Begin wook vol3 配信

時代のニーズや変化を見事に捉えた優れモノが、日々私たちの周りに続々と誕生しています。そんな心を躍るアイテムは、どのようにして生み出されたのか? 本連載「ビギニン」では、そんな前代未聞の優れモノを“Beginした人”を実際に訪ね、その誕生の深層に迫ります。目からウロコな制作秘話やモノ作りに込められた思いを、まっすぐに紹介。ビギニンの発想、言葉、生き方に触れれば、そのモノがより魅力的になるだけでなく、きっと私たちの生活のヒントになるでしょう。

今回登場するのは、1946年創業のソニー。ヒット商品「ウォークマン®」などの音楽機器をはじめ、私たちの生活のすぐそばで活躍してくれる電化製品を多数開発しています。そう、言わずと知れた大手電機メーカーですね。昨年末には家庭用ゲーム機「プレイステーション®5」を発売。グラフィックの圧倒的な美しさと臨場感を味わえる3Dオーディオの音質は、発売前からゲーマーたちの間で話題を集めました。

そんなソニーですが、実はサステイナブルなモノづくりにも積極的にトライしているって皆さん知っていました? 例えば、「もみ殻」を使った新素材「トリポーラス」の開発とか…。

トリポーラスは、2006年にソニーが開発したお米のもみ殻を原料とする、天然由来の多孔質カーボン素材です。その特徴は、類稀なる吸着性能。大小異なる3つのサイズの穴が表面に存在することで、従来の活性炭では吸着しにくかったウイルスなどの大きな物質も、容易に吸着してしまいます。

例えばニオイの原因になるアンモニアガスは、従来の活性炭に比べ6倍のスピードで吸着します。その今までにない圧倒的な消臭効果と抗菌効果に、アパレル分野を含め幅広い業界が大注目。トリポーラスを含んだ繊維製品「トリポーラスファイバー」が生み出され、洋服やアンダーウェアなどに応用されています。

トリポーラスの拡大模型

魅力はその性能だけではありません。トリポーラスは、世界中で年間1億トン以上も廃棄されているもみ殻を原料とすることで、環境に配慮した循環型社会への実現にも貢献。いまソニーが世界に向けて発信している、社会課題を解決に導くための新たな可能性を秘めた素材なのです。

というわけで今回のビギニンは、その開発者である山ノ井 俊さん。「なぜソニーがもみ殻を使った炭づくりを?」という疑問も、世のため人のため姿を変える、その縦横無尽な特性も、隅から“炭”まで解明していきたいと思います。

今回のビギニン


ソニー株式会社 山ノ井 俊 氏

1983年生まれ。神奈川県出身。環境配慮型製品の開発と普及を目指し、2009年ソニーに入社。知的財産センター知的財産インキュベーション部ストラテジーグループ事業開発マネジャーを務める。趣味を尋ねると「仕事です」と答えるほど、トリポーラス普及にかける情熱は強い。プライベートではサッカー観戦を楽しみ、気分転換をしているそう。ちなみに、贔屓にしているチームは、横浜F・マリノス。

idea:
子供の頃の田舎の風景を大切にしたい

学生時代、理学部の化学科に所属していた山ノ井さん。微粒子を使った新しい半導体を作るなど、私たちが思い浮かべるような、いわゆる実験らしい実験をそこで行っていました。

「進路を考える時期に差し掛かった頃、自分が育った田舎の自然が少なくなっていることを目の当たりにしたんです」

幼少期、近くの川でメダカやザリガニを捕まえて遊んでいた経験から、都市開発の影響で変わっていく地元の自然環境に寂しさを覚えたそう。「このままではイカん!」とその手始めに、環境保全に対しての知識を身につけようと大学院へ進学する道を選びます。

trigger:
環境問題改善のため、もみ殻を焼く!?

