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蕎麦スス流 SOBA Su Su Ryu

Vol.76

稲田堤角あき(かどあき)

天ぷらそば+おにぎり+ゆでたまご
530円(340円+130円+60円)

角あき 天ぷらそば ゆでたまご おにぎり

川崎市は細長い。多摩川右岸の河口から川筋に沿って調布のあたりまで30kmほどを市域とする。その地形を背骨のように縦貫するのが府中街道で、京浜工業地帯と多摩地区を結ぶ物流の動脈だ。

角あき

今回ご紹介するお店は、その府中街道を川崎で最も遡った地点にある。いわば「川崎最奥の路麺」。トラックやダンプの往来の絶え間ない街道に面して、ポツンとたたずむ可愛いお店。府中街道をクルマで走っていて目にされたかたもおられると思う。駐車場完備でドライバー御用達だ。

角あき 駐車場

今でこそコンビニやファミレスのおかげで早朝の食事にも事欠くことはなくなったが、その昔はこういったお店は貴重な存在だった。ましてや繁華街からはずれた郊外の街道沿いである。仕事の行きがけ、あるいは夜勤あがり、温かい食事を手軽にいただけるだけでも、そのありがたさは言葉にできないものがあったはずだ。

角あき メニュー

この日は朝9時頃に訪問。早朝のピークを過ぎてややのんびりな時間帯。カウンターの丸椅子に腰掛け、さっそく注文してみよう。窓枠の短冊に書かれた定番メニューは、天ぷらや、肉そば・うどん、おにぎりなど、シンプルなもの。このほかにコロッケ・メンチもある。追加で注文する人多し。

角あき メニュー

角あき 天ぷらそば ゆでたまご おにぎり

■蕎麦:ゆでめん、柔らかめ、茶色っぽくて四角い断面。つゆをよく吸ってうまい。
■つゆ:酸味の効いた濃厚なだし、甘さひかえめで醤油のたったカエシ。強烈な酸味はサバなどの風味だろう。昼近くになると煮えて酸味は弱くなる。
■かき揚げ:自家製。玉ねぎニンジンなど。ぽってりしたコロモがつゆを吸ったところがたまらない。なるとを乗せるのはこの地域の特徴。

角あき 天ぷらそば

立ち食いそばとしては極めて正統的な味。とくに天ぷらのコロモのふわふわ加減は古くからの路麺ファンならきっと好きだと思う。

角あき ゆでたまご

カウンターのザルに盛られたゆでたまご、これを見たら食べずにいられない。お腹が減っているときは、注文ができあがる前に殻を剥いて準備しておきたくなるというもの。

角あき おにぎり

おにぎりの具は「うめ、こんぶ、しゃけ、おかか」とご主人が唱えてくれるのを聞いてから注文する。この言葉を何十年も繰り返して発声してこられたのであろう、独特のぼそっとした節回しがあって、筆者はこれを聞きたくて通っているともいえる。ふんわり握られたおにぎりは良質の米でうまい。ちなみに、この周辺は「稲田堤」というだけあって、江戸時代には稲作が盛んで、江戸市中で消費される米の大きな割合を占めていたとのこと。

角あき 入口

あいにく創業年は知らないものの、かなり古いにちがいない。ご家族経営で長いこと営まれているであろうと想像できる。赤い屋根の店舗は4メートル四方ほどの独立した建屋で、帽子のような赤い瓦屋根をちょこんと被り、手書きで「立喰そば・うどん」の赤い文字の看板。立ち食いそばの看板といえば黄色が多いものだが、こちらのシンボルカラーは「赤」だ。

店内はL字カウンターに7人ほどが座れる。入り口は二方向に開き、反対側には窓の開口と裏口のドア(ほぼ開け広げ)と、非常に風通しの良く、かつ採光のよい気持ち良い空間。ご年配のご夫婦で切り盛りしておられ、時間帯によっては若い女性が厨房に立つ姿も見られる。

このお店ならではの、ほのぼのさ、ゆるさが筆者はたまらなく好きだ。まずなによりも良いのは、店とお客の一体感。殺伐さがない。みなさん優しい。ご主人はお元気ではあるがなによりご高齢なので、お客も皆そこをわかっていて、決して無理を言わない。ご主人が「はい、ご注文は?」と聞いてくれるまでじっと待つ。われ先に注文しても混乱するだけだとわかった空気がある。

常連さんが友人連れで来たときなど、はやる連れに「まあ、待て」と注文をちょっと待たせたりして、これがじつにいい雰囲気なのだ。お店のレトロなたたずまいも含めて、ゆるい時間を味わいたいかたにはオススメのお店だ。

■DATA
住所:神奈川県川崎市多摩区菅北浦1-6-4
アクセス:JR南武線・稲田堤駅より徒歩7分
営業時間:7:30頃〜13:00
定休日:日曜・祝日
評価:2点 ☆☆

※本記事は、2021年10月9日取材当時の情報です。

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情報提供・監修/ケビン(平林啓一)
オートバイに乗って900軒の立ち食い蕎麦店を探訪。最盛期には年間300軒を食べ歩く。立ち食い蕎麦チェーン店・個人経営店にかかわらず食す。また、生めん・茹でめん・冷凍めんにこだわらず、どれも大好き。

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