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昨今デイパ界では、さながら無個性とも言えるほどミニマルで都会的なデザインが主流になっています。……が、ある意味そうしたトレンドとは真逆をいく、圧倒的な個性で耳目を集めるブランドが存在します。それがミステリーランチ。2000年に米国・モンタナ州ボーズマンで創業したこのブランドは、なぜギアとしての質を重視する玄人筋からリスペクトされ続けているのか。名前の通りナゾ多きこの稀代のパックメーカーのさまざまな“?”を、短期集中連載で徹底解明。第一回目は代表作のアサルトシリーズをサンプルとして、そもそもミステリーランチの個性=DNAとは一体なんなのかを、改めて解析していきます。

【1minutes history】
”ミリタリー”と”ワーク”
男心をくすぐる
唯一無二の背景を背負う

デイナ・グリーソン/1953年生まれ。アウトドアギアのバイヤーやリペア職人として活躍した後、1975年に「クレッターワークス」を、1985年には「デイナデザイン」をスタート。1998年にブランドを買収した親会社との方針の違いでデイナデザインを離れ、しばらく自由気ままに過ごしていたものの、パック作りの熱が再燃し、2000年に「ミステリーランチ」をスタートさせた。

日進月歩で技術革新を繰り返すアウトドアギア界において、まだ20年ちょっとの歴史しかないミステリーランチが、なぜトレンドとは一線を画す“替えのきかないブランド”として認知されるに至ったのか。そのミステリーを解明するカギは、バックパック界の生ける伝説として著名な、創業者のデイナ・グリーソン氏が握っていました。

創業者デイナさんは数々の著名ブランドを
手がけてきたリビングレジェンド!

幼少期からアウトドアに親しんできた同氏が自らパックを創作するようになったのは、1975年のこと。自身のアウトドアブランド&ショップ「クレッターワークス」を立ち上げると、1985年にはギア好きなら誰もが知る伝説的ブランド「デイナデザイン」を創業するなど、今日まで半世紀近くにわたってパック作りに携わり続けてきました。その過程において、同氏はバックパックのある理想像を見出します。“とにかく丈夫で使いやすい”。この当たり前とも思えるパックの役割を、自らの半世紀に渡る経験を惜しげも無く注ぎ込むことで極限まで突き詰め、満を持してスタートさせたのがミステリーランチだったんです。

自然豊かな米国・モンタナ州ボーズマンで
骨太なバックパックを生まれた

同氏は大自然に囲まれ、あらゆるアウトドアアクティビティを満喫できるモンタナ州ボーズマンに本社兼自社工場を設立。ギア好きの職人たちを集め、“丈夫で使いやすい”を極めるべく、デザイン、各種パーツ&生地選びに注力。クライマー、ハンター、森林消防隊等、極限の環境下で着用するハードユーザーに向けた製品を開発していきます。転機になったのは2004年。かの米国海軍特殊部隊“ネイビーシールズ”からパック提供を打診されると、晴れて軍事契約を結び、2011年にはUSMC(米国海兵隊)に正式採用されるに至りました。以降、アメリカのみならず、英国、オーストラリア、カナダ等の特殊部隊にも採用されるなど、何よりタフを重んじるミリタリーの分野でも一目置かれる存在となったミステリーランチ。アウトドアを出自としながら、丈夫で便利を極めすぎたがゆえに、ミリタリーにも軸足を置くこととなった。ミステリーランチのパックを背負うということは、この無二の背景を背負うのと同じ。だからこそ、替えのきかないブランドとして愛され続けているのかもしれません。ここからはその米軍をも魅了した、ミステリーランチ独自の2大発明について、ビギンが2014年に本国取材を敢行した際の体験を基に解説していきます。

【DNA】
ミステリーランチといえばの
”3ジップアクセス”&”フューチュラヨークシステム”
ちゃ~んと説明できる!?

バックカントリースキーヤーだったデイナ氏が、パックの両サイドにスキー板を括り付けると荷物が取り出しにくい(萎)、という不満を解消すべく考案した、象徴的ディテール。

【100字でわかる!3ジップアクセス】

Y字型3ジッパーを備えることでパック前面をガバッと大きく開けるように設計した、同社のアイコニックな意匠のひとつ。中央に隙間が生まれないよう、中央のスライダーにゆとりを持たせ、生地を余らせているのも特徴。

ベルクロが超強力なのに加え、背面長の測定にも専門知識が必要なため、可能であれば専門スタッフに調整してもらうのがオススメ。一度調整してもらえば生涯神フィット!

