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ベントレー・コンチネンタルGT

900Nmの最大トルクに最高出力635ps、2.3トン近い車重というスペックを耳にすると、今ドキちょっとクルマ好きな人なら電気自動車かと思うはず。ところがこの数値を6リッターもの排気量で、しかもV6を2基合わせたようなW12気筒ツインターボで実現しているといえば、さぞアナクロというか、大時代がかって聞こえることでしょう。

ところが世の中、コスパ重視とか最適化とか合理性とは、真逆のロジックで成り立っているプロダクトもあるってことで。創業からちょうど100周年を迎えた英国の老舗、ベントレーが日本に今年上陸させたコンチネンタルGTにも、そんな世界観が濃厚に表れています。

ベントレー・コンチネンタルGT
ベントレーは創業当時から「スポーツ・サルーン」専業の自動車メーカーで、2ドアのクーペもコンバーチブルも4ドアのリムジンも手掛けますが、いずれにも共通するのは「スポーティ」であること。かのロールス・ロイスと統合され兄弟車だった時代は、「必要にして十分」とエンジン出力を公表しないことで知られていました。

2000年前後を境に、ロールス・ロイスはBMWグループに、ベントレーはフォルクスワーゲン・グループに属して袂を分かちますが、いわばベントレーは最初から「足ることを知る」優雅な旦那衆や貴婦人方の乗り物として歴史を刻んできたブランドというワケです。

ベントレー・コンチネンタルGT

最新のコンチネンタルGTは、ロールス・ロイスとは非共通ボディとなった最終の「コンチネンタル」から数えて3世代目、VWグループ傘下となって2世代目にあたります。まずインテリアから覗きますと、分厚く上質なカウハイド・レザーの張られた内装は、リネン(麻)と呼ばれるオフホワイト、そして正調ネイビーという、激しくブリティッシュというか高貴なツートーンカラー。このレザー内装に施されたステッチはじつに31万675ポイントにも及び、糸の総長は1台あたり約2.8kmにもなるのだそうです……。

ベントレー・コンチネンタルGT

ベントレー・コンチネンタルGT

加えて、光沢たっぷりのウッドとクロームのモールやダイヤルスイッチ類がキラキラと輝く、まるで調度品のようなしつらえは、「やんごとなき方々の基準で満ち足りる」レベルが、デフォルトでどういうものか、思い知らされます。その豪奢にしてスポーティな雰囲気は、クルマというよりクルーザーのよう。いわば「ダウントン・アビー」的な常識や規範が、モダナイズされて22インチホイール履きの4輪の上に構築されている、そんな感じです。当然、庶民の目にはトゥーマッチに映るかもしれませんが、そうでない方々の「必要」はそういうところで成立しているのです。

ベントレー・コンチネンタルGT

とはいえ最新のコンチネンタルGTは、ボディ後端、つまりエクステリアに初めて「BENTLEY」のレタリングが入ったベントレーでもあります。これまではフライングBと呼ばれるマスコットやバッジがボンネットに置かれるだけで、「わかる人だけわかれば?」的な造りでした。ある意味、上から目線スレスレの英国風アンダーステイトメントにジェントルマンたらんという人々はぐっときたものですが、ここ十数年来はわかりやすさを求める新興の需要もお盛んですし、対ツーリスト目線に対策する方向へと英国テイストも進化したと解釈すべきでしょう。

ベントレー・コンチネンタルGT

握りの太いステアリングのどっしりした感触と、ダッシュボードからリアシートまで貫く高いセンタートンネルをヒジ下に感じつつ、包み込まれるようなレザーシートに身を任せてエンジンスタートのボタンを押すと、W12気筒ツインターボがヴロン!と一瞬、ドスの効いた音で目覚めます。でも車内で耳にするアイドリングから低速域のエキゾースト音は、ジェントルそのもので、アクセルを緩められる場面ではそそくさと、気筒休止かつ慣性走行状態のコースティングに入りますし、そして信号待ちでは即アイドリングストップが利くなど、今どきの多気筒エンジンらしいミニマムな手際が際立ちます。

一方で再発進からの蕩けるようなトルク感はさすが。決して軽くはないボディを恐ろしくスムーズに加速させ、気づいたらこんな速度!?という領域まで、静かに静かに引っ張り上げます。

ベントレー・コンチネンタルGT

電気自動車の無音の加速感がリニアでグイグイと盛り上がっていっても、さして驚きはありませんが、気筒内の爆発をコントロールして機械で造り込まれたこの加速感は、やはり代え難いドラマというか、100年続いている老舗ならではの「やっぱりこれだね」的な鉄板ぶり。路面状況に応じて4輪のトルク配分を前後左右とも切り替えるインテリジェント4WD採用は、雨中の高速道路などを思えば当然の成り行きですが、デフォルト状態で後輪寄りに駆動力がかかります。そのため加速フィールはFR(フロントエンジン・リア駆動)に限りなく近く、普段使いからしてすこぶる心地よいのです。

ただし、ちょっと調子にのってアクセルを深く踏もうものなら、W12ツインターボは咆哮するように途端に凶暴なエキゾーストを発し、先ほどまでの穏やかなトロットが嘘のような、激しいギャロップに転じます。ついでにいいますと、踏み込んだ刹那、メーター内では瞬間燃費が2km/ℓアンダーと表示される辺りにもヒヤリとしました。

ベントレー・コンチネンタルGT

センターコンソール上で、走行モードはコンフォート/Bモード/スポーツ/パーソナライズ等に切り替えられます。道路や路面の状況、走らせ方や好みによって選べますが、アシも固くなりすぎず、ステアリングの絶妙な矯めも味わえつつスポーティにも走らせられるBモードが、いちばんハマリでした。

日本でベントレーがもっともナンバー登録されているのは港区だそうですが、確かにこの類稀なるスムーズさに躾けられた巨躯を都内で転がしていると、かなり港区おじさんっぽい気分が味わえます。でも、それだけでベントレーならではの甘い生活が味わえるか?といえば、さにあらず。

ベントレー・コンチネンタルGT

ベントレー・コンチネンタルGT

ベントレー・コンチネンタルGT

最高に気分のいい走らせ方はやはり、タッチスクリーン>アナログ3連メーター>ウッド面と、パタパタ回転して切り替わるダッシュボード・センターを、ナビもインフォテインメントも見えなくなる後2者にして、自由時間を過ごすこと、でしょう。ナビやメール機能みたいなデジタルツールが、完オフで引っ込んでくれる仕掛けを用意されているあたり、言い換えれば主従の関係を弁えたこの究極の「執事プレイ」こそ、ベントレーの本懐といえるのですから。あれこれ「盛ってる」だけが高級車じゃない!ということを思い知るための一台です。

ちなみに気になる車両価格は、あれこれオプションを付けてツルシで納車されることはほぼないながら、税込み2629万円。もちろん消費税10%込みのプライスです。

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写真・文/南陽一浩

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