Begin wook vol3 配信


大手電機メーカー「ソニー」が開発した新・多孔質カーボン素材「トリポーラス」。従来の活性炭を上回る類稀な吸着性能を持っており、水や空気の浄化に効果絶大。2019年ソニーがライセンスを取得するや否や、アパレル分野を含めた幅広いジャンルの業界から注目されています。

原料は、その処理方法によって環境問題を引き起こす「もみ殻」。「電機メーカーが炭作り!?」と一見耳を疑ってしまうような内容ですが…正真正銘、トリポーラスは現在ソニーが世界に向けて発信している、社会課題を解決に導くための新たな可能性を秘めた素材です。

前編ではトリポーラス誕生の秘話と、その開発者の1人である山ノ井さんに当時の本音を訊きました。後編では、いかにしてトリポーラスが商品化に至ったのか、一般的な活性炭との違いとともに詳しく伺います!

前編はこちら

今回のビギニン


ソニー株式会社 山ノ井 俊 氏

1983年生まれ。神奈川県出身。環境配慮型製品の開発と普及を目指し、2009年ソニーに入社。知的財産センター知的財産インキュベーション部ストラテジーグループ事業開発マネジャーを務める。趣味を尋ねると「仕事です。」と答えるほど、トリポーラス普及にかける情熱は強い。プライベートではサッカー観戦を楽しみ、気分転換をしているそう。ちなみに、贔屓にしているチームは、横浜F・マリノス。

struggle:
1日かけて数グラム


電池用素材の開発研究を重ねていたときに誕生したトリポーラス。その特性が社会にも認められ、2014年公益社団法人発明協会主催の全国発明表彰において「21世紀発明奨励賞」を受賞します。

賞を取ったことで、トリポーラスの未知なる可能性に対して期待値が上昇。山ノ井さんの研究者魂もさらに燃え上がり、トリポーラスの商品化を目指しその量産に乗り出します。しかし…。

「初期の頃は、苦労して作っても僅かしかトリポーラスをつくることができませんでした。あまりにも出来上がる量が少ないため、思わず笑ってしまった経験もあるくらいです」

研究所での生産量は1日かけて数グラム。トリポーラスを作るためには、その約10倍のもみ殻が必要でした。残念なことにもみ殻は体積が大きくかさ張るため、輸送費も必然的に上がります。

したがって費用対効果を考えると、生産コストの削減は必須。山ノ井さんたち研究者チームは、「量産」という大きな壁にぶつかりました。

簡略版! ソニー独自のトリポーラス製造法

① もみ殻を焼成し炭化する
② もみ殻の細胞間にあるシリカ(ガラス質の素材)をエッチング(除去)し、大きい孔と中くらいの孔を形成
③ 賦活処理(水蒸気による高温処理)を行い、他2つの小さいサイズの細孔を形成

「この問題をクリアできなければ、トリポーラス商品化の夢が泡と消えてしまう。『ヤバイ!』と思って必死になって研究に勤しみました」

ブレイクスルーのきっかけとなったのは、もみ殻自体の形状を変えるというアイデア。「粒を大きくしたらシリカをうまく取り除けない」という先入観を持っていた山ノ井さんでしたが、モノは試しということで本来のサイズよりももみ殻をやや大きい粒状に加工してみたんだそう。

1年間、実験しては失敗の繰り返し。それでも諦めずゴリゴリに研究を続けた結果、生成方法に一番適した粒の大きさを導き出します。それにより、生産過程で風で飛んでいくなど消えて無くなってしまうという問題を解決。研究所のメンバーや化学メーカーなどに協力を仰ぎながら、トリポーラスの量産化に見事成功するのです。

reach:
七変化する素材トリポーラス

2019年1月、開発までの紆余曲折を乗り越えて、ソニーはトリポーラスのライセンスを開始。いよいよ商品化の段階に差し掛かります。

そこで取り入れたのが「呼び込み型のイノベーション」。電化製品を主に扱ってきたソニーという枠にとらわれず、外部の会社と協力し商品化を進めることで、トリポーラスの可能性の最大化を図ることになりました。「ソニーは新しい挑戦を応援してくれる社風です。時代のタイミングもあり、社会課題解決につながる可能性を持ったトリポーラスに関しては、なおさら多くの社員が積極的に協力してくれました」と山ノ井さん。

