薄くする)必要があり、その後のり付けの一手間を経て、実際に縫製が行われる。

谷本さんは弱冠25歳にしてこれらをすべて自身ででき、珍しい手縫いでのモカシンも得意とする。狂いのない縫製や均一な漉きの技術もさることながら、デザイナーの意図に最適な製甲方法を選択し、イメージをより忠実に具現化できるのが、彼女が若き神たる所以だ。

風合いも頑強さも手作業ならでは
パーツが合わさる部分は革を漉いて厚みを均一にする。

オオヤマ「風合いも頑強さも手作業ならではの味ですね」

手の感覚が決め手
漉いた革をのり付けし、ミシンでの縫製に取り掛かれる。耐久性を左右する工程。

荒井さん「均一な漉きも丈夫な縫製も手の感覚が決め手です」

 

手縫いモカシン

手縫いモカシン

FORME フォルメ ハンド モカ ブラッチャー

FORME[フォルメ]
ハンド モカ ブラッチャー

日本人の足に合った美しい形の長く愛せる靴を作る「フォルメ」。現代では珍しい手縫いのモカシンで、細めの芯を入れた後に1針ずつ縫い合わせることで、この美しい表情が生まれている。8万6900円(フォルメ)

谷本 花さん

次世代を担う
【製甲の神】谷本 花さん

18歳から靴作りの世界に飛び込み、現在は25歳にして堅牢なメンズ靴から複雑なウィメンズ靴まで幅広く手掛ける。量産もサンプル製作も担う、おっとりした見た目に反した超絶技巧の持ち主。

神を支える神もいる!!

人という字が支え合っているかは知りませんが、神もまた別の神の助けがあって成り立っているのが靴作りの世界。厳選されたレザーに、職人の技術を最大限に引き出す道具類。

彼らがいなくちゃ職人だって輝けない、そんな裏方を支える神たちの存在も、やっぱり知っておかなきゃならんでしょう!

神を支える「道具」 大谷商店

大谷商店

 

靴作りの工程を知るためにご自身でも靴を作っているとか……!

大谷商店

店内に並んだ道具類は、すべて靴作りやシューリペアに必要なもの。創業76年、3代目店主の柴田さんご夫妻は鍛冶屋さんに直談判して特性の道具を誂えることもあるそう。英国やイタリアからも靴職人が訪れるという名店だ。

神を支える「素材」 久保柳商店

久保柳商店

 

珍しい革も!?

珍しい革

常時数百種類を取り扱い、さまざまな人気ブランドにレザーを供給する同店。牛革の品揃えは圧巻で、カラバリが40色以上あるものも。奄美の泥染めや徳島の本藍染めなど独自のレザーも必見。一般客も利用可能なのが嬉しい。

続きはコチラ!
「底付けの神」「ラストの神」が登場!! 日本の製靴の聖地「浅草」でゴッドハンド探訪[後編]

 
※表示価格は税込み


[ビギン2022年10月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。

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