一撃で“フランス” が薫るバスクシャツ。なぜいつの世も大人に愛されるのか。また、どう着れば洒脱に装えるのか。フランスカルチャーを偏愛するデザイナー小林さんに、その本当の魅力と製作時の苦悩を語っていただきます。

フランスへの遊学が“フランス人のフィルターを通したアメカジ”を生んだ

1988年。今から30年以上も前のことですが、私は文化服装学院を卒業すると同時にフランスへ遊学しました。

そこでヴィンテージからモードまで、多様なファッションに触れたのですが、今思えばこのときの体験が、“フランス人のフィルターを通したアメカジ”という私の好みを決定づけたのかもしれません。

とくに思い出深いのは、北西部のノルマンディー地方にあるオンフルールという港町に行ったときのこと。

そこに行けば本場のバスクシャツが買えるのではないかと探し求めたら、イメージ通りの万屋的なお店でイメージ通りのおばさんが売っていて、すぐさま購入(苦笑)。

正直作りはあまりよくありませんでしたが、カルチャーが染み込んだ、その本物の空気感が気に入って、帰国後もダメになるまで着倒しました。

そしていつか自分もその本物に肉薄する、大人が着るべきバスクシャツを作ろうと決心したんです。

AUBERGE オーベルジュ バスクシャツ イメージ

最高のバスクシャツを!

それから30年後の2018年。オーベルジュというブランドを新たにスタートした際、今こそ最高のバスクシャツを作ろう!と思い立ちました。

そしてまず理想のバスクシャツ像を探し、さまざまな資料を漁って辿り着いたのが、シャルロット・ゲンズブールだったんです。

まさか女性に憧れるとは予想外でしたが(苦笑)、1985年のフランス映画『なまいきシャルロット』で、当時わずか14歳だった彼女が見せたバスクシャツスタイルは、まさに自分の理想像!

何も工夫して着ていないのに、最強の抜け感がある。今に通じるユルめのサイズ感がとにかくベストバランスで、これを目指そう!とすぐさま決意したんです。が、ただユルいシルエットにして“側”だけ模倣するのはナンセンス。

着心地がよくて長年着てもヘタれない耐久性も備えていなければ、服好きな大人の男心を満たすことはできないと思ったんです。

着心地も心も満たす最高の生地

そこでまず原料調達からスタート。あらゆるコットンを吟味した結果選んだのは“スビンゴールド”でした。

正直かなり高額でしたが、“エレガントな光沢”と“滑らかな肌触り”という2分野において、この世界最高級の超長綿を使った生地に勝るものはありません。

紡績工場に持ち込み、撚り方も試行錯誤したうえで糸が完成。それを今度は編み立て工場に持ち込み、とにかく可能な限り度を詰めて編んでもらいました。

ただでさえ値が張るスビンゴールド糸は、度を詰めて編めば当然必要量も増えるので原料費は嵩む一方(苦笑)。

ですが、完成した極厚生地に触れたら“これこそまさに求めていた生地だ!”と確信。一切の摩擦を感じず、滑らかに手が生地の上を滑っていく。にもかかわらず、厚手で型崩れしにくいから生涯愛せる。

この生地をシャルロットサイズで着られるようにユルいシルエットに仕立て、やっとの思いで完成させたのが、このマイ・ベスト・バスクなんです。

普通に着るだけでシャルロット譲りの抜け感が醸せて、フレンチのエスプリも利かせられる。そしてお腹が気になる年代の男にとっては体型隠しにもなる(笑)。

バスクシャツが大人に愛され続けているのは、まさにこうした全方位で均整がとれている、稀有なアイテムだからなのではないでしょうか。

AUBERGE オーベルジュ バスクシャツ 商品

AUBERGE
オーベルジュのバスクシャツ

スビンゴールド糸の度詰め生地を贅沢使いした大人のバスク。シャルロットばりにユルく着られるシルエットもさることながら、ネックがダレないように共地のテープで補強する配慮も感動もの。2万3000円(ホワイト/スロウガン)

Charlotte Gainsbourg
シャルロット・ゲンスプール[1971-]

 
フランスの偉人、セルジュ・ゲンズブールと、名女優ジェーン・バーキンの間に生まれた才女。歌手や女優としても世界的な名声を得ているが、トレンドを超越したファッションアイコンとしても有名。

 

今着たい「大人のバスク」“シャルロット”サイズがBESTだった

AUBERGE オーベルジュ デザイナー小林学 イラスト

談・小林 学(オーベルジュ デザイナー)

1966年生まれ。スロウガン、オーベルジュという2つの人気ブランドを手掛けるデザイナー。とりわけフレンチファッションを分析&製作させたら、右に出る者なし。

 
※表示価格は税抜き


[ビギン2019年5月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。

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