特集・連載
オーベルジュで味わう究極のフレンチシャツとは?
オーベルジュで味わう究極のフレンチ 男服には古くから伝わる「永世定番」が存在します。どれだけトレンドが変遷しても魅力が褪せず、一度クロゼットに招き入れれば、生涯ずっと居場所を失わない……。そんな傑作品を微細に研究し、現代へと再生させているのが、この「オーベルジュ」です。フランス語で“料理にこだわる宿泊施設付きレストラン”を意味する同ブランドの物作りは、極めて非効率的。厳選した上質素材を日本のマイスターたちの元へ持ち込み、その知恵と技術を借りながら、ヴィンテージを時に忠実に再現し、時にオリジンには足りない要素を加えながら、時代に即して進化させる。さながら三つ星フレンチのスペシャリテのように、職人の“手”によって丹誠込めて作られた作品は、今、ベーシック好きの玄人たちから熱狂的な支持を勝ち得ています。ここではオーベルジュがもっとも得意とする、フランスの名作を再定義したプロダクトを徹底解剖! オーベルジュの真髄に迫ります。 この記事は特集・連載「オーベルジュで味わう究極のフレンチ」#04です。
[フレンチBeginnerマスイの実況中継]
Q.究極のフレンチシャツとは?
A.ゲンズブール親子のシャンブレーシャツ
Q.究極のフレンチシャツとは?
A.ゲンズブール親子のシャンブレーシャツ
オーベルジュ デザイナー 小林さん「フレンチファッションのアイコンって誰だと思う?」
ビギン編集部・マスイ「そりゃ、スタイル・カウンシルのポール・ウェラーでしょ!」
小林さん「間違いじゃないけど、ビンビンにフレンチなのはゲンズブール親子だよ」
マスイ「アメリカンなシャンブレーがフレンチって……クセがゴイゴイスー!」
小林さん「右のセルジュ型はチビ衿のウエスタンシャツ。左のシャルロット型はBIGなワークシャツ。」
マスイ「ほ~。なんか、ほんのり色気を感じるスね……」
小林さん「2人をイメージして、ピンクをほんのり織り交ぜたんだ」
マスイ「師匠、勉強になりました!これからは親父って呼ばせてもらうス♪」
ゲンズブール親子
オーベルジュ デザイナー 小林 学さん
1966年生まれ。文化服装学院を卒業後、フランスに3年間遊学。帰国後、南仏に本社のあるブランドのデザイナーや、岡山のデニム工場の企画生産等を経て、’98年にスロウガンを、2018年にオーベルジュをスタート。
ストーリーを味わう[徹底レシピ解説]
“シャンブレー=粗野”を覆すフレンチローズ
’50年代から’80年代にかけて、シンガーソングライター、俳優、映画監督として活躍した、セルジュ・ゲンズブール。そしてこのフランスが生んだ鬼才の愛娘にして、同じく歌手、女優として活躍中のシャルロット・ゲンズブール。この親子は、フレンチのファッションアイコンとしてもっとも著名な存在です。
彼らのスタイルに着想を得たアイテムを、すでに何作も作り上げている小林さんは、今季新たに彼らが愛してやまなかった、シャンブレーシャツをオマージュ。
「セルジュはウエスタンシャツ、シャルロットはワークシャツと、親子揃ってシャンブレーを着てる写真が山ほど残ってるんですが、その姿が驚くほど洒脱。この雰囲気をどうにか再現したいなと」
思案するなか降り立ったのがピンクの糸を使うという奇策でした。
「これは完全に僕個人のイメージなんですが、セルジュはピンクのドンペリ飲んでそうだなとか、低血圧なシャルロットはピンクのチークで元気に見せようとしてそうだなとか、親子に共通するイメージがピンクだったんです(笑)」
かくして作られた、オリジナルのフレンチローズ シャンブレー。
「経には濃淡の異なる2色のブルー糸をランダムで配し、緯にはほんのりピンクに染めたスビン綿糸を織り込みました。その結果わずかに赤みがかった美色に。アメリカンなシャンブレーとは一線を画す、艶やかで抜け感のあるシャツを形にできたと自負しています」
「理想の親子を目指して辿り着いた“ピンクの糸”」
左/ロゼ効果でシャルロットの脱ワークシャンブレーを表現
右/衿の大きさやポケット、ヨークまでセルジュ風に
AUBERGE[オーベルジュ]
左/CHARLOTTE ROSE(シャルロット ローズ)
右/SERGE ROSE(セルジュ ローズ)
オシャレ親子のシャンブレーを、“ピンクのスビン綿糸を緯糸に採用する”という奇策で表現した意欲作。ウエスタンは小ぶりな衿、ポケットの形状、ヨークの角度まで、セルジュのシャツを完コピ。ワークシャツも身幅にゆとりをもたせて、シャルロット風にユルく羽織れるように設計している。左/3万7400円。右/4万1800円。
玉虫効果でピンクがチラリ
わかると10倍ウマくなる![秘伝のスパイス講座]
《ゲンズブール親子は仏が生んだ洒脱の象徴》
セルジュと、かの英国女優、ジェーン・バーキンとの間に生まれたシャルロット。父と娘が仲よくシャンブレーシャツを着用した写真は、フレンチファッションの教科書のひとつ。褪せたジーンズにタックインした、力の抜けたスタイリングは、玄人筋の間でも信者多数。
※表示価格は税込み
[ビギン2022年4月号の記事を再構成]写真/上野 敦、ダリウス・コプランド(以上、プルミエジュアン) 文/黒澤正人 スタイリング/佐々木 誠 イラスト/TOMOYA