特集・連載
焚き火マイスター 猪野正哉さんをめぐる、これからのシン・スタンダードとは #007
100人をめぐる、これからのシン・スタンダード モノを持たない風潮の今、本当に価値のあるモノってなんだろう? 身の丈に合わないモノはいらないし、ファストな使い捨てモノなんてもっといらない! とはいえ一切無駄を省いた生活もなんだか味気ないような……。大切なのは、何を所有するかよりも、どう向き合うかという視点。モノ選びの賢人たちは今、何を選び、どんなライフスタイルを志向するのか? 100人への取材を通じて、これからのスタンダードを探ります。 この記事は特集・連載「100人をめぐる、これからのシン・スタンダード」#07です。
「ひとり炎に没頭するためのナナメな焚き火台」
焚き火マイスター 猪野正哉さん
焚き火ってもともとはみんなで団欒する場でしたし、僕も語らう手段としてのそれを好んでいました。それが今はブームになって、一人で焚き火の時間を楽しむこと自体も目的になっています。ソロキャンプブームの影響かもしれないし、人との距離感が変わった時代の要請なのかも。
クベルはそういう新しい使い方にマッチする焚き火台です。本体と脚部だけのシンプルで堅牢な作りにゴトクが付属し、ユニークさを雄弁に物語る斜めに傾いた火床は空気の流れを作り、炎を一方向に立ち上げる。全方位に向かって均等に熱を放射し、数人で取り囲める焚き火台と違い、この構造は持ち主が炎と真っ向から向き合う形になるんです。
前面が大きく開けたフォルムは薪をくべやすく、空気を送ったりして「自分だけの焚き火を育てる」感覚がよりダイレクトに味わえる。まさに一人の時間に没頭するための焚き火台だ!と感じたんですよね。
上部に取り付けるゴトクには炎が集中するんですが、大きな鉄板というよりも、一人分のフライパンやケトルを載せるのにジャストなサイズ。焚き火を育ててその火で調理をし、一人焚き火に没頭するスタイルは今や当たり前になりつつありますが、これはその感覚をより一層強くしてくれるんです。
TOKYO CRAFTS[トウキョウクラフト]
焚き火台“クベル”
2つの部品ですぐにセットできる、小ぶりな焚き火台。斜めの火床は空気の上昇を促し、燃焼効率を格段に高める。W46.5×H31.5×D31cm。収納時W44×H10×D28.5cm。「KUBERU」2万9800円(トウキョウクラフト)
焚き火マイスター
猪野正哉(いのまさや)
1975年生まれ。モデルやライター、アウトドアプランナーとしてTV・雑誌で活躍する、人呼んで「焚き火マイスター」。地元・千葉で「たき火ヴィレッジ〈いの〉」も運営し、焚き火文化の普及にも努めている。
※表示価格は税込み
[ビギン2021年9月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。