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“世界一過酷なヨットレース”に挑む、白石康次郎さんの「戦闘服」を徹底解剖。ヘリーハンセンの名品にも宿るノウハウとは【HELLY HANSENの海海総研#5】

 

本日の研究

単独無寄港で世界を一周する、4年に一度のヨットレース「ヴァンデ・グローブ」。挑戦者・白石康次郎選手のユニフォームと、ヘリーハンセンの深〜い関係って?

ヴァンデ・グローブは単独無寄港で世界を一周する、世界最高峰のヨットレース。1989年に始まり、4年ごとに開催されています。コースの距離は、およそ2万6000マイル(約4万8152km)。フランスのヴァンデ県レ・サーブル=ドロンヌの港を出発後、100日ほどの時間を掛けて南半球を回り、再びレ・サーブル=ドロンヌへと戻ってきます。

灼熱の赤道も寒風吹きすさぶ南氷洋も超え、たった一人、ときに強風や荒波にさらされながら帆走するレースは、これ以上ないほど過酷。チームとの無線も、医学的アドバイスなどの命に関わる事案についてのみ許されています。

ヘリーハンセンがユニフォームを提供するプロセーラーの白石康次郎選手は、2016年、ヴァンデ・グローブにアジア勢として初出場。奮闘するも、このときはマストトラブルによってリタイアとなりました。その後2020年、2度目の出場を果たした際には、序盤にメインセールが破けるトラブルに見舞われながらも船上で修復し、94日間を掛けて奇跡の完走を果たしたのでした。

そして2024年11月10日──。白石選手は3度目のヴァンデ・グローブに挑み、レ・サーブル=ドロンヌの港を出発しました。

海海総研DATA:

参照:Official website of the Vendée Globe 2024

単独無寄港。たった一人でヨットに乗り込み、世界を一周するヴァンデ・グローブは、その過酷さから「海のエベレスト」とも称されるレースです。1989年の第1回から計9回、2020〜2021年にかけての前回大会までに200人が出場しましたが、フィニッシュできたのは57%の114人。3人の選手が命を落としました。それほどまでに危険なレースに挑むには、万全の装備が必要。ヘリーハンセンは、2016年の初出場時よりギアの共同開発・提供を通じて白石選手の挑戦を支えてきました。

白石選手・試合直前インタビュー
進み続ける原動力は「好奇心」

2024年11月10日、3度目のヴァンデ・グローブへ挑みレ・サーブル=ドロンヌの港を出発した白石康次郎選手──。その直前、日本に帰ってきていた白石選手にインタビューの機会をいただきました。白石選手が過酷なヨットレースに挑み続ける理由、その原動力、そして「戦闘服」と位置づけるギアに求めることとは?

Profile

プロセーラー/DMG MORI SAILING TEAM スキッパー

白石康次郎さん

1967年生まれ。少年時代に船で世界を回ることを夢に抱き、高校在学中に単独世界一周ヨットレースで優勝した故・多田雄幸氏に弟子入り。1994年、26歳のときに単独無寄港無補給世界一周の史上最年少記録(当時)を打ち立てる。2006年には単独世界一周ヨットレース「VELUX ファイブ・オーシャンズ」Class Ⅰ(60ft)に参戦し、2位でゴール。2016年には世界最高峰のヨットレース「ヴァンデ・グローブ」にアジア勢として初挑戦。マストトラブルでリタイアに終わるも2020年に再度挑戦し、メインセールが破れるトラブルを乗り越え、94日間をかけてアジア勢初完走を成し遂げた。そして3度目の挑戦として、2024年11月10日〜のヴァンデ・グローブに挑む──。

──ヘリーハンセンとの出会いを教えてください。

2002年からウェアを提供してもらっています。山のブランドはたくさんあるけれど、海のブランドってなかなかなくて。一番有名なのがヘリーハンセンなので、世界一周のレースに挑むときにこちらからウェアの提供をお願いし、ぜひやりましょう!といっていただいて。

ただ2002年当時は、まだ世界一周に耐えうるウェアは作っていなかった。だから本番には別のブランドのギアを着て望んだのですが、2006年の単独世界一周レース(VELUX ファイブ・オーシャンズ)に挑むにあたり、ヘリーハンセン・ジャパンから、せっかくなら共同開発してオリジナルのウェアを作りましょうと嬉しいお申し出があった。それからはオーダーメイドの合羽を着るようになりました。

