特集・連載
お弁当箱みたいな”ハコビズ”【文房具グルメvol.5】
文房具マニア・ヨシムラマリの文房具(グ)ルメ 国内外のブランドがひしめき、文房具大国といわれる我が日本。高級品が威厳を放つ一方で数百円の筆記具がイノベーションを起こすなど、貴賤上下の別のない世界はラーメン店がミシュランの星を獲得するニッポングルメと相似関係にあり。というワケで、文房グルマンのイラストレーター、ヨシムラマリ氏がその日の気分とお腹のすき具合でさまざまな文房具を食リポしちゃいます。描き下ろしイラストとともにご賞味あそばせ! この記事は特集・連載「文房具マニア・ヨシムラマリの文房具(グ)ルメ」#05です。
かつて、ごく短い期間だが、職場にお弁当を持参していたことがあった。その際に感じたのは、「お弁当は作るのも大変だが、詰めるのも大変だ」ということ。通勤用の薄いバッグに入るように、と思ってスリムなお弁当箱を買ったのだが、おかずがまったく入らず苦労した。かといって仕切りのない大きなお弁当箱は、それはそれで詰めにくいし、そもそもバッグに入らない。困ったものだ。
同じことが、文房具の収納についてもいえるのではないかと思う。
「文房具」と一口にいっても、その形はさまざまだ。ペンのように細いもの、定規のように長いもの。印鑑や消しゴムのように短いもの。ホチキスのようにちょっと厚みがあるもの。電卓やメモ帳のようにやや大きいもの。ふせんやクリップのようにバラけやすいもの。
大は小を兼ねるとばかりに、仕切りのない大きいポーチに入れると細かいものが散り散りになるし、細かいもののことを考えて仕切りを増やすと、今度は大きいものや厚みのあるものが入らない。立てる系のペンケースは筆記具などは取り出しやすいが、背の低いものは底に沈みがちだ。まさに、帯に短しタスキに長し、あっちを立てればこっちが立たず状態である。
そんなときに便利なのが、コクヨのツールペンスタンド「ハコビズ」だ。
誕生のきっかけはオフィスのフリーアドレス化の促進に伴い、決まった席がない人が増えたこと。それにより、仕事で使うツール類をひとまとめにして、持ち運んだり、帰宅時にはロッカーにしまったり、というニーズがあることに着目して作られた商品である。
ペンケースやポーチとはいわず、あえて「ツールペンスタンド」と称している通り、仕事でよく使うツール類を洗い出し、それらを効率よく収納できるように考え抜かれた、5種類のスペースが特徴だ。
「ペン用スペース」はペンのほか定規など長いものに、「電卓サイズポケット」はずばり電卓やメモ帳などやや大きいものに、「ふせんサイズポケット」はふせんやカード類など薄いものにぴったり。「文具用スペース」はホチキス、印鑑、テープ類など厚みのあるものや短いものに、「小物用ポケット」は目の細かいメッシュ状なので、クリップなどに適している。
さらには、使用中に「小物用ポケット」の左側にはスマートフォン(5.5インチまで)が立てかけられるというオマケ付き。ペン用スペースと文具用スペースの仕切りは面ファスナーを外して折り畳むことも可能だ。畳めば、A5サイズのノートや小さめのタブレットなどを入れることができる。
収納量のイメージは、事務用デスクの一番上にある薄い引き出しの中のものがひと通り入る感じ、といえば伝わるだろうか。ファスナーを閉じると、思いのほかスリムになるので、本棚や、バッグのスキマに押し込める。つまり、必要なツール類をスタンバイ状態でひとまとめにできるだけでなく、使用場所まで持ち運んだり使わないときはしまったり、という一連の動作がスムーズにできるのだ。
実際に「ハコビズ」を購入した人の使用例を眺めていると、文房具以外にも、形がバラバラで細々としたものをまとめたい、手に馴染んだ道具を好きな場所に持ち運んで使いたい、という場面は案外多いものだなと気付かされる。
手帳とペン、マスキングテープなどをまとめて、カフェでのんびり手帳タイムを楽しむ。自宅でも旅行先でも使えるメイクポーチとして。模型用の工具を入れて、ミニ四駆の大会に臨む。手芸の道具を入れて、リビングやダイニングで使う。そして、使うとき以外は片付ける……とさまざま。なるほどそんな使い方が、と驚くばかりである。
ちなみに、私が自宅で使用している「ハコビズ」には、手帳用品と読書用品が入っている。家の外まで持ち運ぶことはないが、家の中だけでも寝室、仕事用のデスク、リビングと、よく使う道具を好きな場所に持ち運んで使いたいからだ。
好きな場所で、いつもの味を。そういう意味でも、「ハコビズ」は「文房具のお弁当箱」といえるかもしれない。
3000円
https://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/hacobiz/
※表示価格は税抜き
ヨシムラマリ
神奈川県出身。子供の頃、身近な画材であった紙やペンをきっかけに文房具にハマる。現在は会社員として働くかたわら、イラスト制作や執筆を手掛けている。著書に『文房具の解剖図鑑』(エクスナレッジ)。