世界のファッションシーンに影響を与える“TOKYO”を牽引してきた4ブランドのデザイナーにインタビュー。毎冬登場する魅力的なアウターの中でも、ブランドの真髄が凝縮された“伝説の一着”とは?

 

モーターリバリーコート

カシミア混メルトンの気品あふれる一着。使いやすい斜めの胸ポケ、革巻きバックル、水牛ボタンなどディテールも見所満載。’06年からはサイベーシックスより展開されている。9万4000円。(問)サイ マーカンタイル

 

“機能線”を重視した理詰めのパターンメイク

Scye PATTERN MAKER HIDEAKI MIYAHARA

サイを代表する一着といえば、英国の送迎ドライバーなどが着ていたコートをモチーフとするモーターリバリーコート。’02年からマイナーチェンジを繰り返しつつ、長年にわたって展開されている。毎年、微調整はするものの初代から変わらないのが、サイの服作りを象徴するピヴォットスリーブだ。

エドワーディアン時代のテーラードジャケットや20世紀のフィールドジャケットにも見られる機能袖です。ベルスタッフのトライアルマスターなんかもそう。アームホールの鎌底がなく脇下がマチのようになっていて、上下に180度開閉でき、前後にも腕を動かしやすい。ウエストベルトを締めた状態でも腕回りにストレスがないので、車のハンドリングはもちろん、日常生活でも便利。現代のドレッシーなコートにはほとんど見られない仕様ですが、アウターの設計として理に適っていると考えたんです」

とはパタンナーの宮原秀晃さん。着心地の追求はこの袖だけではない。通常は肩の上にくる肩線を後ろ身頃に設定しているのも特徴のひとつで、曲線的に縮い縫せ込みを入れることで、肩甲骨回りに卓越したフィット感を生み出している。

「サイの服を構成するのは、すべてデザイン線でなく“機能線”なんです」とは宮原さん。理詰めで構築されたこのコートは、重厚な雰囲気なれど、着心地は極めて軽やか。着こなしが難しそうにも見えるが、袖を通すと誰もがスマートに男らしく着られることに驚く。まさに上質を極めた一着なのだ。

 

もっと深く知るための用語解説

  • ピヴォットスリーブ
  • ピヴォットスリーブ

    2002年当時からこのディテールを採用

    2002年当時、海外ショップへの説明のために作ったルックブック。モーターリバリーコートのページには、腕の運動性を高めるピヴォットスリーブの説明も。

     

  • エドワーディアン時代
  • サイのテーラリングのベースにある、19世紀のエドワーディアンスタイルを指す。国王でありファッションアイコンでもあったエドワード7世の時代に流行したスタイルで、優美でロマンチックなシルエットが発展した。宮原さんは当時の裁断書を熟読し、パターンに応用している!

     

  • ベルスタッフのトライアルマスター
  • ベルスタッフのトライアルマスター

    傑作フィールドJKにも“機能袖”が見られる

    ベルスタッフを代表する’60年代のトライアルマスター。バイクに乗りやすくするため、ピヴォットスリーブ仕様が採用されている。写真は宮原さん私物。

     

    Scye PATTERN MAKER HIDEAKI MIYAHARAScye パタンナー 宮原 秀晃さん
    1966年生まれ。2000年、デザイナーの日高久代氏とサイを設立。国立国会図書館に通い詰め、20世紀前半の裁断書を研究。その徹底した服作りは、近年海外でも評価され、NYやアジアの服好きの間でもジワジワと人気に。

     

    ※表示価格は税抜き


    [ビギン2018年1月号の記事を再構成]
    写真/竹内一将、中田昌孝(STUH) 大志摩 徹 三浦伸一 吉岡教雄 武蔵俊介 久保田彩子 文/秦 大輔 押条良太(押条事務所) 礒村真介 桐田政隆 宮嶋将良(POW-DER) トロピカル松村

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