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&.FLATのキャリーケース

「スーツケースって家で邪魔だよねっ。」という実体験から、厚さ4cmに折りたためることができる“アンドフラット”を作り始めたART OF LIFE 代表取締役の鈴木さん。前編では物流現場などでよく使われている“オリコン”をヒントに、そのアイデアを工場に持ち込んだところまでをご紹介しました。

果たして史上初の折り畳めるキャリーケース作りは、いかにして完成までの道のりを歩んだのか。アンドフラットのPR・マーケティングを担当するAKインターナショナルの広瀬氏も交えながら、耐久性を高めるために採用した“ある構造”について詳しく聞くことが出来ました。今回はそんな制作秘話に加え、着想から発売までどれくらいの期間を要したのかなど、“アンドフラット”誕生の核心に迫る内容をお届けします。
 

今回のビギニン

ART OF LIFE 代表取締役 CEO鈴木広和 氏
ART OF LIFE 代表取締役 CEO鈴木広和 氏

20年以上もの長い間、株式会社アニエス・ベージャパンで生産管理を担当。退職後は仏ブランドの卸業に携わる。2010年に独立、株式会社ART OF LIFEを設立。趣味はゴルフ。“好きなことを仕事にしている”という同氏、現在は「&.FLAT」の他に、ゴルフ関連のアイテムを製作するなど手広く事業を展開中。

Struggle:
トヨタのランクルや、スズキのジムニーと同じラダーフレーム構造を採用

旅先での思い出の品や家族へのお土産、はたまた仕事道具など“大切なモノ”の持ち運びに使用されるキャリーケース。アイテムの特性上、強度に優れていることは絶対でした。しかしながら、狭い場所でも開け閉めを可能にする前面のパネルが開く仕様がその足を引っ張る結果に。

「製作段階で一番苦労したことは強度を確保すること」

と鈴木さんも断言。その問題を解決すべくアンドフラットに加えられた、様々な仕様について詳しく話してくれました。

&.FLATのキャリーケース

強度の確保に大きく貢献しているのは、ボディの枠に採用されたハシゴ型の“ラダーフレーム”。実はこの構造、ぬかるんだ道や深い雪道、急勾配の坂道などを走ることを前提に設計された、本格派4WD車にも採用されています。少しわかりづらいのですが、(上写真)本体の内側上部にある金属製の桟と、その桟を垂直に渡っているポリカーボネイトがハシゴ状に並んでいるのがわかるでしょうか? このフレームのおかげで外部から衝撃を与えられても無問題、ボディをしっかり支えてくれるのです。

ART OF LIFE 代表取締役 CEO鈴木広和 氏

「初めは一箇所のみをロック仕様にしたけれど、端が浮いてしまったんです。」

そんな失敗談も語ってくれた鈴木さん。当初は中央の一箇所しかロックをかける場所を設けていませんでした。しかしそれが災いして、蓋を閉じたとき衝撃が加わると蓋の端が浮いてしまうという事態に。防犯面を強化するためにも、マストで解決せねばならない重大な課題でした。
解決のため目標として掲げたのが“箱としての一体化”。この折り畳めるキャリーケースのもう一人の立役者、広瀬さんが教えてくれました。

「通常の両面開きのキャリーケースと同様に、箱としての一体化をどう作るのかが重要でした。そこで蓋に、ある細工を取り付けたんです。」

エイケイインターナショナル 代表取締役 広瀬 徹氏

2000年、株式会社エイケイインターナショナル入社、2017年より現職。服飾業界に約35年間従事している豊かな経験から、既成概念に囚われない新しいアプローチで、ブランディングから販売に至るまで幅広くプロデュースを行う。プライベートでは保護ネコ活動をしているという側面も。仕事で行き詰まった際は、自身の顔の上で寝る癖があるという黒白の愛猫“ふじこ”ちゃん(2枚目写真)に癒されている。