「トリポーラスを使った商品を生産することによって、一緒にモノづくりをするパートナーや商品の購入者、みんなで社会貢献に取り組めるような社会を作っていきたいです」

現在トリポーラスは、様々な種類の汚染物質を吸着する性質が期待され、例えば繊維に混ぜ込まれたり、ボディケア用品に使用されたりと、幅広い分野で応用されています。

「事業を通して一番達成感を味わったのはいつですか?」という、ビギンの質問に対して「商品が世に出たとき、やっとみんなに使ってもらえるのが本当に嬉しかったです」と山ノ井さんは即答。

そんな山ノ井さんの今の仕事は、トリポーラスと世の中を繋ぐパイプ役になるということ。あるときは営業マン、またあるときは生産調整マン。トリポーラス同様、様々な顔を使い分け事業拡大の力になっています。

従来の活性炭の効果と比べて…

① 体臭とペットのニオイの原因となるアンモニアガスを6倍のスピードで吸着

② アレルギーを引き起こす物質を3〜8倍の量吸着、ウイルスに関しては99%以上除去

③高い薬剤担持量を誇り、空気清浄機などに使用するフィルターを2倍以上長寿命化

なんとトリポーラスは、世界遺産平等院の文化財倉庫にて2019年11月から空気浄化性能の検証実験もスタート。環境保全だけでなく、文化の保存にも一役買っています。

「2012年にガーナ出張に行った際に、現地の方々が井戸や池で飲まれる水に含まれる大腸菌の含有量を調べて驚愕したんです。安全な飲み水の基準からかけ離れていたのですが、その時の驚きは今も心に残っています。今後はトリポーラスの汎用性をさらに高め、安全な飲み水を世界中の人に届けられるよう頑張っていきたいです」と山ノ井さんは今後の目標を最後に語ってくれました。

山ノ井さん御用達! ”炭”精込めて作られたトリポーラス製品

UNITED ARROWS
トリポーラスファイバーのマスク

ボディにトリポーラスを練りこんだ素材「トリポーラスファイバー」を使用。汗臭の原因となるニオイ分子を吸着する消臭機能に加え、インフルエンザウイルスに対しての抗菌性能も装備。洗濯することにより、半永久的に機能は持続する。生乾きによるニオイももちろん消臭。目の真下にも達するサイズ感でフィット力も◎。メガネも自分の息でくもらない。2970円(税込) 3月中旬発売予定
(問)ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店 ☎03-5772-5501 

ユナイテッドアローズではマスクの他に、「トリポーラスファイバー」を使用したアイテムを展開中。>>>詳しくはこちら

デ・オウ®︎
薬用クレンジングウォッシュシリーズ

2013年の発売以降、男性用ボディウォッシュ市場を牽引し続けている「デ・オウ」が2019年にリニューアル。ボディウォッシュに世界で初めてトリポーラスを配合し、男のニオイの元となる汚れを徹底洗浄。お客様の使用実感満足度は約88%以上。シトラスハーブの香りで洗い上がりも爽快。メントール入りとノンメントールの2タイプを展開。ポンプタイプ520ml。詰め替え用420ml。各オープン価格

(問)ロート製薬
https://jp.rohto.com/mens-deou/

SKIN X
プラチナムエディション ザ・クレイウォッシュ RED/BLUE

シンプルで使いやすい、男性のためのスキンケアブランドSKIN Xのクレイ洗顔料。REDは皮脂や汗、ホコリにより汚れやすい脂性肌をさっぱりクリーンに、BLUEは乾燥肌に必要な潤いを残しながら、汚れを取り去ってくれる。自分がどちらの肌質か悩んだときは、ブランドサイトへ。10秒でできる肌タイプ診断が用意されている。ともに容量80ml。各2420円(税込み)

(問)SKIN X
https://www.skinx-japan.com/


写真/宮前一喜 文/妹尾龍都

特集・連載「ビギニン」の最新記事

捨てられたもみ殻に“炭”精込めて向き合ったソニーのビギニン[後編]【ビギニン#06】

Begin Recommend

facebook facebook WEAR_ロゴ