オーストラリア、アイルランドら強豪と再び激突! ラグビー日本代表再始動
今年5月から7月にかけて、ラグビーワールドカップ2019日本大会以来となる活動再開で注目されたラグビー日本代表。6月にはブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ(イングランド・スコットランド・ウェールズ・アイルランドの4カ国による代表チーム。28-10●日本代表)と、7月にはアイルランド(39-31●日本代表)と対戦し連敗に終わったが、およそ2年ぶりのテストマッチ、それも始動早々としては評価に値する試合内容だったと言えるだろう。
そして10月、再び世界各国が相まみえるテストマッチ期間を迎えた。オーストラリア、アイルランド、スコットランドといった強豪国との対戦を控えている日本代表は、それに先駆けて5名のNDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド。将来日本代表に選出される可能性のある高いポテンシャルを持った人材)を含む総勢44選手による合宿を開始した。
今回の日本代表候補とNDSのメンバーを紹介しよう。
◎2021年度秋シーズン
男子日本代表候補選手およびNDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)
※選手名、所属チーム名に続く数字はキャップ数(「-」はノンキャップ)。
※[RWC2019]はラグビーワールドカップ2019日本代表メンバー。
【男子日本代表候補選手】
<FW>
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稲垣 啓太(埼玉パナソニック ワイルドナイツ) 36[RWC2019]
ヴァル アサエリ愛(埼玉パナソニック ワイルドナイツ) 16[RWC2019]
垣永 真之介(東京サントリーサンゴリアス) 9
具 智元(コベルコ神戸スティーラーズ) 15[RWC2019]
中島 イシレリ(コベルコ神戸スティーラーズ) 8[RWC2019]
クレイグ・ミラー(埼玉パナソニック ワイルドナイツ) 2
森川 由起乙(東京サントリーサンゴリアス) -
■HO
坂手 淳史(埼玉パナソニック ワイルドナイツ) 23[RWC2019]
庭井 祐輔(横浜キヤノンイーグルス) 8
堀越 康介(東京サントリーサンゴリアス) 3
■LO
ヴィンピー・ファンデルヴァルト(NTTドコモレッドハリケーンズ大阪) 18[RWC2019]※負傷離脱
ジェームス・ムーア(NTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安) 10[RWC2019]
リアキ・モリ(横浜キヤノンイーグルス) -
■FL
小澤 直輝(東京サントリーサンゴリアス) 4
ベン・ガンター(埼玉パナソニック ワイルドナイツ) -
ジャック・コーネルセン(埼玉パナソニック ワイルドナイツ) -
德永 祥尭(東芝ブレイブルーパス東京) 12
長谷川 崚太(埼玉パナソニック ワイルドナイツ) -
ピーター・ラブスカフニ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ) 10[RWC2019]※キャプテン
リーチ マイケル(東芝ブレイブルーパス東京) 70[RWC2019]
■No.8
テビタ・タタフ(東京サントリーサンゴリアス) 5
アマナキ・レレイ・マフィ(横浜キヤノンイーグルス) 29[RWC2019]
姫野 和樹(トヨタヴェルブリッツ) 18[RWC2019]
<BK>
■SH
荒井 康植(横浜キヤノンイーグルス) -
齋藤 直人(東京サントリーサンゴリアス) 2
茂野 海人(トヨタヴェルブリッツ) 12[RWC2019]
流 大(東京サントリーサンゴリアス) 24[RWC2019]
■SO
田村 優(横浜キヤノンイーグルス) 65[RWC2019]
松田 力也(埼玉パナソニック ワイルドナイツ) 25[RWC2019]
■CTB
シェーン・ゲイツ(NTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安)1
中村 亮土(東京サントリーサンゴリアス) 26[RWC2019]※副キャプテン
ラファエレ ティモシー(コベルコ神戸スティーラーズ) 25[RWC2019]
ディラン・ライリー(埼玉パナソニック ワイルドナイツ) -
■WTB
髙橋 汰地(トヨタヴェルブリッツ) -
ジョネ・ナイカブラ(東芝ブレイブルーパス東京) -
シオサイア・フィフィタ(花園近鉄ライナーズ) 2
レメキ ロマノ ラヴァ(NECグリーンロケッツ東葛) 15[RWC2019]
■WTB/FB
セミシ・マシレワ(花園近鉄ライナーズ) 1
■FB
山中 亮平(コベルコ神戸スティーラーズ) 19[RWC2019]
【NDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)】
PR/淺岡 俊亮(トヨタヴェルブリッツ) -
