特集・連載
オーベルジュ 小林 学さんをめぐる、これからのシン・スタンダードとは #022
100人をめぐる、これからのシン・スタンダード モノを持たない風潮の今、本当に価値のあるモノってなんだろう? 身の丈に合わないモノはいらないし、ファストな使い捨てモノなんてもっといらない! とはいえ一切無駄を省いた生活もなんだか味気ないような……。大切なのは、何を所有するかよりも、どう向き合うかという視点。モノ選びの賢人たちは今、何を選び、どんなライフスタイルを志向するのか? 100人への取材を通じて、これからのスタンダードを探ります。 この記事は特集・連載「100人をめぐる、これからのシン・スタンダード」#22です。
「フレンチ純度100%だった最後のカングー」
オーベルジュ デザイナー 小林 学さん
ガソリン車を楽しめるラスト10年! そう考えて思い切り趣味に走ろうと、昨年末にほうぼう探して、この2002年式カングーを購入しました。昨今ブレイクしているキュートで便利な最新式カングーは、どうしても自分が求める商用仏車像とはマッチしなくて。
2002年といえば、カングーが日本で最初に発売された年。そしてこの頃までのカングーこそ、日産の影響を受けていない、ルノーだけの、つまりフランス人のマインドだけで造られていた最後のカングーとされています。
でもこれが、ハッキリ言って不便。広さだけに特化していて、ほかの装備も充実してないし装飾性も控えめ、何よりパワーが弱すぎ! 1.4リットルのエンジンは日本の道路事情を考えるとかなり心もとなく、アップダウンの激しい中央道なんかを走った日には、もうエンジンがバクバクいっちゃったり(笑)。
ただこの不自由さに、フランス人の根底に流れる“これで十分じゃん?”というマインドが投影されているような気がするんです。そしてそれこそが、自分がモノ作りの物差しにしている、フランスもの特有の“愛しき抜け感”に通じているんじゃないかと。
肩肘張って便利やお洒落を追求するより自然体が好まれる、最近の風潮にも当てはまる思考だと思います。
RENAULT[ルノー]
カングー 2002年モデル
小林さんを魅了してやまないオーシャングリーンカラーは、日本で発売された2002年当時しか展開されなかった希少カラー。状態によって異なるが、同年代のカングーは中古車市場で30万~100万円程度だとか。本人私物。
オーベルジュ デザイナー
小林 学(こばやしまなぶ)
1966年生まれ。オーベルジュとスロウガンという、2つの人気ブランドのデザイナー。不自由をおおらかに受け止めるフランス文化をこよなく愛し、現在はカングーとその先代・キャトルの2台を溺愛中だ。
※表示価格は税込み
[ビギン2021年12月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。