バイク好きファッション・ディレクター青柳光則さんに訊く!
バイク乗りのための夏ライダーズ・スタイル! Vol.1[ファッション目線ブランド編]
e-Begin読者にもバイク好きがけっこういると思いますが、皆さんどんな服着て乗ってます? とくに夏場は悩みどころ。暑いからってまさかTシャツ一枚でバイクに乗るわけにいかないし、なかなか難しい問題ですよね? そこで今回、大御所スタイリストにして生粋のバイク乗りである青柳光則さんの指南の下、大人の夏ライダーズ・スタイルを考察。Vol.1ではファション性と安全性を両立した、今ドキのお洒落ライダーにおすすめの3ブランドをご紹介します。なおVol.2ではBegin本誌でもお馴染みのド定番服でバイカーズ・スタイルを提案していますので、併せてお楽しみくださいませ。
シンイチロウ アラカワのレザージャケット価格未定。(問)シンイチロウ アラカワ TEL.03-6427-4520 マックスフリッツのパンツ1万6000円。(問)マックスフリッツ本店 TEL.03-5671-6335 ロアーズオリジナルのスニーカーブーツ6万8000円。(問)ロアーズオリジナル TEL.03-6434-0961 バイクを含めその他はスタッフ私物
ファッション・ディレクター 青柳光則さん
伝説の「男子専科」編集部を経て独立後、スタイリスト、ライター、エディターとして幅広い分野で活躍。近年は着こなしの“師範代”としてメンズファッションに関する講演も多数。著書に『男のお洒落道・虎の巻 The Wearing Bible for Gentleman』(万来舎)あり。
ファッション性と安全性を両立したライダーズウェアってないの?

「“マックスフリッツ”“ロアーズオリジナル”“シンイチロウ アラカワ”から選べば間違いありません!!」
機能性や安全性を考慮するなら、本格的なライダーズウェアブランドから選ぶのが一番でしょう。パンチングレザーで通気性を高めたり、吸湿速乾素材を用いたりと、夏場のライディングを涼しくしのぐための工夫もなされています。ただそれがお洒落かどうかというと……ちょっぴり疑問(汗)。プロテクターでイカつかったり、ブランドロゴが背中でデカデカと主張していたりと、バイクに乗ってるときはよくても、街中を散策したりするときに浮いちゃうんですよね。
「おやおや、勉強不足ですね。一体いつの話をしてるんですか(笑)。お洒落感度の高い大人のバイク乗りが増えるに従い、最近はファッション性と安全性を高次元で両立したライダーズウェアが登場しているんですよ。その御三家的存在が、“マックスフリッツ”“ロアーズオリジナル”“シンイチロウ アラカワ”。こういうところのアイテムを上手に取り入れてスタイリングすると、たとえばツーリング途中にお洒落なカフェを訪れてもまったく違和感ないでしょう。というか、むしろカッコいいはず。ちなみに今記事の扉カットでは三者のアイテムをMIXしてみましたが、もちろん全身一つのブランドでまとめてもキマリます。以下各ブランドでこの夏のおすすめのコーデを組んでみたので、ぜひ参考にしてください」(青柳さん)
マックスフリッツ
マックスフリッツのライダーズジャケット3万7000円、同パンツ1万6000円、同グローブ1万2000円、同ブーツ4万4000円。以上(問)マックスフリッツ本店 TEL.03-5671-6335 その他はスタイリスト私物

「“バイク乗りの普段着”がコンセプトのお洒落ライダーズウェアの先駆にして定番」
「ここが登場してから日本のバイク乗りは随分お洒落になった」と青柳さんが絶賛するマックスフリッツは、2000年にデビュー。自身バイク乗りであり、旅の道具として親しんできたデザイナーの佐藤義幸氏は、バイクを降りたときに街に溶け込むことができるウェアがないことを痛感。そこで自らブランドを作ることを決意したのです。「オーナーにしてデザイナーの佐藤さんは、かつては日本のいろんな有名ブランドのパターンを引いていた人。だからここのウェアはとてもパターンが優れていて、スマートなシルエットながら抜群に身体が動かしやすいのがいい。前傾のライディング姿勢を取っても窮屈じゃありません。ヨーロッパの古いライダーズウェアをよく研究なさっているようで、そこにミリタリーやアウトドアの要素を巧みにミックスしたようなデザインもいいですね。普遍的な美しさがあり、幅広い世代におすすめできます」(青柳さん)