HO/武井 日向(リコーブラックラムズ東京) -※負傷離脱
LO・FL/ワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京) -
FL・No.8/福井 翔大(埼玉パナソニック ワイルドナイツ) -
WTB/中野 将伍(東京サントリーサンゴリアス) -
<追加招集>
PR/三浦 昌悟(トヨタヴェルブリッツ) 7
HO/北出 卓也(東京サントリーサンゴリアス) 1[RWC2019]
CTB/梶村 祐介(東京サントリーサンゴリアス)1
FB/野口 竜司(埼玉パナソニック ワイルドナイツ)13
【今後の予定】
・9月29日(水)~10月16日(土) 宮崎合宿
・10月16日(土)~10月27日(水) 別府合宿
・10月23日(土)日本代表vsオーストラリア代表(大分県・昭和電工ドーム大分)
・11月6日(土)日本代表vsアイルランド代表(ダブリン・アビバスタジアム)
・11月13日(土)日本代表vsポルトガル代表(リスボン)
・11月20日(土)日本代表vsスコットランド代表(エディンバラ・BTマレーフィールド)
男子15人制日本代表ナショナルチームディレクターの藤井雄一郎氏は今回のメンバー発表にあたり、次のようにコメントしている。
「(合宿に向けて)各選手とも個別メニューに取り組み、準備はできている。次のオーストラリア戦に向けて準備していく。6、7月のテストマッチ以外は選手を見る機会がなかなかなく、若い世代の試合などを見てNDSという形で招集した。次の世代を担う選手に経験を積んでもらいたい。コロナの影響で準備期間は短いが、一丸となって準備していきたい」

注目は、2019年のラグビーワールドカップ以来2年ぶりの代表復帰となるSH流大だ。同大会で全5試合に先発出場したジャパンの「9番」だが、所属するサントリーでの活動に専念していた。藤井ディレクターは、
「体調管理やモチベーションも含めて少し冷却期間が必要だった。ずっとコミュニケーションはとっていた。流選手もその一人。(休養中の選手とは)次のセレクションのプロセスなど、コミュニケーションをとっている。(今後も)徐々に復帰する選手が増えてくる」
と語っており、メンタルも含めたコンディションの調整が必要だったと説明した。今回は選ばれていなくても実績、実力のある選手が今後再選出される可能性は高いと見ていいだろう。

パフォーマンス次第で日本代表に昇格する可能性があるNDSの中では、流通経済大学付属柏高校から東芝ブレイブルーパス東京へと加入したLO/FLワーナー・ディアンズに注目したい。ニュージーランド出身の19歳で、202cm 122kgと今回の合宿参加メンバーでは最長身。世界的に見てもトップクラスのサイズを誇り、今後の成長が楽しみな選手だ。
また、上記のメンバーとは別に、フランスリーグ「TOP14」2シーズン目を迎え充実ぶりがうかがえるWTB/FB松島幸太朗(ASMクレルモン・オーヴェルニュ・41キャップ[RWC2019])も11月6日(土)のアイルランド戦の前には現地で日本代表に合流する見込みだ。
松島を含め、ベースは今年7月のアイルランド戦まで活動していたメンバーということになる。2019年のラグビーワールドカップメンバーだった選手が44名中17名と3分の1強を占めており(NDSを除けば39名中17名)、2023年の次回ワールドカップフランス大会までの時間を考えても、経験値の高い選手が多く起用されるのは当然の流れだろう。なお、今回の最終的な遠征メンバーの人数は36~37名になる予定という。
キャプテンについてはFLリーチ マイケルからFLピーター・ラブスカフニに代わり、副キャプテンにCTB中村亮土が就任した。ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチは、2014年からキャプテンを務めてきたリーチについて「本当にハードに練習している。リーダーとしても素晴らしい選手。ワールドカップに3回出場して素晴らしいリーダーシップを発揮してくれているが、私としてはラグビーにフォーカスしてもらいたい。その環境を作ることがチームにとっていいことだ」とキャプテンを交代させた理由を語った。
日本代表メンバーは宮崎合宿最終盤の10月15日(金)に発表予定だ。その後、別府合宿を経て、まずは10月23日(土)のオーストラリア戦に臨むこととなるが、ザ・ラグビーチャンピオンシップで強豪中の強豪である南アフリカに連勝し世界ランキング3位に上昇した勢いのあるチームだけに、同10位の日本代表としてはその現在地を知ることができる重要な一戦となるだろう。そして同5位のアイルランド、同19位のポルトガル、同7位のスコットランドとの対戦で、日本代表はさらなる強化を図ることとなる。
齋藤龍太郎
《ワールドワイドにラグビーを取材中》
編集者として『ラグビー魂』をはじめとするムックや書籍を企画。2015年にフリーの編集者兼ライターとなり、トップリーグをはじめ日本代表の国内外のテストマッチ、ラグビーワールドカップを現地取材。フォトグラファーとしても活動。著書に『オールブラックス・プライド』(東邦出版)。
文・撮影/齋藤龍太郎