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NAOTOと本間昭光

本間昭光

本間昭光

プロデューサーとして、アレンジャーとして、作曲家として、誰もが口ずさめるヒットソングを数多く生み出してきた本間さんは、大のモノ好き。興味を持ったらとことん!な性格から、あらゆるモノに深い思い入れがあります。そんな本間さんの愛するモノの中から、音にまつわるアイテムにフォーカス。その魅力&エピソードを語っていただく連載、今回のお題はちょっぴり趣向を変えて「カレー」。業界随一のカレー好きヴァイオリニスト、NAOTOさんをゲストに迎え、音楽とカレーの意外な接点を明かします!!

NAOTO

Guest / NAOTOさん

1973年、大阪府生まれ。東京芸術大学音楽学部器楽科卒業。クラシックからポップスまでジャンルを限定しない独創的なスタイル、パフォーマンスで人気を博す。ミュージシャンからの信頼も厚く、ポルノグラフィティのライブサポート等も担当。人気ドラマ「のだめカンタービレ」ではオーケストラの選考から携わり、吹替演奏、楽曲提供、ゲスト出演も果たした。大がつくカレー好きで、日本スープカレー協会理事を務めるほか、カレーマイスターの資格も持つ。15周年記念ライブを収録した限定DVD「NAOTO 15th Anniversary Live –The New Black-」が発売中。

ミュージシャンにカレー好きが多い理由〈前編〉はこちら

スパイス、それはエフェクターである

本間 ミュージシャンがカレーに惹かれるのって、組み合わせによってどんどん味が変わっていく楽しさもあるんじゃないかな? 音楽だとエフェクターもそうじゃない。ギターでいうならボディとアンプとシールドという3点セットがあって、その上で何を加えていくか? 弦の種類をどうするか、ピックをどうするか、そしてエフェクターをどうしていくか?というのが面白い。ピアノにしてもキーボードにしても同じ。ドラムもキック、スネア、ハットの3点セットがあって、シンバルの種類をどうしようか、手作りのシンバルか機械打ちのシンバルかでも変わってくるから、無限の組み合わせがあるわけですよ。スパイスの調合には、楽器の組み合わせに近いものを感じますね。ミュージシャンが惹かれるのはよくわかる。

エフェクターとスパイス

NAOTO ラーメン屋さんに行くと胡椒と七味とうがらしとお酢がテーブルに置いてあるじゃないですか。ミュージシャンはこのセットを、本当にエフェクターと呼んでいますからね。だから「エフェクター取って」といえば「はいよ〜」と通ずる。味変=エフェクター。

本間 確かにお酢ほど効果的に味変をもたらしてくれる調味料というのもないよね。カレーにお酢を少し入れるだけでも、深みが増すじゃない? スパイス以外にも、まだ先にエフェクターが存在する。

NAOTO お酢はすごいですよね。スリランカカレーの王道といわれているお店で、宮城県に「スリランカセンター」ってあるんですけど、そこのカレーは水を使わずに、チキンとタマネギを牛乳とお酢で煮込むんです。でも、食べたときにお酢感はまったくなくて、なんだコレ!?と衝撃を受けました。

スリランカセンターのカレー
宮城県・名取市にある30年以上の歴史も持つ老舗。スリランカの味を再現した独特の辛さがクセになるとか。

スパイスと出汁、じつは相思相愛です!

──スリランカカレーのお話が出ましたが、どういうカレーなんですか?

NAOTO すごく日本人の口に合うカレーだと思っています。日本人って出汁、旨味を感じる人種なんですね。これはもうDNAに組み込まれていて、日本人のほかにも中国人などのアジア人、フランス人、スペイン人なんかにはあるんですけど、出汁を取る文化のないアメリカ人やイギリス人は旨味というものを感じないんですって。で、スリランカにも出汁の文化があり、島国で海も山もあるので、魚からも肉からも出汁をとる。すごく日本と似ているところがあって。

「モルディブフィッシュ」という食材をカレーに使うんですけど、これは鰹節に似ている。それを粗く削ったもので出汁をとるので、食べたときにすごく旨味を感じるんですよ。米の文化もありますから、日本人が大好きに決まっていますよね。

NAOTO

本間 なんだかカレー食べたい口になってきたな〜(笑)。

NAOTO ただ、日本と違うのは赤道直下で暑い国なので、汗かいて体温下げるためにメチャメチャ辛いものを食べる。だからウマいウマいと調子に乗って食べると大汗をかきます。ボクはどんなジャンルのカレーも好きだけど、好きなカレーは?と言われたら、まずはやっぱり札幌スープカレーで、次にスリランカカレーと南インドカレーと答えていますね。

──どれもしゃばしゃばした感じですが、しゃばしゃばしているほうがお好きなんですか?