当時はヨーロッパにも、レース用のオーダーメイドのウェアはなかった。だからすごいことなんです。膨大な時間と人の力を注いで、実験設備まで借りて研究開発をしてくれるんですから。 最初に開発したときは、寝ている状態からいかに早く身に着けられるか?というテーマがありました。寝ている状態からサロペットとジャケットを着て、ブーツを履いて(落水防止用の)ハーネスを付けて飛び出るのですが、外ではもうバンバンバンバン、セールが唸っている。裂けないうちにいち早く出なきゃいけないから、少しでも早く着られるのが重要で。

だからそのときは、ハーネスを最初から服に縫いつけて、上下もワンピースにすることにしました。船が進化したいまは、動きやすさを考慮して再びジャケットとサロペットのツーピースに戻りましたけどね。

ヘリーハンセンとは特別な関係で、2002年、2006年、2016年、2020年と4回にわたり世界一周をともに戦ってきました。

──ジャケットとサロペットは「戦闘服」と呼んでいるそうですね。

はい。昔は「板子一枚、下は地獄」といったものですが、板子というのは甲板のことで、海に落ちたら助けてくれる人はいないでしょう? それでも、波しぶきの中を甲板に出て作業しなきゃいけない。そのときに着るから「戦闘服」と呼んでいます。

──ヘリーハンセンファンからアツい支持を受けている名品・「オーシャンフレイジャケット」には、補強箇所に白石さんからのフィードバックが活かされていると聞きました。

ヨットの甲板は「ノンスリップデッキ」といって、滑らないようにザラザラになっているんですね。なので、そこへ長時間座ったり膝をつくとヤスリの上で作業しているようなものなので、補強しないとどうしても擦り切れてしまうんです。かといって補強しすぎると重くてゴワゴワになってしまうので、塩梅が難しい。だから、どこを補強すれば強度と軽さを両立できるか?について、経験から随分フィードバックしました。

防水性と快適さの両立についてもアドバイスしています。海水って蒸発しても塩分が残るでしょう? そして塩分は水を吸うから、ずっと湿った状態になる。侵入させないことが重要なんです。

──新しい「戦闘服」のテーマが「軽く動きやすく」、と伺いましたが、実際着られてみていかがでしょう?

僕らは120kgあるメインセールの上げ下ろしも、全部自分でやらなきゃいけない。だから当然、戦闘服は軽くて動きやすい方がいいのですが、最新版は今までよりもかなり良くなったと思います。

──フォイル艇(※)は操船も難しいのでしょうか?

難しいというか、激しいですね。とにかく速くてジェットコースターに乗っているようなものだから、体への負担がものすごく大きくて。乗っているだけでもヘトヘトになるのに、その上で作業しなきゃいけないし、休めない。フォイル艇になってからは、ものすごくレースが過酷になりました。

ちなみに交代要員がいないので、1時間以上寝ることはありません。昼も夜もなく、仮眠して起きて、操船してまた仮眠して起きて、といった感じです。

※左右にL字型の水中翼=フォイルを備えた船。スピードに乗ると船底が宙に浮いた状態となり、より高速での帆走が可能に。

──それは大変ですね! レース中はどういう食事をされているのですか?

アルファ米が主食です。味噌汁なんかも全部インスタントですね。軽いほうが船は速くなるので、軽くて燃料と水をあまり使わないものを積んでいきます。

──モチベーションを維持する工夫は?

子どもの頃に世界一周したいという夢を見て、自分がやりたいと言って挑んでいるので、維持するために何かしていることはないですね。そもそものモチベーションが好奇心なので。

──日本に帰ってきた際は何をされていますか?

家族が日本にいるので、一緒に過ごします。あとは美味しい日本食を食べる。それからお墓参りしたり、神様のところにお礼を言ったり。僕にとっては、ありきたりな日常が特別なものに感じられて。今、こうしてテーブルのお茶が動かないことすら、イイなぁと思いますから(笑)。

──レースの中でも、ヴァンデ・グローブはやはり特別ですか?

そうですね。コースが地球一周ですし、しかも1人だからこれ以上過酷なことはない。でも同時に、過去の経験だったり想像力だったり、自分のすべてを試せる、尽くせることもほかにないと思うんです。

──醍醐味は何でしょう?

