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ストリート世代のファッション“今昔モノ語り”鼎談(後編)
ビームス土井地博×ノンネイティブ藤井隆行×スタイリスト髙橋ラムダ

いくつになっても、男子にとってストリートという言葉は特別な魅力を感じるもの。ことファッションにおいて、その存在感がますます強まっている昨今、大人がそれと友好的に付き合っていくにはどうすべきか? あらゆるスタイルや洋服に触れてきた、旧知の洒落者3人がそんなテーマでお送りする大放談。(ストリートから)一度離れていたカムバック組も、これからトライしたいビギナーも、きっとヒントが見つかるはず。

後編となる今回、話題は過去から、現在へ。ストリートのトレンドが目まぐるしく移り変わるなか、クールでいるためには何が大切か。そんな金言が満載です!
(前編はこちら)

−−前編でかなり昔を振り返っていただきましたけど、そうした経験も踏まえて、現代の“ストリートファッション人気”みたいなものを、皆さんはどんなふうに見られていますか?

髙橋さん(以下 敬称略):今で言うストリートの鍵って、創作意欲とか発信力なのかなって思います。スケーターしかり、インスタとかYouTubeで発信してるアンダーグラウンドなラッパーもしかりで。ファッション的なストリートっていうのはちょっと薄いなと思っちゃうけど、そういうリアルなストリートの子たちはBMXやりながら映像撮ったり、みんな自由に製作してて、地方巡業するためにツアー用のTシャツをつくってポップアップで売ったりしてるじゃないですか。そういう風に何かをつくろう、発信しようって自然と貪欲になって、金勘定よりモノづくりが先行してる人たちはストリートってくくれるのかなって感じはあります。

藤井さん(以下 敬称略):今のそういう子たちって、ダイレクトにお客さんたちと繋がってるから鮮度があるよね。俺らが始めた頃は、お客さんのことをピンポイントでは知らないっていう時代だったから。

土井地さん(以下 敬称略):うん。それはデカい気がする。

髙橋:だね。当時は自分たちで情報収集して、着て失敗して、さらに直してっていうことはあったけど、今は情報がすべてになっちゃってて、洋服を探して買うとか、スタイルを模索するとかってことがあんまりないのはちょっと寂しい気がするけど。でもストリートの人たちって自分を売り出そうっていうのが前提にあるから、今も自分の個性やキャラクターを確立させられてる人が多いなと思ってる。

藤井:僕らはやっぱりコンプレックスがあったよね。自分に対しても、服に対しても。「ディッキーズ、なんでこんなに裾長ぇんだよ」とか、(リーバイス 501の)XX買ってもレングスぴったりなのにヒザのアタリの位置が全然違ったりだとか。でも、その分考えないといけないから工夫もしたし。だけど、今だったら聴いたこともない小学生がビリー・アイリッシュのTシャツ着たりしてて、その瞬間だけ見ればけっこう格好よく見えちゃう。

土井地:そう考えると、ある意味すごい時代になったよね。

髙橋:うん。ただ、上手なんだけど骨太さがないというか、メンタルが弱そうに見えるんだよなぁ。俺らは雑草からのたたき上げで来てるから、多少のことじゃ動じないし。

藤井:嫌なことがあったらインスタをブロックして、自分のことを好きな人だけと繋がってればいいから、そうなっちゃうよね。

髙橋:そうなっちゃうと居心地はいいんだろうけど……、ねぇ。俺、スタイリストとして、コンプレックスをその人のチャームポイントだと思えたらな、っていつも思ってて。体型だけ見ても背が小さいとかぽっちゃりしてるとか、いろいろあるじゃん? でも、それだから似合うとか、こういう個性にこの服を着せるからチャーミングに見えるとか、そういうふうに活かせるようになってくると、もっとキャラクタライズできると思うんだけど、それをやってるのがストリートの人たちだと思う。自分に嘘をつかないっていう。いわゆるユーチューバーとか、モニターの中だけの人って、ストリートだ何だとは言ってるけど、骨太さもないし、ガツガツもしてないもんね。

土井地:否定はしないし別にそれはそれでいいけど、もっと楽しいこともあるよっていうのは伝えたいよね。

−−特に経験値の少ない若い世代が何となく見栄えだけを真似て、「ストリートってこういうものでしょ?」っていうのはもったいないですよね。

土井地:ですね。でも、俺らももう、43、44だけど、俺らが20代のとき見てた40代、50代とは明らかに違うよね。だから、まだまだ勉強したいし、(自分たちのことを)おじさんって言いたくないんだけど、ダメ?

藤井:おじさんだよ、渋谷区おじさん(笑)。

−−心の有りようってことですよね(笑)。より具体的な着こなしや服選びについては、昨今の流れをどう見ていますか?

髙橋:ファッション的なことも含めて、ストリートって部分で一番のビッグウェーブはやっぱりヒップホップ、ラッパーたちだと思います。カニエ(・ウェスト)とかエイサップ(・ロッキー)とかを筆頭に、ブラックカルチャーがどっと入ってきた。彼らって常識に捉われずに感覚でものをピックしてて、「ルイ・ヴィトン着たいけどエアジョーダンも履きたいぜ」みたいにピュアに夢を叶えてる気がするんだよね。急にロックな感じになって、サンローラン着てハット被ってるときもあったりして。でも、そこからの派生で、ちょっと過激になって韓流が入ってきたり、リックオウエンスとかアンドゥムルメステールが入ってきたりして、一回脱線した気がするんだよね。

藤井:あったね。そういう時期。実は、個人的には最近またリックの靴とか、面白いなとは思ってるんだけどね(笑)。

髙橋:でもそのストリート感って、それこそBegin読んでる人たちには多分、一番受け入れにくいところだよね。でも、そこからそういう黒ずくめな人たちもほとんどいなくなって、シュプリームもトラッドな感じに戻ったりしてるから、今だとそんなにストリートのテイストって取り入れにくくはないんじゃないかな?

