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【HELLY HANSENの海海総研#4】汚れているほど鮮やかになるTシャツと、「2048年問題」の関係って?

本日の研究

徹底的に海に向き合う、ヘリーハンセン・H2O PROJECTとは?

H2Oプロジェクトは、「すべては海や水のためにできること。」をスローガンにヘリーハンセンが展開する環境保全プロジェクトです。プロジェクト名は、水の化学元素である“H2O”にヘリーハンセンのイニシャルのふたつの“H”、そしてオーシャンの頭文字の“O”を掛けたもの。これまでブランドが注力してきた「海」や「水」を守る責任をより継続的に果たすべく、2005年に立ち上げられました。

海海総研data:

参照:2006年11月『サイエンス』誌,『2048年、海から魚がいなくなる』

科学専門誌の権威である『サイエンス』に掲載された論文に、衝撃的な予測が示されていました。地球温暖化や乱獲、そして化学物質やプラスチックなどの海洋汚染により、このままでは2048年には海から食用魚が姿を消すというのです。この予測を「2048年問題」といいます。1つの学説とはいえ、予測はファクトに基づき立てられたもの。我々が問題に向き合い、自ら考え、何らかのアクションする必要に迫られていることは間違いありません。

H2Oプロジェクトは、3つの視点に基づき進められています。1つは、ヘリーハンセンがアクションする「Project」。もう1つは、ヘリーハンセンを通じて参加者が自らの視点でアクションに繋げる「Narrative」。そしてもう1つがアクションの仕方を示す「How to Action」。これらの視点に基づき、ヘリーハンセンは海や水、地球環境に配慮し、深く考えるきっかけを与えてくれる商品開発や、さまざまなイベントを推進しているのです。

H2Oプロジェクトのホームページをまだ見たことがない人は、ぜひ覗いてみてください。コンテンツをクリックする度にクルクル回る文字は、”THINK WATER”のメッセージ。まず考えること、考え続けることの大切さを、回り続けるその文字が示しています。

ここからは、ヘリーハンセンが推進するH2Oプロジェクトの実例を紹介。気軽に、楽しくお読みいただきつつ、我々が直面する海や水の環境について考えるきっかけになれば幸いです!

あえて、何気なく手に取るベーシックな仕上がりに。
日常になじむペットボトルリサイクルウェア

小学生の頃を思い出してみてください。親から「宿題やりなさい」と言われた途端になんだかやる気がしぼんでしまったことはありませんでしたか? 自発的にしたい、と思わないでする行動は長続きしないもの。それは、環境保護活動にも同じことがいえます。H2Oプロジェクトは海や水を守るための活動ですが、ヘリーハンセンが大切にするのは、まず楽しさがあって、その先に気づきがあること。だから、アイテム開発もグッドデザインがあってこそ。デザインに惹かれて手にとったらじつは……という動線を大切にしています。

そんなヘリーハンセンの思いが生んだ人気シリーズが、UpDRIFT(アップドリフト※)のベーシックな無地Tシャツ。ドレープが美しく表れるプレーン&クリーンな天竺生地は、リサイクルポリエステル100%。そのうち数パーセントに、漂着ペットボトルをリサイクルしたアップドリフト素材が使用されています。Tシャツ1枚につき約10本分のペットボトルがリサイクル使用されているため、そうとは気がつかずに選択しても、有限な石油由来の原料を抑え、自然環境を守ることに繋がります。

※アップドリフトとは、海辺に漂着したプラスチックゴミをビーチクリーンによって回収し、リサイクルやアップサイクルすることで新しい価値を生み出すプロジェクトです。

なぜTシャツの原料に、わざわざ漂着ペットボトルを使うのか? それは、毎日海辺におびただしいほどのペットボトルが漂着し(日本の海岸線に漂着するペットボトルゴミは年間約3万トン!)、それを取り除くビーチクリーン活動を行う人々の存在や、彼らの思いを知ってほしいから。地元のボランティアや自治体の方々、リサイクル業者の方々の手を経て集められる漂着ペットボトルがTシャツになるまでには、収集だけでなくさまざまな苦労が伴います。ペットボトルには汚れや色の付いたものや貝殻が付着したものなどいろいろあり、それらをリサイクルするには手作業で分別したり、専用の機械で圧縮するなどの作業が必要なのです。

