長きにわたる“スニーカーブーム”を経て、現在クラークスのワラビーが空前の超ヒット!! 次は2大人気名門のネオ「U」とネオ「V」が本命だ!
4名の靴賢者+ビギン編集長が世界中の“イイ靴”を談義
写真左から、編集・ライター 小曽根 広光さん、ワールドフットウェア ギャラリー ディレクター 日髙竜介さん、イラストレーター 綿谷 寛さん、スタイリスト 武内雅英さん、ビギン編集長 イチカワ
ビギン頻出の「U」と「V」が素材や仕様の工夫で履きやすく進化
市川 ビギンで革靴の特集をやるのはじつは久々なんです。そもそものきっかけはクラークスの「ワラビー」が最近メチャ売れてると聞いたこと。昨年比で180%の売り上げらしいです。
「ホント今、売れすぎっ!」なクラークスのワラビー
綿谷 そいつはすごい。みんなそろそろスニーカーに飽きてきたんだろうな。
武内 革靴人気が戻ってきてるとは確かによく聞きますよね。でもいきなり正統派の革靴は履きづらいので、スニーカーから移行しやすいワラビーのような靴が注目されるんでしょう。
市川 そんなわけで本座談会でも、ドレッシーな革靴を紹介する前に、まずはオンにもオフにも履ける靴の注目作から取り上げていきたいと思います。ワラビーのようなカジュアルな革靴からのステップアップもしやすいんじゃないかと。最初はパラブーツから。
パラブーツの「シャンボード」
小曽根 フレンチUチップの傑作「シャンボード」ですね。オン・オフ兼用できる本格靴といえば、真っ先にこれを思い浮かべる人は多いでしょう。
綿谷 こういうボリューミィな靴は今どきのパンツと相性よさそうだ。
武内 え、この革はロシアンカーフ(※)?
武内さん「え!? この革って、ロシアンカーフ?」
市川 これはバーニーズ別注で、ホーウィン社のレザーをのせてます。
日高 ハッチグレインという革ですね。ホーウィン社がロシアンカーフを再現した素材で、菱形の型押しが特徴。オイルたっぷりで履き込むとエイジングが楽しめそう。菱形型押しが上品だし、キズも目立たないね。
キメこまかいホーウィン「ハッチグレイン」
小曽根 普通のシャンボードのウェルトのステッチは白だけれど、これはアッパーと同色にしていて、ぐっとシックな印象。
ステッチまで同色!!
市川 確かに。いつものシャンボードよりオンでも履きやすい秘密ですね。
日高 同色といえノルヴェイジャン製法だから、ちょっと無骨さも残っていて、今の気分にも合いますね。
市川 続いて紹介するのは、これまたビギンが創刊以来ずっと推してきた不朽の名作靴であるオールデンの「Vチップ」。これはラコタハウス別注モデルで、アッパーをキッドレザー、つまり生後1年未満の山羊革にしたものです。
オールデンの「Vチップ」
武内 これも雰囲気がいいなぁ。
日高 山羊革は薄くて足当たりが柔らかいのでオーソペディックシューズ(矯正靴)に多く採用されてきた歴史があり、日本の昔のドレス靴にもよく見られる素材。繊細なシボがヴィンテージな味を高めているのがいいんですよね。
柔らかいキッドレザー(山羊革)
日髙さん「この革はいい味が出るぞ~」
小曽根 コードバンのVチップより価格がぐっと抑えられているのも嬉しい。コードバンよりシミにも強いし!
市川 水に強いといえば、これウォーターロックソールなんですよ。水に強いのはもちろん、じつは柔らかくて返りがいい。足当たりのいい山羊革と相性バッチリです。
綿谷 ネオ「U」「V」、素材で品格をアップしながら、快適性もアップとは! こりゃ新世代の便利本格靴だね。
しかもソールが柔らかくて水にも強い!(市川)
モディファイドラストのくびれは健在!(綿谷さん)
(※)ロシアンカーフ
18世紀の帝政ロシアが西欧諸国に輸出していた高級革。ロシア革命前後にレシピが消失し幻となったが、英国の名門タンナー「J.&F.J.ベイカー社」が再現し、現在市場に極わずか流通している。
「2大ON・OFF名作がさらに履きやすく進化!」― 一同
Paraboot×Barneys New York[パラブーツ×バーニーズ ニューヨーク]
シャンボード ハッチグレイン
菱形の型押しが独特のムードを生むアッパーは、幻のロシアンカーフを米ホーウィン社が再現した“ハッチグレイン”。ステッチも黒で統一し、シックに仕上げた。7万7000円(バーニーズ ニューヨーク カスタマーセンター)
Alden×THE LAKOTA HOUSE[オールデン×ラコタハウス]
Vチップ キッドレザー
全ビギン読者の憧れである「モディファイドラスト」のVチップのアッパーを、レトロなエレガンス漂うキッドレザー(山羊革)に。履き込むことで細かい履きジワが入り、独特のシボ感も強調される。11万6600円(ラコタ)
ワールドフットウェア ギャラリー ディレクター
日髙竜介さん
[愛靴:WFG×オリエンタル ジョセフ Ⅱ]
靴好きが高じて製薬業界から転身。古今東西の名靴に足を通してきたが、最近のお気に入りは写真のモンク靴。「スリッポン感覚で気軽に履け、撥水スエード&ラバーソールで雨にも強い。デザイン的にも幅広い装いに合うので、気がつくとこればかり履いています」
編集・ライター
小曽根 広光さん
[愛靴:ジェイエムウエストン ゴルフ]
兄弟誌「MEN’S EX(メンズ・エグゼクティブ)」のエースとして活躍するほか、多数の雑誌やWEBでも執筆。クラシックな装いと靴が好み。「じつは昔はモード好きでしたが、12年前にゴルフを買って徐々にクラシック志向に。“今のボク”を作った大切な靴です」
スタイリスト
武内雅英さん
[愛靴:パラブーツ ワークブーツ]
ドレスにもカジュアルにも強く、全編集部員が頼りまくり。撮影現場ではいつもサンダル履きだが、名靴を多数所有し、とくにブーツのコレクションはかなりのもの。「このワークブーツは廃番となると知って慌てて購入。ワークブーツなのに革が柔らかで極上の履き心地です」
ビギン編集長
イチカワ
[愛靴:ブルックスブラザーズ タッセルローファー]
若い頃から給料の大半を靴に注ぎ込んできた靴バカ。このタッセルローファーはオールデンがブルックスのためにOEMしたもの。「日本ではモディファイドのVチップが人気ですが、本国ではこのアバディーンラストのタッセルも大定番。所有オールデンの中で一番思い入れがあります」
イラストレーター
綿谷 寛さん
[愛靴:山陽山長 岸三郎]
ご存じ、日本で最も忙しいファッションイラストレーター。この日お持ちいただいた愛靴は、ご自身がデザインを担当し、3年前に50足限定で発売されたもの。「じつは古いロブ・ロンドンのカタログにあった靴から着想。ギリーのホワイトバックスって珍しいでしょ?」
※表示価格は税込み
[ビギン2022年10月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。