&.FLATのキャリーケース

その細工とは、蓋の裏縁をぐるりとコの字型に施されたロック機能を果たす爪のレール。

「全部で14箇所に設けられた爪が連動して動き、枠に噛み込むことで全体を一体化させるんです。」

広瀬さんはそう言うと立ち上がり、実演しながら丁寧に説明してくれました。表側のロックをスライドさせると爪が設けられた黒いパーツが連動して動くんです(上の左右の写真を比較すると、黒いパーツが微妙に動いているのがおわかりいただけるだろう)。
これにより、蓋部分とボディをしっかり密着させるだけでなく、外部からの衝撃を全体に分散させることが可能になり、防犯性と耐久性を一挙に獲得することに成功したのです。

また強度を最高レベルまで押し上げるため、ボディの素材には、防弾ガラスの素材にも用いられるポリカーボネートが使用されています。ポリカーボネートは、プラスチックの一種が故に軽量で、その耐衝撃性は一般的なガラスの250倍以上。表面に加えたリブ加工は、スタイリッシュなデザインにも寄与しながら、経年劣化によるボディの変形を防ぎます。
 

鈴木さんが乗っても壊れない

ART OF LIFE 代表取締役 CEO鈴木広和 氏

論より証拠ということで、外に出てキャリーケースの上に乗ったカットを撮らせて欲しい!と鈴木さんに無茶振り(笑)。

「俺が乗ったら壊れるかもよ?」

と冗談交じりに引き受けてくれました。取材地浅草橋にちなんで隅田川を背景に橋の上で撮影。さすがビル3階以上の高さからの落下テストをクリアしたというだけあってアンドフラットは無傷そのもの。その強度を100kgの体躯をもって目の前で証明してくれました。

Reach:
「畳める=普段使いできる」の新公式

&.FLATのキャリーケース

かくして誕生したアンドフラット。インタビューの最中にお二人が口にしていた

「キャリーケースの既成概念を覆したい!」

という言葉。それは”畳める”から身近な場所にしまっておける、”畳める”からクルマに1台置いておける、”畳める”から家族分持っても収納できる。
“畳める=普段使いできる”という、キャリーケースにおける新公式を我々の生活に提示してくれました。
また発売前に行われたモニタリング調査では、その使い心地の良さに好意的な意見が多数寄せられました。

「市場価格を知るためにSNSを使ってモニタリングをしたら、7、8万出しても買いたいという声があったんです!」

と広瀬さん。そう考えるとこのアイテム、相当なコスパアイテムでもあります。
 

広瀬さんも橋の上でパシャり

AKインターナショナル 代表取締役 広瀬徹 氏

「アンドフラットはハンドルをしまえば上部が平らになるから、出張の移動時など椅子代わりに座ることもできるし、机代わりにPCの作業だってできるんです。もう、ほぼデスクです!(笑)」

インタービュー終了後にもこの商品の個人的な魅力を伝えてくれた広瀬さん。さらなる便利キャリーケースを作りたいという欲求も出てきたのだとか。

「次は猫ちゃん用のキャリーケースを作りたいと考えています!」

愛猫家ならではの発想に流石の一言です。

着想から販売まで一体何年?

初めにこの商品の情報が届いたとき、出張に、海外に持っていける作りなの!? オモチャじゃないの?と正直疑ってしまったほど、”折り畳める”という画期的な機能を備えたアンドフラット。
「何年くらい前からこの構想を考えていたんですか?」と単刀直入に尋ねると、鈴木さんは「3年前」とさらっと回答。

「バッグ屋さんだって昔から折り畳めて持ち歩けるパッカブルタイプのカバンを作っているし、自分のアイデアをただ形にするか、しないかだけでさ。」

と最後にカッコいい言葉もいただきました。

&.FLATの折り畳めるキャリーケース
世界初の折り畳めるスーツケース。リブ加工が施されたポリカーボネートボディと独自の構造により、高い耐久性を誇る。TSAロックや静音キャスターを搭載。3.9kgの軽量設計も◎。W37×H56×D20cm(組み立て時)。W49×H56×D4cm(折り畳み時)。2万9800円。

 
(問)
ジータ ☎ 03-5829-3917
エイケイインターナショナル ☎ 06-6443-1670
アンドフラット公式サイト https://and-flat.com/

※表示価格は税抜き


写真/椙本裕子 文/妹尾龍都

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