正直にいうと、漂着ペットボトルのリサイクルがもたらす環境への影響は小さいかもしれません。しかし、お気に入りのTシャツが漂着ごみ問題へ思いを馳せるきっかけとなり、マイボトルを携帯するなど、日々のアクションが少しでも変わったらどうでしょう? 踏み出した一歩は、決して小さいものではないはず。ヘリーハンセンがアップドリフトTシャツを通じて伝えたいのは、まさしく、その一歩を踏み出す大切さなのです。

ショートスリーブ アップドリフトブランクティー(ユニセックス)

漂着ペットボトルを再利用し原料の一部に用いた、リサイクルポリエステル100%のカットソー。デザインはベーシックそのもので、風合いもいたってナチュラル。左脇には、さりげなくタグが配されている。吸汗速乾性を備えるため、水辺のアクティビティのお供にもぴったり。長きにわたって愛用したい一着だ。5色展開。(HH62310)5390円

環境問題をあえてクールなデザインとして落とし込む。
Climate Change Art Project

海洋プラスチックごみをリサイクルして作られているシリーズは他にも。こちらは、リサイクルポリとオーガニックコットンを混紡したTシャツの背中をキャンバスにした「Climate Change Art Project(クライメイト チェンジ アートプロジェクト)」の一枚です。クライメイト チェンジ アートプロジェクトが目指すところは、激変する海の実態を可視化し、あえてアートに落とし込むことで着る人や目にした人々が問題について知り、考えるきっかけとすること。サウンドプロデューサー/プロダクトデザイナーの岡本光市さんがヴィジュアルを手掛けた写真の1枚はその代表作で、プリントは世界の海の海水へリトマス試験紙を漬け、海が酸性化している現状を表しています。オレンジが鮮やかに染まるほど、酸性化が進んでいる証。そこには、美しいほど危機が進んでいるという皮肉が込められているのです。

本年は、水中写真家の鍵井靖章さんとのコラボレーションも展開。作品をプリントしたTシャツをリリースしました。SF映画のような幻想的な風景ですが、被写体は海中に廃棄された船の残骸。海中の“ごみ”を直接その目で見る、ダイバーなればこその視点が生んだ一枚です。
フォトTシャツを着ていると「何の写真?」と聞かれるシーンがよくありますが、そのときに「じつはね……」と海の実情を交えて返せたら……とてもスマートだと思いませんか?

ロングスリーブ クライメイト チェンジティー(ユニセックス)

EVENT INFO:
YASUAKI KAGII PHOTO EXHIBITION by HELLY HANSEN H2O Project

2024年10月19日(土)〜11月24日(日)までの期間、「ヘリーハンセン オーシャン 葉山店」にて、水中写真家、鍵井靖章さんのフォトエキシビジョンを開催。また11月16日(土)14:00からは、鍵井靖章さんと、“海と人とを学びでつなぐ”活動を手掛ける「みなとラボ」の田口康大さんを招き、作品や日本の海の現状、海洋環境を取り巻くさまざまなことについてのトークイベントを行う予定です。海に程近いスペースでアートを見ながら、海中へ思いを馳せる……なーんてのもオツなんじゃない? 予約不要、参加費無料なのでふるってご参加を!詳細はこちらから。

一枚のフリスビーがヘリーハンセンが志すものを象徴していた!?
HH×フリスビープロクラシック

自然豊かな地として知られる、北海道 知床半島。ですが、ルシャ湾に面するその海岸には、多くのごみが漂着します。とりわけ漁業に用いるブイ(浮標)などのプラスチックごみが多く、漂着すると人力だけでは回収が困難。ブイはそもそもが打ち寄せる波や紫外線に耐えうるよう頑強に作られていることもあり、放置していると半永久的に残り続けます。

そこでヘリーハンセンは、リサイクル企業の株式会社マテック、繊維商社の豊島株式会社とタッグを組み、漂着したブイを回収し、「フリスビー」にリサイクルするプロジェクトを始動しました。 フリスビーをつくろうと決めた理由は、“遊び”を通じてたくさんの人に興味を持ってもらい、環境について自身に何ができるかポジティブに考えてもらうため。人々を海や水辺に誘うとともに、自然や環境問題に目を向けるきっかけをつくるのがヘリーハンセンの使命であり、フリスビーはまさしく、その使命を象徴するアイテムなのです。

ちなみに、毎年回収されるブイの量は、850kgほど。トラックに乗りきる量がこの量というだけで、実際にはもっと大量に漂着しているといいます。そんな海ごみが堆積した海岸を、ヒグマが歩く光景を思い浮かべてみてください──。知床では、現実にそれが起こっています。

