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バイクでドリフトもできそう!
ヤマハの3輪バイク「NIKEN」の安定感がスゴい

昨年はバイク業界で多くの注目モデルが登場した年でしたが、なかでも熱い視線を集めたのがヤマハがリリースした3輪バイク(ヤマハでは「LMW=Leaning Multi Wheel」と呼ぶ)「NIKEN(ナイケン)」でしょう。フロントが2輪ある構造は、外観のインパクトが絶大で、ライダーでなくても思わず目で追ってしまうほど。とはいえ、この構造は単に見た目のインパクトだけを狙ったものではありません。いったいどんなハンドリングなのか? クローズドコースと公道でそれぞれ試乗する機会に恵まれたので、気になる走行性能についてお伝えしましょう。

「NIKEN」の特徴は、なんと言ってもフロントが2輪ある3輪バイクであることでしょう。同じヤマハのLMWにはスクータータイプの「TRICITY(トリシティ)」シリーズ(125ccと155cc)がありますが、本格的なスポーツタイプのLMWは「NIKEN」が初めてです。「TRICITY」との一番の違いは排気量が845ccと大きいのはもちろんですが、最大バンク角が45°と大きく拡大されていること。バイクはとりわけ車体をバンクさせて曲がるのが魅力ですが、より深く傾けることができるようにすることで、高速でのコーナリングを可能にしているわけです。

バンク角が深くなったことで、2本のフロントフォークで外側からタイヤを支える構造に。見た目の迫力も増しています。

フロントタイヤが2本になることのメリットは、コーナリングなどでの安定感が向上すること。たとえ片方のタイヤが滑ったとしても、もう一方のタイヤがグリップしてくれるので、転倒のリスクが格段に減ります。また、ギャップを乗り越える際にハンドルを取られるような挙動も減り、バンク中にブレーキをかけたとしても車体の姿勢が乱れないなど、バイクに乗っているときに感じる”怖さ”を大きく低減してくれるのです。

車体をバンクさせると左右のタイヤがそれぞれ傾きながら路面を追従。路面からのショックも左右のサスペンションが個々に吸収してくれます。

搭載されるエンジンは、同社の人気モデルである「MT09」や「XSR900」と同じ並列3気筒。最高出力は116PSを発揮します。スペック上の数値は変わりませんが、「NIKEN」に搭載されているものはクランクマスを18%増やし、低速域での扱いやすさを向上させています。また、アクセルを開けすぎたときにリアタイヤが滑りすぎるのを防止するトラクションコントロールシステムも搭載しているので、滑りやすい路面でも心配ありません。

実際に跨ると、263kgある車体はかなり重さを感じます。フロントタイヤとサスペンション、そしてそれを支えるアームなどが追加されているため、車重が重くなるのは仕方のないところ。転倒しにくい構造とはいえ、立ちゴケはしますのでちょっと緊張します。しかし、エンジンをかけて走り出すと、途端に車体は安定感を増し、不安なく乗れるように。ハンドリングも軽く、普通の2輪車よりもむしろ軽く感じるほど。左右にバンクさせる動きもスムーズで、狭い道での取り回しも良好です。驚いたのは直進安定性の高さ。速度が上がるほどに安定感が高まり、高速道路ではクルマ並みに安定して走ることができました。

直進でも車体は非常に安定していて、長距離を走っても疲れが少なそう。

この車両の魅力を最も体感できたのはコーナーが続くようなワインディング。車体をバンクさせた際の安定感が素晴らしく、安心して曲がって行くことができます。ハンドリングの不自然さも全くなく、曲がりたい方向に視線を向けるだけでもコーナーを抜けることが可能です。それでいて、積極的に体重を移動させれば、車体を大きくバンクさせて曲がることも。スポーツバイクを操る楽しみを堪能できます。

落ち葉が浮いているようなコーナーでも安心感は抜群。恐れることなく、曲がって行けます。

ちょっと調子に乗って、入り口で急にシフトダウンをして、リアタイヤを流すような走り方も試してみました。リアタイヤがハーフロック状態となり、ツーっと滑り出しますが、2輪あるフロントは安定していて何の不安もありません。下りコーナーで速度が思ったより出てしまっても、バンクしたままフロントブレーキを使えるので怖い思いをすることもありませんでした。

ヘビーウェット路面での試乗もフロントが滑る心配がないので、安心して走ることができました。

クローズドコースでの試乗は、あいにくの雨でした。それもかなりの土砂降りで、コースには小さな川ができていたほど。ただ、そんなシチュエーションだからこそ、「NIKEN」の持つ実力を感じることができました。ヘビーウェットな状況であるにもかかわらず、2輪で支えられたフロントの安定感は抜群で、滑る気配もありません。コーナーを曲がっている途中が川のようになっている場面もあったのですが、何事もなかったかのように通過できました。立ち上がりでアクセルを開け始める場面だったので、リアタイヤは川を通過する際にズルズルと滑り外へ逃げて行きますが、フロントの2輪はそのままラインをトレースして行ってくれました。

幅広のハンドルはステアリング軸と別軸の構造とされているので、路面からのショックが伝わらず、リラックスして握ることが可能。

ヤマハでは「NIKEN」を”スポーツツーリングモデル”と位置付けていますが、先が見えないコーナーや、砂利や落ち葉が浮いているような路面でも安心して曲がって行ける特性は、まさにツーリング向き。初めて訪れるようなワインディングロードでも、不安なくライディングを楽しめます。多くのバイクユーザーは、ツーリングに行くといっても月に1、2回程度だと思いますが、久々にバイクに乗っても不安感なく楽しめるので、バイクに慣れてきた頃には帰らなければならない時間になっていた……なんてこともなさそう。忙しい中でもバイクを楽しみたいビジネスマンや、若い頃のようにバイクを操れるか不安に思っているリターンライダーにこそ、乗ってもらいたいモデルです。

ヤマハ
NIKEN
価格:1,782,000円(税込)


写真・文/増谷茂樹

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