ここ数年、毎年モデルチェンジしているシングルライダーズの新作「エアインテーク チェックジャケット」。トラディショナルなタータンチェック生地はコットンライクな撥水ナイロン素材で、肩や肘当てなど随所にウォッシャブルレザーを配しています。3万7000円。
ライニングには通気性に優れ、肌触りのよいメッシュ素材を多用。肩・肘・背中には専用の別売りプロテクターも装着可能。
腕と背中にはエアインテーク用のファスナーを装備。爽快なライディングが楽しめる。
よりクラシックなデザインがお好みなら、こちらの「エアインテークドビージャケット」がおすすめ。素材感の効いた先染めナイロン素材をベースに、部分的にウォッシャブルレザーを配したデザインは、ほんのりミリタリーテイストを感じさせるのもよい。こちらも空気を取り込んで排出するエアインテーク機能を備える。背中用プロテクターが付属し、肩、肘、胸プロテクターは別売り。3万9000円。
バイクを選ばないデザインから毎シーズン大ヒットし、もはやブランドの大定番と言っても過言ではない「デニムスクランブラーパンツ」。12.5オンスのラギッドなデニム生地はストレッチ性も満点。前傾姿勢を取った際もウエスト回りの窮屈感は皆無だ。1万6000円。
膝はもともとスポンジを挟んでキルティングしているが、ファスナー部から別売りパッドを入れてさらにプロテクション性能を上げることができる。
モンキーブーツをベースに、よりバイクに特化したデザイン&ディテールが与えられ、発売以来大好評を博す「ダブルチェンジパッドブーツ」。製法は堅牢なグッドイヤーウェルトで、オリジナルタンクソールを装備。4万4000円。
シフトチェンジでブーツが傷むのを防ぐためのパッドを装備。左右両方に備えているため、英国旧車など“逆チェンジ”のバイクに乗る人も安心。
クラシックなデザインの「SSフィンガーガードクローブ」。指を守るとともに、ヘルメットのシールドを拭うワイプ機能ももたせたスエードのフィンガーガードが特徴だ。親指と人差し指の先端には、タッチパネル対応のレザーを採用。1万2000円。
以上(問)マックスフリッツ本店 TEL.03-5671-6335
ロアーズオリジナル
ロアーズオリジナルのパーカ(肘、肩、背中にプロテクター付きの価格)5万2000円、同パンツ3万2000円、同グローブ1万8000円、同スニーカーブーツ6万8000円。以上(問)ロアーズオリジナル☎03-6434-0961 その他はスタイリスト私物

「今最もエッジィなバイクウェア!
フレンドリーな価格も嬉しい」
ロアーズオリジナルについて、青柳さんは「今最もエッジィな国産バイクウェアかもしれない」と講評。確かに上の写真なんか、ストリートとモードがバランスしたようなスタイル。フランスをはじめ最近ヨーロッパのライダーたちから注目されているというのも納得です。
「ここはもともと仙台でアパレルブランドとして出発し、2007年に東京に進出。今は西麻布に本拠を置き、モーターサイクル、ファッション、アートの融合を目指して刺激的なアイテムを提案しています。レザーのライダーズも名作揃いですよ。パッドやシャーリングなどのディテールが効いて少しモードなデザインですが、なめしにこだわったレザーを使い、自分たちで縫製しているせいか、クラフト感もしっかり感じられる。ただ夏に着るにはちょいと暑いので(笑)、今回は“ロクヨン”素材の2トーンジャケットを軸にコーディネート。このパーカ、なんとレーシングウェアを手がけるヒョウドウ プロダクトとのコラボ作で、同社が扱う高性能なプロテクターを仕込みながら、シルエットはスマート。後ろ身頃の肩甲骨部分をニットで切り替えているのですごく快適な着心地です。しかもこちら、衿に内蔵したフードを引き出せば、そのままマウンテンパーカのようなデザインに。凝った作りの割に値段もフレンドリーですし、街中ウェアとしても非常に優秀な仕上がりではないでしょうか」(青柳さん)
「マウンテンパーカ ヒョウドウ365×ロアーズオリジナルフォースピード」。衿に折りたたみのフードを内蔵し、これを引き出せばまんまお洒落なマウンパに。前身頃のヨークと後ろ身頃のヨークにはベンチレーション機能も装備し、通気性も抜群だ。写真は肘、肩、背中プロテクター付きで5万2000円。バッドなしは3万9000円。肘、肩、背中、チェストプロテクター付きは6万3000円。
ヒョウドウが取り扱う、優れた衝撃吸収効果を発揮する“D3O”素材のプロテクターを各所に装備。もちろん取り外して着用することも可能だ。