NAOTO いえ、バターチキンカレーのような北インドの濃厚なカレーも好きです。ただお米(で食べるカレー)が好きというのはあるかもしれません。

ちょっと脱線しますが、ナンって本来、インドのカーストの最上位にいる人たちしか食べない宮廷料理なんです。小麦とバターなんて、昔はそうそう手に入るものじゃなかった。

あるインドカレー店の店主に聞いた話では、本格的なナンを焼く壺を作ったら、250万円くらいかかったそうですよ。余談ついでにいうと、日本にあるナンが美味しいインド料理屋さんで働いている人のほとんどは、ネパールの人です。

本間 北インドのさらに北のほうの人なんだね。似ている話だと、ボクが昔ローマに行ったときに、毎日通うほど美味しいイタリアンのお店があって。あまりに美味しいから味のヒミツを知りたくて、あるとき厨房を見せてほしいとお願いしたら案内してくれた。そしてわかったんだけど、料理作っているのは全員インド人でした(笑)。

NAOTO あははは。ありがちなパターンですね。

本間 さっきの出汁の話だけど、3歳までに出汁の味に触れていないとなかなか認識できないと聞いたことがあります。やっぱりアジアはこのあたりが強いのかな。魚醤なんてのもあるし。

NAOTO 日本にカレーが広まったのは出汁の文化もあると思いますね。そば屋さんのカレーも美味しいし、ホテルで出るようなフォンドボーのカレーも美味しいし。ちなみに札幌のスープカレーは大体、チキンで出汁をとって、ところによっては豚骨の出汁を入れたりとか。札幌のスープカレーはもともと、漢方として美味しくスパイスを取ろうという薬膳カリーとして始まったんですね。最初はもっとスパイススパイスしていて“スパイス汁”みたいな感じだった。でもそれじゃ食べづらいよね、ということで、肉として食べるチキンを煮込んだスープも混ぜて、今の形になっていったと言われています。

でも札幌スープカレーがおもしろいのは、チキンをコトコトして出汁をとるお店、札幌ラーメンのようにとんこつを混ぜるお店、フォンドボーを使う洋食からきているお店、インドネシアのスープからきているお店と、スタートの違うお店が集まっているんですね。当然、味も全然違う。ボクが毎日カレーを食べていても平気なのは、そういうところです。

NAOTOと本間昭光

本間 カレーって食べ物は、やっぱり健康的なの?

NAOTO カレーを(常食として)食べ始めて20年以上経ちますが、ほぼ風邪をひいたことがないです。

本間 へぇ〜。カレー=薬膳説。

NAOTO ただ間違えちゃいけないのは、同じようなレトルトカレーを毎日食べ続けてもただ太るだけだし、風邪もひくと思います。ボクも細かくはわかりませんけれど、カレーを食べ続けていると、体調によって今日このカレー食べたいなというのがわかるようになるんです。いま自分の体はこのスパイスを欲しているというのが多分あるんでしょうね。インドのお母さんが「あの子おなか壊していたから、今日はこのスパイスをちょっと多めに入れて炒め物を作ろうかしら」みたいな感覚になっている(笑)。

本間 自分もカレー好きだけど、そこまではなかなか行けないな〜。ジャワカレーになっちゃうもん。お手軽にサッとね。手間掛ければ美味しいというのはわかっちゃいるんだけどね。

家庭カレーの味が激変!? 三種の神器とは?

──本間さんはリゾット作りにこだわっていると。

本間 そういえばリゾットでもローリエを必ず使うんだけど、どのタイミングで入れるかによって全然香りが違ってくる。考えてみると、スパイスっていうのはいろいろな国の食文化にありますよね。日本だと七味とうがらしとかかな。でも歴史は浅いのかな?

NAOTO いやぁ、日本の七味文化もすごいと思いますよ。

──七味もガラムマサラみたいなものですよね。

NAOTO はい、お店やメーカーによって中身や調合が全然違いますから。ゴマが入っているところもないところもありますし、ケシの実が入っているところもないところもある。

ところでジャワカレーで思い出しましたけど、家庭でカレーを作るにあたって“三種の神器”というのがあるんですよ。これはボクが考えたんじゃなくて東京カリ〜番長にいた水野仁輔くんが言っていたので間違いないんですけど。三種の神器は「バター」と「にんにく」と「砂糖」です。バターは甘味とコク、にんにくは香りと旨味が増えるんですが、面白いことに、砂糖は甘味を増すためのものじゃないというんです。

辛味を感じるのは舌の真ん中ではなく周りなのですが、辛味はすなわち痛み。痛みを感じると舌(脳)が騙されて、糖分を旨味と感じるというんですよ。量でいうとカレー4皿分に対して大さじ1くらいだから、確かに甘味としてわかるような量じゃないんです。でも美味しくなるという。

バターとにんにくと砂糖

なお、三種の神器を使うときは、トゥーマッチにならないようルウ8欠片が正しい分量だったら1つ減らすくらいがいいみたいですね。そのうえで自分の家に伝わる隠し味、コーヒー入れるとか、ウスターソース入れるとかして楽しむのもいいのでは?