HH×フリスビープロクラシック

海流によって運ばれる栄養素が知床の豊かな自然を支える一方で、大量のプラスチックごみが漂着し、体積する現状がある──。そんな現状に目を向けてもらうべく、知床半島の海岸に漂着する大量のブイを、フリスビーにリサイクル。ポップなタッチのイラストには、役目を終え波間の間に漂うブイが描かれている。多いに遊びながら、海の環境保全へも思いを馳せましょう!(HA92400FR) 2200円。※Frisbee はWham-O社の商標です。

船を運び終え、人々の手元に新しい風を運びに。
同じものは2つとない、セイルプロジェクト VINDKRAFT

「VINDKRAFT」(ヴィンドクラフト)は、ヘリーハンセンが2020年から取り組んでいるヨットのセイル(帆)のリサイクルプロジェクト。全国のマリーナやヨットオーナーから役目を終えたセイルを回収し、新たな価値を与えるべくトートバッグやポーチなどに作り変えています。 激しい海風や紫外線に耐えてきたセイルゆえ、丈夫さや耐水性はお墨付き。セイルナンバーやボートの名前、セイルのタイプなどの情報を記したトラッキングネームが付き、そのデザインにも同じものは2つとありません。というか、蘊蓄抜きにしても純粋にカッコいい! 先の遊びもしかり、人は好きなモノゴトには自ずと興味が湧くもの。ヴィンドクラフトの製品には、バッグへの愛着が海へ意識を向けるきっかけになってほしい──という願いが込められています。 昨今、ヨット業界では不適切な廃棄物処理が問題になっており、ヘリーハンセンをはじめ、問題に目を向けて取り組む企業が増えています。ヴィンドクラフトのバッグを通じて、皆さんもぜひ意識を向けてみてください。

海海総研data:

参照:2024年,『サステナブルな社会の実現に関する消費者意識調査,ボストン コンサルティング グループ

日本全国の15歳〜69歳までの消費者を対象に定期的に実施されている調査によると、地球温暖化・気候変動問題を知って行動を変えた人の数は、2021年から2023年にかけて15%から19%と緩やかに増加してきたものの、2024年1月の調査では18%にとどまり、横ばいになっている。環境問題が悪化の一途を辿る中でのこの結果は、どこか他責思考になっていることが示唆される。頭では行動を変えるべきとわかっていても、行動に移すにはきっかけが必要。今回の記事やH2Oプロジェクトの製品をトリガーに、少しでも一歩を踏み出す方が増えてくれたら幸いです。

いずれは人と人とのハブになることを目指して。
H2Oプロジェクトのこれから

「海を守ることは、あなた自身を守ること。」こちらはH2Oプロジェクトが2005年に出していた広告資料に記載されている一節です。H2Oプロジェクトは、「海」と「水」にまつわるさまざまな問題に、さまざまな視点から光を当てる複合プロジェクト。紹介したフォトエキシビジョンやトークイベントの例にあるように、切り口は商品開発のみにとどまりません。昨今では、SDGsについて学ぶ講座を上智大学 大学院 地球環境学研究科の織教授を講師に招いて開くなど、アカデミックなイベントも開催。今後もオフラインのイベントに注力していきたいといいます。

ヘリーハンセンが取り組んできたキッズオーシャンスクールや葉山アリーナでのイベントでは、参加したお客さん同士が繋がり、少しずつ環境や水の安全への意識をもつ仲間の輪が広がっていきました。H2Oプロジェクトは、海や水を守る意識をもったすべての人が主役。今後も環境を考えるきっかけを提供するとともに、さまざまな機会を通じて人と人とのハブになることを目指したいとヘリーハンセンはいいます。ここまで記事を読んでくださった皆さんも、きっと志を同じくするH2Oプロジェクトの仲間。ぜひ、イベントに参加して、仲間の輪に加わってください!

INFORMATION

HELLY HANSEN / ヘリーハンセン
1877年、ノルウェーの港町モスで商船艦長を務めていたヘリー・ジュエル・ハンセンが、防水着メーカーとして創業。現在は、「from ocean to mountain」をコンセプトに、セーリングをはじめトレッキングやスノースポーツなど、海から山までのさまざまなアクティビティを快適かつ機能的にサポートする製品を提供しています。

ヘリーハンセン公式サイト https://www.goldwin.co.jp/hellyhansen/

商品の問い合わせ先/ゴールドウイン カスタマーサービスセンター ☎0120-307-560

※表示価格は税込みです


staff 文/ 秦大輔

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