ひとりで海にいると、生きることの実感が味わえますよね。死がそばにあって、初めて生きるってことが実感できる。 それから「中庸」がいいとわかる。都会と自然の両極端を見ることで、人間と自然の真ん中がわかるんです。人の中にばかりいると雑念が多くて、自分が何者であるかわからなくなることってありませんか? だからBeginの読者の皆さんにも、海へ山へ、自然の中へぜひ行ってほしいです。おすすめは裸足で海辺を歩くこと。グランディングというのですが、海って“触れられるエネルギー”なんですね。バシャバシャと素足で海に触れて、ぜひ、世の中のイヤなことを全部忘れて帰ってください。

あ、ウェアはヘリーハンセンでね(笑)。やっぱり海へ行くには安全でなきゃ駄目ですし、快適じゃなきゃ駄目なので。

──ヘリーハンセンに伝えたいことはありますか?

これからも一緒に冒険しましょう!と。ヘリーハンセンさんのサポートのおかげで、これまでも世界4周、無事に帰ってこられたと思っています。今後もあらゆる冒険をともにして、そのノウハウがカスタマーの皆さんの人生を豊かにするお役に立てるように、支え合いながら一緒に頑張っていきたいですね。

──応援するファンの方にメッセージをお願いします。

応援してくださる方にも「冒険しましょう!」と伝えたいです。今までやったことのないスポーツや習い事を始めることでもいいですし、今まで行ったことのない場所へ行ったり、会ったことない人に会うのも冒険です。自分にとって居心地のいい場所から抜け出して、体験したことのない世界へ一歩踏み出ましょう!と。人生が豊かになりますからね。

──レースの結果も、期待していいですか?

期待はしないでください(笑)。僕も、期待はしないです。何が起こるかわからないから。そして、結果に執着しない。成功が目的だったら、失敗したら終わっちゃうでしょう? 僕にとってレースは好奇心からやっているのであって、成功しようが失敗しようが冒険は冒険なんです。だから、成功も失敗もない。

僕も世界一周に7回挑んで、3回失敗していますからね。ヴァンデ・グローブって、そもそも完走率が57%しかないんです。僕の仲間でも、3回連続完走してる人はたった1人で、あとはトップセーラーでも全員リタイアを経験している。1回や2回のリタイヤでヘコたれているようじゃ、通用しません。だから、皆さんも期待しないで“楽しんで”いただければ幸いです!

ともにアップデートし続ける。
白石選手の最新ギア&ヘリーハンセンの名品を徹底比較

世界一過酷なヨットレース、ヴァンデ・グローブに挑むために白石選手とヘリーハンセンが共同開発する“戦闘服”。その最新版は、世界一周をともにしても破けない堅牢さを保つとともに、船上での動きやすさ、軽さを追求したものになっています。そして、過去2回のヴァンデ・グローブ挑戦を経て得られたギアづくりの知見は、お店で買えるセーリングジャケット&トラウザースの名品「オーシャンフレイジャケット」、「オーシャンフレイトラウザース」にも活かされています。

ここからは、白石選手が着用する極限仕様のジャケット&サロペットと、オーシャンフレイジャケット&オーシャンフレイトラウザース、その共通点や白石選手からのフィードバックが活きたディテールを見ていきましょう。ギア好きなアナタなら、練りに練られた機能的な設計&タフネスに思わず膝を打つことウケアイですよ!

「もしも」に備える蛍光色フード

ヨットレースによっては、ジャケットの総面積の一部を必ず蛍光色にしなくてはならない、などの規定が設けられていることがあります。これは、落水時に発見しやすくするためのもの。水面から覗くフードが派手色で、かつリフレクターが付いているのも、安全を考慮してのことに他なりません。なお、ともにビルトインフード設計のため、平時は収納して着用することも可能です。

スタンドカラーの高さ&前立てにもご注目!

ヴァンデ・グローブの最新の船には“ドジャー”という屋根が設けられたスペースがあり、平時に波しぶきを浴びるケースはそう多くありません。そのため白石選手のジャケットは、従来よりスタンドカラーを低くしつつ、前立ても省くことで軽量化が図られています。一方のオーシャンフレイジャケットは、多様なシーンを想定し、高めのスタンドカラーと前立てを備えています。

二重構造になった袖口

セイルの上げ下ろしをする作業では、シート(ロープ)を操作するために手を上げる動作が多くあります。手を上げると水が浸入しやすいため、これをシャットアウトすべく袖はダブルカフ仕様に。なおインナーカフは快適さも考慮し、伸縮性に富むアビラスティックゴム&ベルクロ留めになっています。

背面・裾付近の補強

ヨット上では座りながらの作業も多く、ジャケットの裾が擦り切れてしまうことがあります。そのため、裾周りはコーデュラ素材の別布を当てて補強。オーシャンフレイジャケットにも、その知見が活かされています。

