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OLFA オルファのカイコーン 替え刃式カイコーンPRO

工業製品を作りたいという気持ちが再燃したことから、専門学校で再びプロダクトデザインを学び直し、「歯」を作る仕事から「刃」を作る仕事に転身した髙嶋さん。入社してからは、刃折器つきカッターナイフ「DA-1」やキャンパーの間で大きな話題を呼んだ「OLFA WORKS(オルファワークス)」など、数々のヒット商品を手掛けました。

ネットショッピングの利用者が増えたことで、一般家庭でもダンボールなどの荷物を開梱する機会が増えた昨今。ハサミやカッターナイフを使えば、万が一でもケガのリスクを伴うため、安心安全に開梱できる専用のカッターナイフの開発に乗り出しました。話題は量産に向けた開発へと移っていきます。

前編はこちら

今回のビギニン

株式会社オルファ 開発・生産本部 製品開発グループ リーダー髙嶋洋輔さん

オルファ 髙嶋洋輔さん

開発・生産本部 製品開発グループ リーダーを務める髙嶋さん。デザインや設計だけでなく製品が完成するまでの工程に一貫して携わる。入社前は歯科技工士だったという意外な経歴の持ち主。アウトドアブランド「OLFA WORKS(オルファワークス)」なども手がけたヒットメーカー。

Struggle:
安全性と使い勝手をさらに追い求めて

OLFA オルファのカイコーン
指が入らないけどダンボールは切れる。絶妙なスキマ。先端部分は「テープスリッター」になっている

特徴的な刃の部分は、手や指が刃に触れにくくする為、刃全体を露出しない設計に。これにより、荷物の中身にも触れにくく、開梱時に誤って荷物の中身を切ってしまうリスクも軽減されるんだとか。また筆者も便利だなと感じたのが、本体の先端部分が「テープスリッター」になっている点。参考にした海外製のものにはなかった機能だそうですが、髙嶋さんが「ちょっと切る時に便利やから、そういう風にしとこか」と付け足したそう。

株式会社オルファ 開発・生産本部 製品開発グループ リーダー髙嶋洋輔さん

倉庫など作業現場での使用も想定して、いろんな場所に滑り止めを設けたのもポイントが高い点。「作業現場では、みなさん手袋されることが多いでしょう。作業内容も多岐にわたる中でいろんな持ち方をされると思うので、どんな持ち方でもできるようにと入れました」

OLFA オルファのカイコーン
色々な持ち方に対応するようサイド、中央部などに滑り止めが設けられている。

髙嶋さんをもっとも悩ませたのが、刃を取り付ける部分の形状です。
「海外にあった開梱用カッターナイフは、最初(刃が入るところ)は切れるんですが、途中から引っかかりを感じるものばっかりだったんです。原因は刃が付属する部分の樹脂の厚み。刃を進めるためには、切ったダンボールの間をその厚みが通過していく必要があったため、それが抵抗となってどうしてもスムーズに切れなかったんです」。

OLFA オルファのカイコーン
両端のツメと本体は、刃の中央に見える黄色いラインでひとつなぎになっている。

ここで髙嶋さんがとった方法は、刃を金型に固定し、刃の隙間を通して樹脂を流し込むというもの。そうすることで、刃とほぼ変わらない厚さで樹脂を成型することができます。また一体成型で継ぎ目なく刃の周りを樹脂が覆い隠す仕組みになるため、刃が取れたり、割れて露出するリスクも大幅に低減。こうして安全で使いやすい開梱用カッターナイフ「カイコーン」が完成したのです。ちなみにこの一番のこだわりでもある刃の部分は、特許を取得したそうです。

「カイコーン」とほぼ同時期に髙嶋さんが進めていたものがあります。それがよりハードな現場で使用されることを想定して作られた「替刃式カイコーンPRO」。

「カイコーンに比べて耐久性が高く、より握りやすいように設計しています。こっちに関してはダンボールだけでなくゴムシートやカーペットなどの厚手素材もカットすることができます」。

こちらは開梱の現場だけでなく幅広い用途で使用されているんだとか。替刃交換はレバー操作によるワンタッチ式で、一日に大量にカット作業を行う現場でも、すぐに切れ味を復活させることができます。

さて、ちょっとここで「カイコーン」トリビアをご紹介。
本体部分をよ~く見ると時計のようなマークが施されているのですが、これは一体何でしょうか?