1991年、ソニーはスマートフォンのバッテリーなどに使用されている、リチウムイオン電池を世界で初めて実用化し、その後更なる高性能化を目指した研究開発が進められていました。その研究過程で多孔質カーボンの有効性が判明、しかしながら莫大な製造費用がかかるため、その代替案が研究員の間で考えられていました。

そこで候補に挙がったのが、余剰バイオマスの一つである「もみ殻」。そして、もみ殻を使ったその多孔質カーボン素材こそが、今日注目されているトリポーラスなのです。

もみ殻って環境に悪いの?


もみ殻は、世界で年間1億トン以上廃棄されているバイオマス材料です。近年、様々な活用法が提案されていますが、肥料や飼料に使えるわけでなく一般的に「野焼き」などで処理されています。焼却時には煙や悪臭だけでなく、温室効果ガスなどの気候汚染物質も排出。それは、大気汚染や温暖化を引き起こす原因になると、世界的な問題として認識されています。

山ノ井さんがソニーに入社したのは2009年。トリポーラス誕生から3年が経過しており、ちょうどその頃、社内でその研究を強化していこうと、盛り上がりを見せていたタイミングでもありました。

入社してからトリポーラスを含めた電池開発にずっと関わってきた山ノ井さん。「太陽電池などの電子デバイスを研究する役割を担うと思っていた」と、笑いながら当時の心境を打ち明けてくれました。

「まさか入社後、厚木の研究所でもみ殻を焼いている自分がいるとは、夢にも思っていませんでした。しかしながら、初めてトリポーラスを見たとき、この素材が持つ無限の可能性に惚れ込んだんです。特異な吸着性能は環境中の汚染物質を吸着し、世界的な社会課題を解決できる。少しでもこの素晴らしい魅力を、世の中の人に伝えたいと思いました」

右が山ノ井さん。真ん中の電気炉で研究員時代もみ殻を炭にしていた。

トリポーラスの商品化を目指し、チームは研究を続けていました。ただし、コトはそう上手く運びません。「量産」という大きな壁が立ちはだかることに…。

後編ではいかにしてトリポーラスが商品化に至ったのか、一般的な活性炭との違いと一緒に詳しく伺います!

後編はこちら>>>

山ノ井さん御用達! ”炭”精込めて作られたトリポーラス製品

UNITED ARROWS
トリポーラスファイバー入りマスク

ボディにトリポーラスを練りこんだ素材「トリポーラスファイバー」を使用。汗臭の原因となるニオイ分子を吸着する消臭機能に加え、インフルエンザウイルスに対しての抗菌性能も装備。洗濯することにより、半永久的に機能は持続する。生乾きによるニオイももちろん消臭。目の真下にも達するサイズ感でフィット力も◎。メガネも自分の息でくもらない。2970円(税込) 3月中旬発売予定
(問)ユナイテッドアローズ  六本木ヒルズ店 ☎03-5772-5501 >>>製品はこちら

ユナイテッドアローズではマスクの他に、「トリポーラスファイバー」を使用したアイテムを展開中。>>>詳しくはこちら

 

デ・オウ®︎
薬用クレンジングウォッシュシリーズ

2013年の発売以降、男性用ボディウォッシュ市場を牽引し続けている「デ・オウ」が2019年にリニューアル。ボディウォッシュに世界で初めてトリポーラスを配合し、男のニオイの元となる汚れを徹底洗浄。お客様の使用実感満足度は約88%以上。シトラスハーブの香りで洗い上がりも爽快。メントール入りとノンメントールの2タイプを展開。ポンプタイプ520ml。詰め替え用420ml。各オープン価格

(問)ロート製薬
https://jp.rohto.com/mens-deou/

SKIN X
プラチナムエディション ザ・クレイウォッシュ RED/BLUE

シンプルで使いやすい、男性のためのスキンケアブランドSKIN Xのクレイ洗顔料。REDは皮脂や汗、ホコリにより汚れやすい脂性肌をさっぱりクリーンに、BLUEは乾燥肌に必要な潤いを残しながら、汚れをキレイに取り去ってくれる。自分がどちらの肌質かわからないときは、悩まずブランドサイトへ。10秒でできる肌タイプ診断が用意されている。ともに容量80ml。各2420円(税込み)

(問)SKIN X
https://www.skinx-japan.com/


写真/宮前一喜 文/妹尾龍都

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