特集・連載
MLBキャップのシールは取る? 取らない? それぞれの意味合いを理解する
MLBキャップの心得 カジュアルのちょうどいいアクセント。キャップを被る理由はそれで十分ですが、こと背景が明確なMLBのものとなると話は別。深く知ることで選ぶモデルもより的確になって、被った姿にも説得力が出るワケです。MLBキャップの奥行きに触れる9項目のルールブック、被る前にご一読あれ! この記事は特集・連載「MLBキャップの心得」#04です。
ツバのシールどうする?[取る派vs取らない派]ツバぜり合い勃発!?
きのこ派・たけのこ派、うどん派・そば派くらい意見の統一が難しそうな、ニューエラの“ツバのステッカーどうする!?”問題。草野球仲間でともにキャップの愛用者ながら、そのポリシーだけはスパッと二分した下記のご両名に、存分に語ってもらいました!
「“自分のもの”にすぐに仕立てることができるんです」
[取る派]
ポテン デザイナー 井口浩伸さん
1975年、東京都出身。名門野球部で活躍した、球歴輝かしい野球人。レトロで上質な国産キャップを展開する「ポテン」のデザイナー兼、恵比寿の名店「タマニワ」のオーナー。
「新品を誇示するヒップホップ文化の様式美なんです」
[取らない派]
チャコール バイヤー 武井 涼さん
1972年、千葉県出身。広尾の気鋭ショップを手掛ける目利き。MLBは全球団のホームゲームを25年かけて観戦してきたという生粋の野球マニア。“坊主にキャップ”が長年の定番。
井口 取る人のほうが多いと思いますが、武井さんは何故ですか?
武井 僕、MLBの試合を生で観たくてアメリカに行くほどに、こうなっていったんですよ。
井口 球場での影響なんですか?
武井 というよりは、現地のストリートの子たちの影響ですね。結構みんな、当たり前のように貼ったまま被るじゃないですか?
井口 確かに。あれは一説では、万引きで新品を手に入れたっていう証だったりすると向こうの知人に聞いたことがあります。
[取らない派]武井さん
武井 不良文化の側面もあるんでしょうね。ヒップホップカルチャーの新品観(解説①)とか。僕はアメリカへの憧れというところですが、新品を誇示するあの感じがアメリカっぽくていいなと。井口さんは取らずに被ることはなし?
ヒップホップカルチャーの新品観とは?
今や大人気のヒップホップを作ったのは、貧困層の黒人たち。彼らには経済的困窮から新品の服を買えないという悔しい過去があった。そのため新品を身に纏うことが、成功及び「イケてる」証となったのだ。
井口 ないですね~。改めて私物を見直したら、全部取ってました。昔から、買ったら取るのが当たり前。シールを取ることですぐに自分のものにできるというか。
武井 ツバに関してもお互い違ってて、僕はフラットで被るけど、井口さんは曲げますね。曲げる場合、シールが邪魔になるのかな?
[取る派]井口さん
井口 ハイ。そういう意味でも僕の被り方にはシールの相性が悪いんです。ちなみにイチローさんはオリックス時代、自分の好きな形に工場で曲げてもらってたそうな。
武井 流石だなぁ(笑)。でも選手の被り方は気になりますよね。
井口 ですね。そう言えばドジャースのクレイトン・カーショウ(解説②)とか、いつもキャップが汚いイメージがあります。いい選手だけど、あれは謎ですね~。
クレイトン・カーショウとは?
ドジャースの絶対的エース左腕で、MLB投手最高の栄誉、サイ・ヤング賞も3度獲得。そんな偉大な選手なのに、なぜかキャップは使用感ありがち。一説には、ゲン担ぎで敢えて使い古しを被るんだとか。
武井 僕も汗をかいたらそのまま洗濯しちゃいますけどね。それでシールが取れちゃうとちょっと残念な気もするけど(笑)。
[ビギン2022年2月号の記事を再構成]写真/伏見早織 文/今野 壘 スタイリング/宮崎 司(CODE) イラスト/TOMOYA