強“豪”オーストラリアにわずか9点差! ラグビー日本代表、23-32での惜敗と今後の進化
2017年11月以来4年ぶり、史上6度目の大一番だ。ラグビーワールドカップ優勝2回を誇り、現時点で世界ランキング3位のオーストラリア代表「ワラビーズ」が来日し、10月23日(土)に日本代表と対戦した。会場の昭和電工ドーム大分(大分県大分市)では、2019年のラグビーワールドカップ日本大会以来となる国内でのテストマッチを、17,004人もの観客が固唾を呑んで見守った。
過去5回の対戦は全敗で、前回の2017年11月4日の対戦は30-63と完敗に終わった日本代表は、この試合が代表デビューとなり初トライまで決めた姫野和樹が今回No.8で先発。新キャプテンのFLピーター・ラブスカフニ、副キャプテンのCTB中村亮土、その他PR稲垣啓太、SH流大、SO松田力也、WTBシオサイア・フィフィタらが先発に名を連ねた。なお、当初は出場予定だったFLリーチ マイケルは試合前日に負傷し、欠場となった。

6度目の対戦で初勝利を目指した日本代表だったが、前半、先制したのはオーストラリアだった。7分にWTBトム・ライトが最初のトライを決めると、花園近鉄ライナーズでプレーしているベテランSOクウェイド・クーパーがゴールを決め、0-7とされる。
16分に日本代表SO松田がペナルティゴールを決めて3-7としたものの、22分にはラインアウトモールを起点にアタックを仕掛けたオーストラリアのWTBジョーダン・ペタイアがトライ。3-14とリードを広げる。
しかし26分、敵陣まで攻め込んだ日本代表はSO松田が右大外に向けてキックパスを放つと、そのボールをWTBレメキ ロマノ ラヴァがキャッチしトライ。SO松田のゴールも成功し10-14とすると、33分にもSO松田がPGを決めて、13-14とわずか1点差に迫る。41分にはオーストラリアSOクーパーがPGを決めて13-17とされるが、わずか4点差で前半終了、試合を折り返した。
逆転を目指したい日本代表だったが、後半、最初の得点はオーストラリアだった。2分、PRタニエラ・トゥポウが突破力を生かしてトライし13-22とすると、8分、日本代表WTBレメキが危険なプレーによりシンビン(10分間の一時的退場)。14人での戦いを強いられた日本代表のディフェンスのほころびを突いて、後半10分、オーストラリアFLロブ・レオタがトライ。13-27とされる。
だが後半15分、オーストラリアのパスをインターセプトしたCTB中村が独走トライを決め、途中出場のSO田村優のゴールも成功。20-27と7点差に迫る。さらに34分、SO田村がPGを決めて23-27と4点差とし、あと1トライで逆転という状況に持ち込む。

後半38分、その夢は打ち砕かれる。オーストラリアはラインアウトモールからHOコナル・マキナニーがトライを決めて、23-32。日本代表は初勝利ならず、対ワラビーズ戦は6戦全敗となった。しかし9点差は過去最小のビハインドだった。ペナルティの多さ、セットピースの劣勢が響いたが、世界のトップチームにあと一歩で勝利できる位置までたどり着いたと言える一戦だった。試合後、通常よりも多くの選手がジャージーの交換をしていたが、それはオーストラリアの選手たちが日本代表の実力を認めた証と言えるだろう。
現在、南アフリカ、ニュージーランド、オーストラリア、アルゼンチン(世界ランキング順)の4カ国で毎年行われている「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」に日本が加えられる構想がある。今回の試合内容も対戦相手のオーストラリアから高く評価され、世界も日本代表の進化を褒め称えており、ザ・ラグビーチャンピオンシップ参戦に対しても概ね肯定的な見解が示されている。が、試合後に勝てなかった悔しさを噛みしめていた日本代表は、この結果に一切満足していない。
日本代表は欧州に遠征し、11月6日にアイルランド、11月13日にポルトガル、11月20日にスコットランドとそれぞれ敵地で対戦する。アイルランドとスコットランドは2019年のラグビーワールドカップで撃破している強豪だ。アイルランドには今年7月に敗れた借りを返し、スコットランドにはワールドカップに続く連勝を目指す大事な欧州遠征を通じて、日本代表はさらなる成長を遂げるはずだ。今回の悔しさは、そのための原動力となる。
齋藤龍太郎
《ワールドワイドにラグビーを取材中》
編集者として『ラグビー魂』をはじめとするムックや書籍を企画。2015年にフリーの編集者兼ライターとなり、トップリーグをはじめ日本代表の国内外のテストマッチ、ラグビーワールドカップを現地取材。フォトグラファーとしても活動。著書に『オールブラックス・プライド』(東邦出版)。
文・撮影/齋藤龍太郎