特集・連載
カーゴパンツのポケットは何のためにあるの? ‐「軍パン」の教科書
定番の教科書 ネイビージャケットやB.D.シャツ、チノパンといったお馴染みの服はもちろん、スニーカーやデイパに代表される靴、鞄、さらにはスポーツカーや食べ物まで、どのカテゴリにも、いつの時代も変わらない「定番モノ」が存在します。いまもなお、定番が定番たる所以とは? 歴史、ウンチク、名作から今買える新傑作まで、世の定番モノをじっくりわかりやすく解説します。 この記事は特集・連載「定番の教科書」#19です。
HISTORY
穿くだけで着こなしに男らしいテイストを添えることができるアイテムとして、ファッションの世界ですっかり定番と化した感のある軍パン。しかし、元来それは“着る道具”ともいうべき軍用品。それだけにその実体はジャングルのごとく奥深いのだ。
軍パンとは何か、をひと言でいえば、フラップ付きの大型パッチポケットを備えたパンツということになろうか。このいわゆるカーゴポケット付きのパンツが、それだけで男らしく見えるのは、軍パンが元来、生粋の戦闘服だったからにほかならない。
すべての軍パンの機能は生き残るためにある
定番アイテムの基礎知識
服
【軍パン】
●野戦用のミリタリーパンツ。
●近年ファッションアイテムとして人気の、カーゴポケットを含む6ポケットのものが代表的。
軍パンとは“軍用パンツ”の略称であり、広義では世界中の軍隊が軍用に開発したすべてのパンツが含まれる。だが、現在ファッションシーンで軍パンといえば、大半がカーゴポケットの付いたいわゆるカーゴパンツを指す。
カーゴポケットの起源は1942年、アメリカ陸軍の空挺部隊が採用した降下用戦闘服、通称“パラトルーパー”といわれている。空挺部隊はパラシュートを装備して航空機から降下するため、バックパックを背負うことができない。その代わりに考案されたのが、装備品を収める大容量を備えたカーゴポケットだった。つまりそれは戦場で生きるために必要な機能であり、実用性に特化したディテールだったのだ。
以降もカーゴポケットは多くの軍用パンツに採用されたが、その完成形と称されるのが1951年に登場した米陸軍のM-51である。大型のカーゴポケットを含む6ポケットデザインを確立したモデルであり、改良を重ねつつ長年採用され続けた傑作だ。その機能が集約された骨太なデザインは、1980年代後半よりファッションとして注目され、軍の放出品を採り入れるスタイルが登場。そんな6ポケットのカーゴパンツに加え、現在は世界中のブランドが多彩なモデルを基にした軍パンをリリースしており、ファッションに欠かせないアイテムとなっている。
写真/大嶽恵一 文/竹内虎之介、竹石安宏(シティライツ) スタイリング/小孫一希 取材協力/菊月俊之
本記事に掲載されている商品の価格や問い合わせ先、仕様などの情報は、原則として雑誌Beginの連載に掲載された当時の情報となり、現在の仕様や価格、情報とは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。