裾内側のドローコード

ともに裾の内側にはドローコードが通っています。フィット感を高め、水や冷気の侵入を防ぐためのベーシックなディテールです。

ウエスト調整用のベルト

ウエストは、ベルクロ留めのベルトを締め込むことでフィットさせる仕組み。ベルトにはゴムが付いていて、屈んだときなどにも突っ張ることなく体の動きに追随するよう設計されています。

ヒップ&ニーの補強

座ったり膝をついての作業も多いヨットレース。ヤスリのようにザラザラした甲板では、何も対策しないとトラウザースのお尻や膝が擦り切れてしまいます。水や冷気が浸入する穴は命取りになりますから、補強は不可欠。しかし、適切に補強しないと、今度は動きづらくなってしまったり、重量が嵩むデメリットも……。そこでヘリーハンセンは、2度のヴァンデ・グローブ挑戦経験のある白石選手からのフィードバックを元に、船上で擦れやすい箇所をピンポイントで補強。オーシャンフレイジャケットにも、その知見が活かされています。

ダブルジップのフロント

フロントは、男性のおトイレ問題に配慮したダブルジップ仕様。水が浸入してこないように、下部の内側には雨返しの布が付いています。

180°開脚できる股のパターン

しゃがんで作業する際に動きやすいように、はたまたしゃがんだ弾みに生地がビリッといかないように、股にはガゼットが設けられ、180°の開脚ができるよう設計されています。セーリングのプロも納得の動きやすさを実感あれ。

比較していたのは……
アウトドアやウィンタースポーツにも持ってこい。
ヘリーハンセンのマスターピース「オーシャンフレイ」シリーズ

オーシャンフレイジャケット(ユニセックス)

白石選手のサポートクルーも着用する“セーラーが認める”セーリングウェア。素材は表地に70Dのナイロンを用いた2層構造の「ヘリーテックパフォーマンス」生地で、耐水性2万mm、透湿度8000gの防水透湿性を誇る。衿高のスタンドカラーは防寒性に優れ、スキー・スノボ界隈での人気も高い……というのは裏話だ。ちなみに“フレイ”の名前は、北欧神話に登場する豊穣を司る神に由来。縁起がいいし、釣りのお供にも最高じゃない? 世界の7つの海にちなんだ7色展開!(HH12352) 3万7400円

オーシャンフレイトラウザース(ユニセックス)

防水透湿性に優れる2層構造の「ヘリーテックパフォーマンス」生地を用いたトラウザース。表地のナイロンは、リサイクル原料率53%のそれを使用し、環境へ配慮している(ジャケットも共通)。ゆとりのあるサイジングゆえパンツの上からはきやすく、セーリングや釣りといった水回りのアクティビティはもちろん、庭仕事や洗車のお供にも重宝する。膝とヒップは頑強なコーデュラナイロンで補強。裾はベルクロによって絞れる設計で、水の浸入を防ぐ。4色展開。(HH22353)3万3000円

白石選手の情熱を宿して。 ヘリーハンセンの挑戦は続く

過酷なヨットレースに挑む白石康次郎選手と、ギアの共同開発を通じてその挑戦を支えるヘリーハンセン。2006年から始まった両者の冒険は、これからも続いていきます。

スタート前のパフォーマンスの様子

ヘリーハンセンがギアに求めるのは、機能性や快適性、そして何にもまして安全を守ること。白石選手から届くフィードバックは製品づくりに活かされ、一般のカスタマーの安全にも寄与します。

ここまでお読みくださった読者の中には、白石選手の言葉に触発され、海や湖へ行ってみたくなったという方もいらっしゃることでしょう。皆さんもヘリーハンセンのウェアを着て、安全に、快適に海をエンジョイしていただけたら幸いです!

INFORMATION

HELLY HANSEN / ヘリーハンセン
1877年にノルウェーで誕生したマリンウエアブランド。「BE WITH WATER」をコンセプトに、創業以来140年以上にわたり防水テクノロジーを追求し、自然と対峙し ながら共存するために革新的な製品を開発してきました。また未来の地球のために、 きれいな海を残していく為のアクションも多数行っています。 

ROAD TO VENDÉE | ヘリーハンセン公式特設サイト https://www.goldwin.co.jp/hellyhansen/vendeeglobe2024

商品の問い合わせ先/ゴールドウイン カスタマーサービスセンター ☎0120-307-560

※表示価格は税込みです


staff 写真/小野田陽一 武蔵俊介 文/ 秦大輔

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