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OLFA オルファのカイコーン

私たちの生活に欠かせない文房具、カッターナイフ。これ、日本生まれの発明品ってことをご存知でしょうか? 大阪市・東成区にあるオルファの創業者である岡田良男氏が「折る刃式カッターナイフ」を世界で初めて誕生させたのが1956年のこと。それまでのナイフと違い、刃を研ぐことなく、切れ味が復活するこの画期的なアイテムは、あらゆる分野で重宝される存在となりました。例えば壁装(壁紙)業界では、作業を一変させたアイテムとして、一つの歴史の転換点になっているのだとか。

道具箱の中でも目立つようにと「オルファイエロー」とも呼ばれる色をまとった同社のカッターナイフは、誰もが使ったことがあるはず。大阪で生まれ育った筆者にとっては「カッター、カッター、オルファ、オルファ〜♪」のCMも馴染み深いものです。

オルファは、1956年から現在に至るまで、用途によって様々なラインナップを展開、世界一のカッターナイフの専業メーカーとして業界を牽引してきました。そんな同社が2019年に発売を開始したのが”開梱用のカッターナイフ”。近年、ますますネットショッピングの利用が増え、一般家庭でもダンボールなどの開梱する機会が増えていることに着目し、安全に開梱できるカッターナイフの開発に乗り出したのです。今回のビギニンはその名も「カイコーン」の開発に携わった髙嶋洋輔さんにその裏側を伺ってきました。

今回のビギニン

株式会社オルファ 開発・生産本部 製品開発グループ リーダー髙嶋洋輔さん

オルファ 髙嶋洋輔さん

開発・生産本部 製品開発グループ リーダーを務める髙嶋さん。デザインや設計だけでなく製品が完成するまでの工程に一貫して携わる。入社前は歯科技工士だったという意外な経歴の持ち主。アウトドアブランド「OLFA WORKS(オルファワークス)」なども手がけたヒットメーカー。

idea:
安全にダンボールを開梱できるカッターがあれば

株式会社オルファ 開発・生産本部 製品開発グループ リーダー髙嶋洋輔さん

物作りに関わる仕事がしたかったという髙嶋さんは、高校時代にプロダクトデザインを専攻していました。そんな学生時代に「歯」を作るという仕事があることを知り、一転、歯科技工士として社会人のスタートを切ります。すべてオーダーメイドの1点ものを作り上げる歯科技工士にやりがいを感じていましたが、5年ほど働いたあるとき「やっぱり工業製品を作ってみたい!」という気持ちが再燃。心機一転、専門学校に1年間通い、再びプロダクトデザイナーとしての道を歩み始めます。

就活を始めた時に目に止まったのが、たまたま筆箱の中に入ってあったカッターナイフ。これがきっかけとなり「オルファ」へ入社することを決意します。

入社後最初に担当したのが「DA-1」という刃折器とオートロック式の小型カッターナイフを一体化させたもの。髙嶋さんが初めて製品化を実現した商品です。

OLFA オルファのDA-1
刃折器とオートロック式の小型カッターナイフが一体になった「DA-1」。刃折器とは、文字通りカッターの刃を折り、その刃を一時的に安全に溜めておけるツールだ。

そこから髙嶋さんは14年間で数多くの製品に携わることになります。特に2020年に発売したアウトドアブランド「OLFA WORKS(オルファワークス)」はキャンパー達の間でも話題を集める人気商品となりました。

OLFA オルファのオルファーワークス
髙嶋さんが手掛けた「オルファワークス」シリーズ。アウトドアギアらしい武骨なデザインとカッターナイフの手軽さが見事に同居する。上から替刃式フィールドナイフ FS1 2200円、替刃式ブッシュクラフトナイフ BK1 1430円、同レザーケース1980円、アウトドアナイフ サンガ6600円。

その性能はすこぶる優秀で、枝を切ったり、木を削ったり、肉をさばいたり…と本格的なアウトドアシーンで大活躍すること間違いなし。アウトドア用のナイフっていいモノはかなり値が張るものですが、こちらはかなりお手頃な価格で販売されています。今までのノウハウがあったからこそ、安価でも高性能なものが完成したのだとか。

そんなヒットメーカーとなった髙嶋さんのもとへ今度は「安全に荷物を開梱するためのカッターナイフを作るのはどうか」という相談が持ちかけられます。

「僕自身がそうなんですけど、1ヶ月に何回ダンボール開けんねんってぐらいネットで買った商品が届くんです。その時に使っていたのが一般的なカッターナイフもしくはハサミ。これだと確かにケガのリスクも常にあって危ないなって話にもなり、それならオルファで作ってみようということになりました」。

Trigger:
開梱専用のカッターナイフは海外に存在した

荷解きカッターと呼ばれるような結束紐などを切るための安全性に配慮されたフック状のカッターは日本国内でも存在したそうですが、それではダンボールやガムテープは切れません。調査を進めると海外の物流センターで使用されている安全カッターがあることを知ります。

「実はオルファは日本よりも海外の方が市場が大きいこともあり、海外の情報というのは比較的入りやすい環境なんです。そこで開梱用のカッターナイフがあるよって教えてもらって。これを参考に作ってみようかという話になりました」。話してくれたのは髙嶋さんに「カイコーン」の相談を持ち込んだ営業企画の山田庸人さん。

株式会社オルファ 営業企画グループリーダーの山田庸人さん
営業企画グループ・リーダーの山田庸人さん。髙嶋さんとともにカイコーンの商品化に尽力した一人。

取り寄せた海外製のものを使ってみると、刃の部分のすき間が広く、指が入る危険性があったり、ダンボールを切る際に抵抗感を感じて、切りづらいということがわかりました。

「ポイントは2つ。ダンボールを切る為に必要な隙間は確保しつつ、刃の部分に指が入らないこと。そして抵抗を感じることなくスムーズにダンボールを切断するための形状をどのようにすればよいのかということでした」。

株式会社オルファ 開発・生産本部 製品開発グループ リーダー髙嶋洋輔さん

髙嶋さんはその2点を意識しながら構造の部分を詰めていきます。デザインや構造も大切ですが、欠かせないのがコスト面。

「お金を出せばいいものができるのは当たり前。安くてもちゃんと機能を備えたものを作ろうと考えました」。

髙嶋さんのそんな考えから1本200円程度(オープン価格)という破格の値段での販売が叶うのです。

元々海外にあった物を参考にしたことから作りたい製品の方向性は比較的スムーズに決まったという「カイコーン」。ここからいよいよ製品化に向けて動きだしていくのですが、やはり刃物ということもあり、安全性と使い勝手を両立するためのハードルが…。後編では製品化に至る最後の道のりに迫っていきます。

後編:刃の進行を邪魔しない構造とは? に続く

OLFA オルファのカイコーン 替刃式カイコーンPRO

カイコーン(下)/替刃式カイコーンPRO(上)
刃に指が触れにくい安心設計の開梱用カッターナイフ。荷物の開梱や、PPバンド、ストレッチフィルムもなども簡単に切断が可能。替刃交換不要な使い切りタイプとワンタッチ式で替刃交換ができる、プロの現場での使用を想定した替刃式カイコーンPROがある。カイコーン 実勢価格200円前後。替刃式カイコーンPRO 実勢価格1000円前後。

(問)オルファ
https://www.olfa.co.jp/

※表示価格は税込


写真/中島真美 文/小佐田莉沙

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