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服飾べしゃり力が身につく[小林学の小噺学]

ヴィンテージで掘りがいがあるのは90年代製「バーバリー」のバルマカーンコート!

服好き同士のしゃべり場で日夜繰り広げられる服飾トーク。知らなくても生きていけるネタを披露し合う瞬間こそ、服好きには至福のジ・カ・ン。ということで、業界屈指の服飾べしゃり力で洒落者を引き込むオーベルジュの小林さんを指南役に迎え、即話したくなる小噺をレッツ・スタディ♪

Profile
オーベルジュ デザイナー 小林 学さん

オーベルジュ デザイナー

小林 学さん

服飾漫談師

1966年生まれ。ヴィンテージにモードにフレンチと守備範囲は宇宙。べしゃり力も業界随一で、自身のYouTubeチャンネルでも服好き垂涎の小噺を軽快に繰り広げる、服飾亭の止め名。ちなみに題字は愛娘の小林凛さん著!

《バーバリーの90年代製コート》
「30年前の英国から、現代の日本の服マニアたちに届いたラブレター」

バーバリーの90年代製コート

手前は96年製で、数年前に9万円チョイで購入。奥は70年代製で、今はサイズ&状態がよければ20~30万円程度の価値がつく。「70年代製は小衿でAラインなのに、96年製はデカ衿でIライン。微妙に今の気分じゃないのが愛おしい(苦笑)」

今ヴィンテージ界は“2周目”に突入している。前回バレンシア製のリーバイスを小噺した際も触れたテーマですが、今月はその続報。“1周目”たる、古きよきオリジナルたちが、とても買える値段じゃなくなってしまったため、年代は浅くて買いやすいけど、しっかり役が乗ってるアイテムたちを、新たなヴィンテージとして捉えるのが、“2周目”の流れ。

そしてリーバイスと同じように、バーバリーもまた、この潮流の牽引者として人気が絶えない名門です。とくにバルマカーン(ステンカラーと同じ意味ね)コート! あらゆるブランドが手がける定番品目ですが、ここのコートは歴史に裏打ちされた格的にも、純粋なクオリティ的にもトップクラスで、男服のマスターピースとして名を馳せています。

ただ前述の通り、そのオリジナルとして“1周目”に認定されている、70年代以前に作られた製品は、今じゃ状態次第では20~30万円で取り引きされることも(驚)。こんなのとてもじゃないけど手が出せない! 
 
ということで、昨今服好きの間で“2周目”として注目されてるのが、90年代以降に作られた製品です。これがまた面白くて掘りがいがある! 珍妙なディテールに彩られた、思わず苦笑いしてしまうような個性派が多い反面、なかには“1周目”と遜色ない、ザ・バーバリーな王道仕様の逸品も!

自分が掘り当てたこの96年製のコートはまさにそれ。母国“英国製”、ユルさを醸せる“一枚袖”、光の角度で色彩が変わる“玉虫生地”と、玄人好みのツボをしっかり押さえてるのもさることながら、一番ブッ刺さったのがこの裏地! バーバリーと言えばノバチェックが有名ですが、今作にはその昔、ごく一部の製品に使われていた、渋色チェックの玉虫生地が採用されているんです。

これは本当に渋すぎる! というか、2020年代を生きる日本のマニア連中が喜びそうなネタを、90年代の英国の企画担当者たちがギュウギュウに詰め込んでくれてたってこと自体に、ロマンを感じません!? 僕にとっては30年前の英国から届いたラブレター。オリジナルは憧れの存在ですが、2周目のなかでラブレターを探り当てるのもヴィンテージの醍醐味だと痛感しています。

はみだし用語解説
 

玉虫生地の裏地

❶玉虫生地の裏地
小林さんが感動したのがこのマニアックな裏地。模様や配色が伝統のノバチェックと異なるのはもちろん、外からは見えにくい部分なのに玉虫生地を使っているという入魂ぶりに敬礼!
 

1996年製

❷1996年製
バーバリーのコートは、内ポケの中などに製造年月日が記載されたタグが備えられている個体も。流通量が多く、お値打ち価格な90年代以降の製品でも、通好みな意匠が満載された逸品も。

 
※表示価格は税込み


[ビギン2025年12月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。

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