土井地:リックとかは確かにハードル高いよね。

髙橋:うん。そのあとLA系のブランドとかが一気に出てきたけど、誰かに着せてバズらせて、ちょっとしたらもう要らなくなるとか、そんな商売ばっかりだったよね。俺には転売屋と変わらなく見えちゃう。でも例えばラフシモンズとかアリクスとかみたいなブランドにはストリートらしさをちゃんと感じられるし、ずっと残っていくんだと思う。

土井地:ジョイ・ディヴィジョンとかピーター・サヴィルとか、ああいうアーティストを教えてくれたのもラフシモンズだったな。シュプリームもそうだけど、それとはまた違うやり方で。さっきのラムダの解釈もそうだけど、“ストリート”っていうのが昔より広義になったよね。工芸も民芸も、グラフィックデザインも、普段の生活から派生してきてるものもストリートといえばストリートだと思うし。

−−ストリートの定義、確かに難しいですよね。

髙橋:こういうテーマで呼んでもらって話をしてるけど、俺は自分をストリートだと思ったことはないんです。でも、根底は“路上発信”っていう意味じゃないですか、ストリートって。やりたいことをやろうとしたときに、それができる場がないから自己発信したり、スタイルをつくって見せていくことなんだと思ってます。だから、見た目だけ完パケして真似しようとしても、発信力がない人がやるとイタいことになると思う。そもそもの根底が違うから。それでも、ストリートミックスをしてみたいんだったら、僕にDM送ってください。

藤井:出たな、緻密(笑)。

土井地:丁寧に返してあげてね(笑)。

−−シュプリームのロゴを身につけてればストリート、みたいに考えてた人も少なくないでしょうし、需要ありそうですね(笑)。

藤井:でも、そもそもジェームス氏(シュプリーム創設者、ジェームス・ジェビア氏)はそういうものは着てないよね。サイジングも小さめで、(リーバイスのデニムジャケット)70505に(クラークスの)ワラビーとかって感じで。

髙橋:俺はサードのGジャンだったら557のほうが好き(笑)。でも、今日もちょうど話のネタ用にシュプリームを持ってきたんだよね。ティンバーランドとのコラボのデッキシューズ。シュプリームがこういうアイテムを出すのが象徴的だなって思って。

土井地:そっちのシャツもシュプリーム?

髙橋:そう。今季のシルクシャツ。モノ的な話なんだけど、これはMサイズで、このプリントの柄がちょうど入るように作られてるんだよね。それって要は、SからXLまで、全部版を変えてるってことでしょ? コストもすごいかかるだろうに、それをアンダー3万円で出してる。普通は切り替えとかでうまく同じ版を使い回すんだけど、それをやらないっていうのがモノづくりの視点で捉えてもスゴいよね。

藤井:うん。普通に買ってる人は気付かないだろうけど、男気あるよね。やり方に。シュプリームのそういうところに、俺らはどうしても反応しちゃう。

髙橋:しちゃうよね。

藤井:だけど、お店を覗いてみると、そういうアイテムって全然残ってたりするんだよね。

髙橋:あるある。俺らはどっちかっていうとスペシャルコラボとか、そんなに欲しくないんだよね。(ザ・ノース・フェイスとのコラボの)ヌプシくらいかな。欲しくなるのは。

藤井:そうだよね。シュプリームでもオフホワイトでも、大人だったら上品に取り入れてほしいなとは思うかな。サイズをジャストにしたり、合わせる靴で自分らしくしたりとか。全身シュプリーム! みたいのが一番ダメ。

土井地:品が大事だよね。大人だったら、もう少し上品でいてほしい。

藤井:昔は雑誌を読んでても、これにはこれを合わせなきゃダメ! みたいなのが多かったじゃん? 今の大人は、それを読みすぎたのかもしれないね。そのルールとか先入観を捨てたら、もっとストリートらしさは出るんじゃないかな。

土井地:そういうところに個性とか性格って出るもんね。

藤井:Begin読んでる人なんていいものいっぱい持ってそうだし、まずはそれを着こなしでハズしてみるといいのかも。

髙橋:俺、全然スタイリングやるよ? その代わりにYouTubeのリンク貼ってもらって。

土井地:配信するんだ(笑)。

藤井:この記事、ラムダからギャラもらったほうがよさそうだな(笑)。


【鼎談メンバー①】
ビームス 執行役員 コミュニケーションディレクター
土井地 博さん

ビームス入社後、大阪でショップスタッフとして働いた後、23歳にてプレス就任を機に上京。現在は同社の宣伝 販促を統括し、様々な企画を世に送り出している。自身がナビゲーターを務めるBEAMS TOKYO CULTURE STORY THE RADIOもお見逃しなく。

【鼎談メンバー②】
ノンネイティブ デザイナー
藤井隆行さん

武蔵野美術大学を中退後、ショップスタッフなどを経て、盟友・サーフェン智が立ち上げたノンネイティブに2001年からデザイナーとして参加。この秋冬もコラボレーションの発表が多数控えているとのことなので、乞うご期待。

【鼎談メンバー③】
スタイリスト
髙橋ラムダさん

編集者やヴィンテージウェアのバイイングを経験した後、スタイリスト白山春久氏に師事。32歳にて独立し、現在は自身のブランド、R.M.ギャングにてデザインも行っている。本人の解説付きでスタイリングを披露するYouTubeチャンネルも必見。www.youtube.com/channel/UCKNq41Scbrfpl6CLrbJABWg/featured


写真/若林武志 文/今野 壘

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