メイン素材はコットン60%+ナイロン40%の、いわゆるロクヨンクロス。随所のファスナーは水の浸入を確実に防ぐ止水ファスナーだ。
前身頃にファスナーで取り外せるナイロンパーツを付け、あたかもライダーズとベストをレイヤードしているように見せた「シールドライダーズジャケット」。お洒落にライダーズの収納性を高めるために生まれたユニークなアイテムだ。16万8000円。
ブランドで定番的人気を博す「アンドロイド」パンツ。両腰に3個ずつポケット(手がすっぽり入る大型ポケット+フラップ付きポケット+ジップ付きポケット)を装備し、ツーリングにめちゃ便利! フロントと裾のボタンはそれぞれ二段階調節式で、パンツ自体のデザインも切り替えを多用するなど非常に考え抜かれたデザインだ。素材はコットン95%+ポリウレタン5%でストレッチ性も高い。3万2000円。
腰回りのポケットパーツは左右とも着脱可能。じつはこれ、ハーレー乗りなんかがよく穿いているチャップスから着想したデザイン。その丈をぐっと短くしたことでちょっとギャルソン風の見映えに。
ライディングブーツにスニーカーのソールを合わせたら……という発想から生まれた「スニーカーブーツ」。ブーツ用の厚手のアッパーとビブラム社製ソールをマッチさせるのは困難で、何度も微調整を繰り返しながら発売に至った力作だ。どこぞのモード系メゾンのものと言っても通りそうな前衛デザインに痺れる! 6万8000円。
フロントエントリー式のデザインがクール。シューレースがバイクにひっかかる心配がないのもいい。
ロアーズが得意とするシャーリングデザインを取り入れ、極上のフィット感を叶えたレザーグローブ。グローブの町、香川県で製造されており、シャーリングも職人が一本一本手縫いした逸品だ。1万8000円。
以上(問)ロアーズオリジナル TEL.03-6434-0961
シンイチロウ アラカワ
シンイチロウ アラカワのメッシュブルゾン2万8500円、同デニムパンツ2万5600円、同グローブ1万8000円。以上(問)シンイチロウ アラカワ TEL.03-6427-4520 その他はスタイリスト私物

「走りもお洒落もピュアに
追求するライダーにおすすめ」
シンイチロウ アラカワについて「お洒落感度が高く、走りにも妥協したくないライダーにとくにおすすめしたい」と青柳さん。
「フランスとイギリスで服飾デザインを学び、1993年にパリコレクションでデビューした、バリバリのファッションデザイナーの荒川眞一郎氏が立ち上げたブランド。ホンダのアパレルラインとのコラボレーションをきっかけに、2007年からバイクウェア専門に舵を切ったんです。都会的でモードなテイストもある美しいデザインもさることながら、ご自身が根っからのバイク乗りのせいか、早くからプロテクション性能も考慮した上質なウェアをリリースしているのがここの魅力。SRなどのテイスティ系バイクからスーパースポーツ系のバイクにも馴染むお洒落なライディングギアってなかなかないのですが、ここはそれを叶えてしまった稀有な存在です」(青柳さん)
クラシックなジージャンデザインをベースに、ライディングに適したディテールを与えられた「H39 メッシュブルゾン」。巧みなパターンワークとストレッチ素材の使用により、快適な着用感だ。着丈はやや長めの設定で、前傾しても背中が出ない。2万8500円。
風の侵入を防ぐよう、フロントはボタンとジップを併用。背中、肩、肘には別売りのプロテクターを仕込めるようにポケット付き。
こちらは「H39 デニムブルゾン」。ヴィンテージ加工の14ozのストレッチデニムを使用した数量限定品だ。背中、肩、肘には別売りプロテクター用のポケットあり。コットン100%。4万2000円。
内腿とふくらはぎの内側に、エンジンの熱から脚を守る断熱シートを装備した「P09断熱パンツ」。膝にはプロテクター用のポケットも装備している。2万5600円。
立体的なパターンを際立たせる独特のステッチワーク。ポケットのリフレクターのあしらいもお洒落。
シンイチロウ アラカワのキーカラーであるブラック×レッドのメッシュグローブ。上質なレザーを使用し、初めて着けた瞬間から手に優しく馴染む。1万8000円。
以上(問)シンイチロウ アラカワ TEL.03-6427-4520
※表示価格は税抜き
Vol.2ではBegin定番アウターでコーディネートを提案!
写真/植野 淳 文/吉田 巌(十万馬力) スタイリング/青柳光則 ヘアメイク/北村達彦