特集・連載
“フレンチカルチャーの大伝道師”小林 学さんの一生モノ3選
とことん使える一生モノ また値上げぇ~!?と、こっちが音を上げてしまいそうな昨今の日本経済……。でもしょげてばかりじゃいられない。モノ好き賢者の成功体験を聞きながら、結局得する「一生モノ」をオールジャンルで紹介します。 この記事は特集・連載「とことん使える一生モノ」#02です。
「普遍的な美しさが閉じ込められたフランス物を狙い撃ち」―オーベルジュ デザイナー 小林 学さん
センスは感じるのに力みはない。そんなフレンチプロダクトに長年魅せられ、気づけば周りはフレンチ尽くし。とくに思い入れ深いのは、やっぱりルノーのキャトルでしょうか。
30年ほど前、南仏カルカソンヌに本社を置くブランドに勤めていた時、物作りの師匠のような存在だったフランス人上司から、“学には絶対キャトルが似合うよ”と、妙に自信満々に言われ、いつか乗ってみたいなと。
4年前に念願叶って購入したものの、いざ乗ってみるとこれが大変。渋滞なんかにハマるとパーコレーションが起きてエンストしてしまうんです(苦笑)。
それでもやっぱりフォトジェニック度は抜群。61年から92年までほぼ変わらない普遍的なデザインのおかげで、車内で60年代~70年代の音楽を聴くと、当時の空気ごと体に入ってくる感覚が味わえるんです。
古きよきフランスが味わえるのはプジョーのミル類も同じ。定番の塩、コショウ用ミルは当然ヌートバー前から愛用してますし(笑)、アールデコ調デザインが美しい名作コーヒーミル“リック デラックス”は、いい豆を入手した時にだけ儀式的に使っています。
カルティエのトリニティ リングは、かの芸術家ジャン・コクトーが小指に着用していたことでも有名。若い頃から憧れていたもののマネする勇気が持てなかったんですが、年齢を重ねてようやく自分にも似合うようになってきた。フレンチ愛を示すとどめの一撃として、これから臆せず愛用します。
フレンチカルチャーの大伝道師
オーベルジュ デザイナー
小林 学さん
男服の名作を日本の職人たちの力を借りて現代的に再編集する人気ブランドの頭脳。服飾業界随一のフレンチラバーとして著名な存在。
①ルノーのキャトル86年製造
「面倒なのもまた可愛いフレンチプロダクト思想の塊」
“ブルージーンズのような車”をコンセプトに、61年〜92年まで800万台以上作られたタフ自慢の名車。「南国向けの“ニューカレドニア”という美色に映えるよう、シートをバケッタレザーと、愛知県一宮市の工房で織ってもらった生地にカスタマイズしています」
②プジョーのミル
「WBC前から挽いていた豆&調味料に最善を尽くす儀」
「半年前から本気でフランス料理にハマって」と、パリ・ユーセレクトシリーズの塩・コショウ用ミルを購入。傑作コーヒーミルは、「コーヒーを尋常じゃない量摂取する自分には憧れの存在。36年の初代モデルと50年代の復刻版、それぞれ実働完品揃えました」
③カルティエのトリニティ リング
「かのジャン・コクトーも愛でたフレンチ愛好家の目印」
愛情・忠誠・友情の意を込めて、1924年にルイ・カルティエが考案した傑作3連リング。「90年代の第一次フレンチブーム時から、オタク同士がフランス愛を比べる時のとどめの一撃に用いられてきました(笑)。コクトーと同じようにピンキーリングとして愛用中」
クルマ/編集部調べでは、キャトルは中古市場にある程度タマ数はある模様。ただ古い個体が多く、購入後のメンテは必要かも。
ミル/写真のコーヒーミルはアンティーク。現行品は万2000円~。スパイスミルのセットは購入可、2万1450円(プジョーミル)
指輪/トリニティ リングは、色や素材の違いでかなりのバリエが存在。17万500円~ ※編集部調べ
※表示価格は税込み
[ビギン2023年9月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。