辛いのが苦手でも美味しいガラムマサラ、作りました

──NAOTOさんはガラムマサラをプロデュースして商品化していますよね?

NAOTO はい。使うことで本格的なカレーの味になるように、と考えて作ったんですけど、唐揚げなんかに塩をほんのちょっと混ぜてちょんとつけて食べてもめちゃくちゃ美味しいんですよ。

それと、市販のガラムマサラってとうがらしの辛味が必ず入っているんですが、ボクのには入っていない。辛いのが苦手な人でも香りの深みを感じてもらえるように、とうがらしを入れないでこれを作りました。なので、お子様からおじいさんおばあさんまで食べていただけます。

イメージとしては、クローブと黒コショウとガーリックを効かす方向で仕上げようと。カレーに使う際は、ベースの3種のスパイス1対1対1に対し、このガラムマサラを1入れるだけでも、美味しいカレーができますよ。

本間 ちなみにボクも大好きで、カレーに限らず何にでも入れちゃってますよ。ラーメンに入れても美味しい。

NAOTO コショウの代わりに使っていただいてもいいですよね。だからチャーハンにかけても美味しいです。あとはオリーブオイルと混ぜてサラダのドレッシングにするのもオススメ。

本間 香りのいい、オリエンタルな趣のサラダができますね。

NAOTOさん監修による『スペシャルガラムマサラ』。配合スパイスは、コリアンダー、カルダモン、クローブ、胡椒、クミン、ガーリック、ナツメッグ。豊かな香味を備えながら辛くなく、カレーはもちろん、ラーメンやチャーハン、はたまた酒のつまみのチーズにまで相性がいい。現在は販売終了。

──マジックスパイスにもNAOTOさん考案のメニューがあるとか!?

NAOTO トッピングを考えてほしいと言われまして、大阪人なのでとろろ昆布と、すりおろしたとろろを入れたメニューを考えました。そうしたらマスター、洒落ているもんだから(笑)、ボクが「のだめカンタービレ」に携わっていたのを見て「トロロカンタービレ」と名付けてくれて。これ、辛いのを中和するのにもちょうどいいんですよ。

本間 マジックスパイスはほんと辛いよね〜(笑)。

NAOTO 一番辛いのだとピッキーヌという辛いとうがらしが25本入ってますからね!

本間 あるランクから上はピッキーヌが入って、どんどん増えてく(泣)。

NAOTO 「涅槃」というランクからピッキーヌの刻んだ生唐辛子が入ってくるんですけど、2本、5本、15本、25本と増えていく。涅槃、極楽、天空……と。

本間 ボクがいつも頼むのは「天空」。

NAOTO メニューにはないけど、200本まではイケるみたいです。何本とはいいませんが次の日何もないときにぜひ、チャレンジしてみてください。もう揮発している湯気が痛いですから(笑)。

トロロカンタービレ

NAOTOさんの考案したトッピング「トロロカンタービレ」(210円)。別皿で提供されるので、途中から入れて、味の変化を楽しむこともできる。

──そういえば、マジックスパイスのマスターのご子息の一十三十一(ヒトミトイ)さんもシンガーソングライターですよね?

NAOTO ええ、とってもいい人ですよ。札幌で一緒にライブをしたこともあります。

本間 ほらね、ミュージシャン界隈にはカレーに詳しい人が本当に多いでしょう? だからスタジオにみんなが集まっていても、下手に野球とカレーの話はするもんじゃないんですよ(笑)。

本間昭光

本間昭光(ほんま あきみつ)
1964年大阪生まれ。’88年に「マイカ音楽研究所」に入学。松任谷正隆氏に師事し、作曲アレンジを学ぶ。’89年、上京とともに「ハーフトーンミュージック」に所属し、アレンジャーやサポートミュージシャンとしての音楽活動を開始。’96年に自身のプロダクション「bluesofa」を設立する。

’99年にak.homma名義でポルノグラフィティのトータルプロデュース・作曲を担当。「アポロ」や「サウダージ」等のヒット曲を数々生み出す。2009年には、いきものがかり「なくもんか」の編曲を担当し、その後も「ありがとう」など、多くの楽曲のサウンドプロデュースを担う。最近ではアレンジを手掛けた筒美京平先生のトリビュートアルバム『筒美京平SONG BOOK』が発売中。また2020年にバンダイナムコアーツとともに立ち上げた「Purple One Star」レーベルでは、レーベルプロデューサーを担当。80’sの世界観を完全に再現した第一弾アーティスト、降幡 愛が話題。4月18日には、初の7インチシングルレコード「AXIOM」をリリース。MVはこちら↓↓↓

降幡 愛オフィシャル YouTube Channel
https://www.youtube.com/channel/UCWfhLoV53Rwdc9WGw735IUg

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