OLFA オルファのカイコーン

実はこれ、製品がいつ製造されたかがわかるロットナンバーみたいなものなの。同社で保管している表と照合させることで、解読できるようになっている仕組みなんだとか。品質管理に万全を期すという姿勢の一端を感じられる、好感度の高いディテールでした。ちなみにこのマークは色んな製品にあるみたいなので探してみてくださいね。

話を戻して。こうして誕生した「カイコーン」は、その後の厳しい製品試験にもクリアし、2019年4月、発売されることとなったのです。

Reach:
カッターナイフも安全面を重視する時代へ

「カイコーン」を実際に使ってみると感動を覚えるほどの開けやすさ。不器用を自認する筆者ですが、コツも要らずに簡単に開梱できます。

OLFA オルファのカイコーン
両端のテープをパツっと切って

OLFA オルファのカイコーン
握りこむように持ち直して先端のテープスリッターをサクッと刺して引けば綺麗に”カイコーン”。もちろんこっちも刃を使ってOK。順番が逆でもOKだ。

今までダンボールを開けるという行為に対してストレスを感じていましたが、これはスイスイと綺麗に開くので、無限に開梱できます(気持ち的には)。ダンボールだけでなく、使える!と思ったのは牛乳パック。開いて捨てる作業をすごく手間に感じていたのですが、これもすごくラクチンに開けるんです。昨日まで「面倒だな〜」って感じてたことが楽しくなるって嬉しいものですね。

ここまで読んでいただいた皆様はそろそろ(最初から!?)お気付きの頃だと思いますが、この「カイコーン」はその名の通り「開梱」から名付けられています。単純だけど、わかりやすい。これが案外良かったりするんです。社名の「折る刃→オルファ」の方程式がここでも受け継がれています。

OLFA オルファのキリヌークとキッター
その他にも雑誌や新聞を「切り抜く」ための「キリヌーク」、キッズカッターの「キッター」などがある。

安全面をしっかり考慮した上で、機能面にもこだわった「カイコーン」は、スーパーや飲料メーカーの流通現場をはじめ、世界的な某アパレルメーカーの倉庫でも採用されるなど、至る所で活躍の場を広げています。

作業の現場では、効率性や利便性を優先しがちな日本でも、ようやく「安全性」に注目が置かれ始めた。一方で、若者の”ナイフ離れ”に髙嶋さんは危機感を抱いています。

株式会社オルファ 開発・生産本部 製品開発グループ リーダー髙嶋洋輔さん

「僕は、日常でナイフを使うことが当たり前だった時代で育ってきたので、ある程度使い慣れていますが、最近の若い子はカッターナイフに触らないまま大人になり、社会に出て初めて渡されるというケースもあるんです」と髙嶋さん。

そういう話があって、先ほど紹介したキッズ用カッター「キッター」は誕生したそう。不幸なことに年に一度くらいの確率で起こってしまうカッターナイフの重大事故のリスクを極力減らそうと、オルファはカッターナイフのパイオニアとして「セーフティカッター」の開発に注力しています。

株式会社オルファ 開発・生産本部 製品開発グループ リーダー髙嶋洋輔さん

将来、革新的な「セーフティカッター」が誕生すれば、かつての壁装(壁紙)業界のように、どこかの世界で革命が起こるかもしれません。オルファの挑戦は切れることなく続いていきます。

OLFA オルファのカイコーン 替刃式カイコーンPRO

カイコーン(下)/替刃式カイコーンPRO(上)
刃に指が触れにくい安心設計の開梱用カッターナイフ。荷物の開梱や、PPバンド、ストレッチフィルムもなども簡単に切断が可能。替刃交換不要な使い切りタイプとワンタッチ式で替刃交換ができる、プロの現場での使用を想定した替刃式カイコーンPROがある。カイコーン 実勢価格200円前後。替刃式カイコーンPRO 実勢価格1000円前後。

(問)オルファ
https://www.olfa.co.jp/

※表示価格は税込


写真/中島真美 文/小佐田莉沙

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