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&.FLATのキャリーケース

時代のニーズや変化に見事に応えた優れモノが、日々私たちの周りには続々と誕生しています。そんな心を踊る進化を遂げたアイテムは、果たしてどのようにして生み出されたのか?
新連載「ビギニン」では、そんな前代未聞の優れモノを”Beginした人”を実際に訪ね、その誕生の深層に迫ります。目からウロコな制作秘話やモノ作りに込められた思いを、まっすぐに紹介していければと思っています。ビギニンの発想、言葉、生き方に触れれば、そのモノがより魅力的になるだけでなく、きっと私たちの生活のヒントになるでしょう。

記念すべき第1回は、世界初の折り畳めるキャリーケース「&.FLAT(アンドフラット)」の立役者。折り畳むと厚さがなんと4cm!という“省”撃作を、世に送り出したビギニンです。

約束を取り付け向かった先は、下町情緒がほんのり残る東京・浅草橋駅周辺。日本有数の観光地である浅草からほど近く、古くから人形や衣類の問屋が多数あることでも有名な地域です。そんな場所にビギニンのオフィスはありました。レトロなビルのエレベーターを降り、通された一室で初対面。ビギニンの口から、思わず膝を打つ制作秘話が次々と語られます。今回はそんな気になる内容を、全2回にわたりでレポートしたいと思います。
 

今回のビギニン

ART OF LIFE 代表取締役 CEO鈴木広和 氏
ART OF LIFE 代表取締役 CEO鈴木広和 氏

20年以上もの長い間、株式会社アニエス・ベージャパンで生産管理を担当。退職後は仏ブランドの卸業に携わる。2010年に独立、株式会社ART OF LIFEを設立。趣味はゴルフ。“好きなことを仕事にしている”という同氏、現在は「&.FLAT」の他に、バッグをはじめ、ゴルフ関連のアイテムを製作するなど幅広く事業を展開中。

Idea:
使わないときのこともあるけど、空気を運ぶコストをどうにかしようと思った

貫禄がある佇まいで、ドシりと恰幅のいい鈴木さん。にこやかなスマイルで我々を迎えてくれたのですが…。あまりの迫力に気圧され少し緊張。手に持っていたペンをうっかり落としてしまうという始末です(笑)。そんな第一印象を胸にいざインタビューを敢行。人は見かけによりません。このアイテムを作ろうとしたキッカケを尋ねると、

「スーツケースって家で邪魔だよね。っていうのと、ビジネスとして考えたとき、輸送コストを削減できないかと思ったんですよね。スーツケースって空気を運ぶようなもんなんです。」

とフランクな調子で回答してくれ一安心。なかなか言い辛い経営者としての本音を最初から話してくれる、とても誠実な方でした。

ART OF LIFE 代表取締役 CEO鈴木広和 氏

新しくて魅力的なアイテムを作り出せないかと、いつも頭の中でアイデアを練っているという鈴木さん。「&.FLAT」はそんな彼だからこそ生み出せた逸品と言えるでしょう。アイデアソースを伺い、”やはり”と確信することになりました。ヒントになったモノは、我々も一度は目にしたことがあるアノ物流アイテムだったのです。

Trigger:
オリコンにフタがあればいい

カバンのOEMは今年で11期目という同社。業務上、普段から物流倉庫に顔を出す機会が頻繁にあったのだと、鈴木さんは言います。そこで当たり前のように使われていたのが、今回のデザインのヒントとなった”オリコン”。何かに代用できないかと、そのコンパクトに折り畳める形状を頭に留めていたそうです。また工具などを運ぶための車輪付きバージョンも工場内で見かけていたと言います。

ART OF LIFE 代表取締役 CEO鈴木広和 氏

「スーツケースにコレが使えないかなって考えたんです。」

そうとくれば即実行の鈴木さん。早速オリコンを持って以前から取引のある中国の工場へ向かいました。ちなみにこちらは、車の部品など、カーボンやポリカーボネートの成型にノウハウを持つファクトリー。旧知の仲である社長の唐(とう)さん(下写真右)にアイデアを伝えると、彼も同じようなことを考えていたことが発覚します。

「じゃあ、一緒にやりましょう!」

アイデアが一気に実現のモノへと動き始めた瞬間でした。
鈴木さんのアイデアと、それを形にする唐さん。息の合ったコンビプレーにより、これまでもいくつもの企画を実現してきました。今回も耐久性という大きな壁が立ちはだかりましたが(詳しくは後編で)、着実に課題をクリアし、見事製品化を果たしたのです。

&.FLATのキャリーケース

折りたたみはいたって単純、専用器具を使わずとも3ステップで完了します。取材中、鈴木さんはあまりにも早くたたんでしまうので、写真にその姿を収めるのも一苦労(汗)。「こうして閉めて〜」と我々に説明しながら、すでに畳む動作に移行してしまうのです。手慣れると数秒で組み立て可能になることを実証してくれました。

&.FLATのキャリーケース

ユーザーからは、ベッドの下や家具と家具の隙間など、スペースを取らずに収納できると大好評。スタイリッシュなデザインなので”壁掛け”で保管するという方もいるそうです。細かい部分まで“ユーザー目線”が落とし込まれているこのアイテム。折り畳めるだけがミソではありません。例えば付属のネームタグ。個人情報が無闇矢鱈に人目につかぬよう、タグが収納できるデザインにされています。ビジネスマンだけではなく女性にも配慮したアンドフラットのささやかな心くばりが感じられるポイントです。

どれくらい試行錯誤を重ねたの?

「どれぐらいサンプルは作ったのですか? まさか一発でここには辿り着けないですよね?」と尋ねてみると、意外にもたった2回ほどでクリアしたという。予期せぬ回答に初めは冗談だと思っていたのですが…鈴木さんはこう続けました。

「設計図を書いて、まずは3Dプリンタで形にしてみる。サンプルを作る前にしっかりアイデアを煮詰めて完成させました。サンプル費用もバカにならないしね(笑)」

試作までの具体的な手順を聞き、私もすっかり納得。ちなみにこの手の工業製品は一型を作るのに1000万円超の型代がかかるのだとか! ある意味、試行錯誤を繰り返せないから、これを形にできた人がこれまでいなかったのかもしれません。

ART OF LIFE 代表取締役 CEO鈴木広和 氏

“スーツケースは場所を取る”という問題を、オリコンから得た発想で見事解決した鈴木さん。商品化までの道のりで最大の課題は強度を確保することでした。話を聞けば、なかなか苦労をされたご様子。果たしてどんな発想で“折り畳めるスーツケース”の強度をプラスしたのか。気になる内容は後編に続きます。

(後編は9月24日公開)

&.FLATの折り畳めるキャリーケース
世界初の折り畳めるスーツケース。リブ加工が施されたポリカーボネートボディと独自の構造により、高い耐久性を誇る。TSAロックや静音キャスターを搭載。3.9kgの軽量設計も◎。W37×H56×D20cm(組み立て時)。W49×H56×D4cm(折り畳み時)。2万9800円。

 
(問)
ジータ ☎ 03-5829-3917
エイケイインターナショナル ☎ 06-6443-1670
アンドフラット公式サイト https://and-flat.com/

※表示価格は税抜き


写真/椙本裕子 文/妹尾龍都

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