特集・連載
ニッポンの今どき焼き物図鑑[追加REPORTS.1]
「スリップウェア」ってなに? 覚えておきたい焼き物用語
ニッポンの今どき焼き物図鑑 お洒落な洋食器で朝食、できたらな~♪って、ちょっとお待ちください。ここ数年、いつも買い物に行くセレクトショップが扱いを増やし、え、米海軍のプレート!? これ外国のダイナーの器じゃ!? なんて見紛うような“欲しい!”と唸る、ニッポンの焼き物が続出中。今回そんな今どき焼き物を、その産地の特徴も一緒に学べる図鑑にしてみました。「焼き物」=「古くさい?」なんてイメージは、だ~いぶ遅れちゃってますので、気をつけてくださいね! この記事は特集・連載「ニッポンの今どき焼き物図鑑」#05です。
こんな紋様の器をセレクトショップなどで見かけたことがあるのでは? そこはかとなく和の風情を感じるかもしれませんが、じつはイギリス伝来のモノ。クリーム状の化粧土(スリップ)を筆やスポイトを用いて装飾した“スリップウェア”と呼ばれる技法なんです。
“スリップウェア”とはイギリス伝統の装飾技法だ!
イギリスでは17世紀頃から盛んに作られましたが19世紀末に衰退。一度は途絶えてしまいます。これを再発見し見事に甦らせたのが、柳 宗悦らとともに民藝運動を率いていたバーナード・リーチでした。
リーチは後に日本各地の陶芸家にスリップの技法を惜しげもなく伝授しています。スリップウェアが特定の産地に偏らず、全国に点在しているのはそのおかげ。湯町窯のような実用に即したものから、作品性の高い作家モノまで、間口が広いのも魅力です。
部屋に飾る人が多いといいますが、芸術的な装飾を見ればそれも当然でしょう!
バーナード・リーチ
柳 宗悦、濱田庄司らとともに民藝運動を指導した英国人陶芸家。昭和初期に湯町窯を訪問。その際、窯主である福間親子にイギリスの伝統装飾であるスリップウェアを教えている。
思わず飾りたくなる芸術的な紋様の数々
益子焼[ましこやき]
伊藤丈浩 作
伊藤丈浩さんは、1977年千葉県生まれ。21歳から陶芸を始め、益子の製陶所に勤務した後、渡米。帰国後は日本各地の窯業地を巡り、2006年に独立。益子町に工房を構える。
そのスリップウェアはモダンで温かみのある作風が男女問わず人気を博している。長角鉢19.5×23×H5cm。7000円(ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店)
温かみのある作風です(ユナイテッド アローズ スタイルフォーリビング バイヤー 西岡 麗さん)
信楽焼[しがらきやき]
山田洋次 作
山田洋次さんは、1980年滋賀県生まれ。2007年に本場イギリスに渡り、ソーダ釉を学んでいる。帰国後、信楽に自身の窯「小山田窯」を設立。
そのスリップウェアには、素朴さの中に力強さがあると評判。長角鉢(右)約18.2×14.7×H3.5cm。3500円。長角鉢(左)約16×14×H3.5cm。3000円(以上、チャオパニック カントリーモール)
力強さが持ち味です(チャオパニック カントリーモール 店長 野田民人さん)
※表示価格は税抜き
[ビギン2019年3月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。