【100字でわかる!フューチュラヨークシステム】

各ユーザーの背面長にジャストフィットさせるため、パック本体とショルダー部を分け、超強力なベルクロで無段階の調整可能にしたシステム。内蔵された熱可塑性樹脂素材のシートは、非常に頑強ながら捻れ方向には柔軟。

※上記掲載モデルは廃盤です。

【ICONIC MODEL】
街使いから旅まで全網羅する
2デイアサルト一択説!

2デイアサルト クレイジーブラック/その名の通り米軍も惚れ込んだ代表作「3デイアサルト」を、1日分スケールダウンした定番モデル。アイコニックなディテールはバッチリ踏襲しながら、PC用スリーブを内蔵するなど、ミリタリーから日常生活の最前線でこそ輝くように設計されている。またパッと見はブラック単色ながら、“500D Cordura®”、“210D Robic”、“X-Pax® VX42”、“Blard 566D”という、性質&風合いの異なる4素材を組み合わせたクレイジー仕様ゆえの遊び心も萌えポイント♡  W31×H53×D29cm。3万3000円。

主要ディテール点検

背面には15インチまで対応するクッション材入りのPCスリーブを完備。さらに素早く、ガバッと開口できる“3ジップアクセス”や、フレームシートを内蔵し、背面長にジャストフィットさせられる“フューチュラヨークシステム”も採用。便利を極めた意匠がテンコ盛りだ。

上のクレイジーブラックのほかにもカラバリ豊富。左からDPMカモ、インディゴ、コヨーテ、フォリッジ、フォレスト、ブラック。W31×H53×D29cm。各2万9700円。

【ASSAULT BROTHERS】
絶対にミスらない!
ミステリーランチ
アサルトシリーズ系統図


ミステリーランチの数ある名機のなかで、とくにDNAが色濃く反映されているシリーズは一体なんなのか。その答えはもうアサルトシリーズ一択でしょう! 過酷な状況下での要望に応える形で、2004年に米軍特殊部隊のSEALsに「3デイアサルト」の全身となるモデルが採用。その後、ミリタリーを彷彿とさせる特徴的なデザインを受け継ぎながら今なお深化させ続け、同社屈指の人気シリーズへと進化しました。ここではその中でも定番好きがとくに知っとくべきモデルにフィーチャーしましたが、大まかに言うと、2つの個性に大別されます。ボーズマンの自社工場で作られ、米国製というロマンまで背負える“メイド・イン・USA”と、よりタウンユースに特化した“エブリデイ キャリー ライン”。どちらも各モデルごとに想定されたフィールドで最大のパフォーマンスを発揮する、というミステリーランチ魂は健在。自分に合ったアサルトをぜひ発見してみて!

アサルト ブラザーズCATALOG

3デイアサルト BVS/3ジップアクセスや“フューチュラヨーク・システム”という2大意匠を備えつつ、フロントとサイドに特徴的なウェビングも複数採用。ミステリーランチ=ミリタリーの関係性を継ぐ旗艦デイパだ。W34×H56×D28cm。11万円。

3デイアサルト CL/デイジーチェーンをはじめ、往年の3デイアサルトのクラシカルな意匠が全部入り。W34×H56×D24cm。7万7000円。

フィックスド 1DAP/シンプルな固定式ハーネスを採用。さらにPCスリーブやサイズ感とも普段使い向きのスペックに落とし込まれている。W27×H51×D18cm。4万6200円。

アーバンアサルト 21/ミリタリー仕様のアサルトサックをベースに、タンユース向きにリデザインしたのが、このアーバンアサルトシリーズ。W25×H51×D22cm。1万9250円。

アーバンアサルト 24/アーバンアサルトシリーズの中では最大サイズ。独立したPCコンパートメントが完備されているので、ビズ使いにも十二分。W29×H51×D23cm。2万5300円。

アーバンアサルト 18/男女問わず使いやすい小ぶりなサイズ感ながら、他のアーバンアサルトと同様、3ジップアクセスやPCスリーブ等は完備。W25×H47×D22cm。1万8480円。

【TRIVIA】
ミステリーランチ最大のナゾ!?
ブランド名の由来はTV番組だった

ブランド名を考えていた時、使いたかった“システム”や“ワークス”という言葉も、自身の名前“デイナ”もすでに過去に使ったことがあったため、デイナ氏が思い浮かべたのが、幼少期によく見ていたテレビ番組“ザ・ラジオ ランチ”。農場(英語でランチ)がたくさんあるモンタナ州にマッチするうえ、これからみんなが驚くほど優れたパックを作ろう!と密かに試作を重ねる自分たちにぴったりじゃん!ということで、ミステリーランチに決まったんだそう。

※第2回”脱・ブーティバッグ”編は5月28日公開予定です。

問い合わせ先/ミステリーランチ公式ホームページ

文/黒澤正人 イラスト/TOMOYA 編集/増井友則(e-Begin)

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