好事家・南 貴之のヴィンテージインテリア紀行[古具のほそ道]
登録有形文化財にもなった説明不要の作品がモチーフ
まだ見ぬグッドデザインに出会いたい――。そんな想いから世界中を渡り歩き、掘り出し物を見つけては手に入れ、また買い逃しもしてきた南 貴之氏。そぞろ神に憑かれた現代の旅びとがおくる、情熱と偏愛の古物蒐集譚。
僕にとってのスーパーヒーロー
僕は骨董市を回るのが好きなんですが、見つけるとついつい買ってしまうのが岡本太郎グッズ。アートワークのよしあしは正直よくわからないんだけど、この人の経歴や生き方が好きで、言ってることも真理をついてるなと思うんです。
インテリジェンスよりは怒りなんかを感じる、アンチテーゼのようなもの。有名な“太陽の塔”も、「万博のためにシンボリックでとんでもないものをやろう!」ということでつくられたそうなんですけど、現代にそういうことができるアーティストっているんだろうか……なんて考えちゃうくらい。僕にとっては激烈なスーパーヒーローのような存在です。
行きつけのスナックのママも岡本太郎さんが好きでトイレにその語録を貼っていたんですけど、それが最高なんですよ!
『「お互いに」とか「みんなでやろう」とは、言わないことにしなければなりません。「誰かが」ではなく、「自分が」であり、また「今は駄目だけれども、いつか、きっと、そうなる」、「序々に」という、一見誠実そうなのも、ごまかしです。この瞬間に徹底する。「自分が、現在、すでにそうである」と言わなければならないのです。現在にないものは永久にない、というのが私の哲学です。逆に言えば、将来あるものならばかならず現在ある。だからこそ私は将来のことでも、現在に全責任をもつのです』(岡本太郎)
食らっちゃうよね、これは(笑)。僕もそうあらなきゃいけないなと、思うわけです。(南 貴之)
「芸術は 爆発だと知る 激烈さ」
BRAND:UNKNOWN
ITEM:OBJET
AGE:1970s
“太陽の塔”は1970年、大阪は吹田で当時史上最大級の規模で開催された万博のテーマ館の一部として建造された作品。このオブジェも同時期に製造されたもので、台座の文字のフォントなどに時代感が表れている。
DETAIL
上部と正面、そして背面にある顔は、それぞれ未来・現在・過去を表している。この“顔”は、万博以前から岡本太郎の作風を象徴するモチーフとして、高い認知度を誇っていた。
今買える![岡本太郎のオブジェ]
岡本太郎記念現代芸術振興財団公認商品 ©Taro Okamoto
日本を代表するフィギュアメーカー、海洋堂が制作した1/350スケールの”太陽の塔”はソフビ製。万博40周年の記念モデルで長らく在庫切れとなっていたが、先頃50周年という節目で再販に至った。4000円(海洋堂)
南 貴之
1976年生まれ。国内外のブランドのPR業をはじめ、型にはまらず活動中。公私混同しながら世界中のマーケットを巡り、日々新たな良品を探している。
[ビギン2021年4月号の記事を再構成]写真/若林武志 文/今野 壘