特集・連載
メイド・イン・二子玉川!? 日米のお母さんの共演が生んだ“フタコ”ニット
2018年11月 ビギンベスト10 気温が下がってきたから、冬服に対するブツ欲は湧き上がってきてるのでは? ってことで、ビギンでは即戦力アウターを中心にガッツリ紹介していきますよー! と、その前に、足元にもご注目を! 今月のいいモノランキング第1位は、見た目じゃわからないけど、ワールドワイドにその足跡を残すかも!? なド肝を抜く一足です!! この記事は特集・連載「2018年11月 ビギンベスト10」#01です。
オーベルジュのアイスランド ハンドニット
ビギン31年目の幕開けを飾るにふさわしい一品がコチラ! スロウガンの代表、小林 学氏が今季スタートしたオーベルジュのハンドニットです。
元ネタは1940年代初頭に、アメリカのお母さんたちが戦地で戦う兵士たちのためにボランティアで手編みしていたニット、通称“アメリカン・レッドクロス”。
滅多に市場に出回らない、古着好きの間では知る人ぞ知る名品なんですが、正直言ってこれ、見た目は不恰好(苦笑)。フツーの天竺目なのによ〜く見るとボーダー状に編み目がガッタガタ。プロが下駄目と呼ぶ、下手な編み物に見られる不揃いな編み目が、そこかしこに散見されるんです。
……が、小林さんは気付いたそう。これこそハンドニットの魅力なんじゃないかと! 編み物なんかほとんどしたことのないド素人のお母さんたちが想いを込めて手編みしたからこそ、不均一な仕上がりになり、結果的にそれがハンドニットにしかない“味”に繋がってるんじゃないかと考えたんです。
この“味”を再現すべく小林さんが紆余曲折を経て出会ったのが、国内屈指のニッターとして活躍している二子玉川のお母さまたち!
当時の仕様書を入手して正確な編み方を解析しつつ、左右であえて太さの異なる編み棒を使ったり、力加減を超微妙に変えながら手編みしたり。試行錯誤を繰り返すことで、不揃いな編み物にしか感じられない“味”を再現していったのです。
アメリカから二子玉川へ。お母さんたちの想いが時間も距離も超越し、ロマンまで編み込まれた、不完全なハンドニットの完成形。
チーズケーキファクトリーもナムコ・ワンダーエッグもフタコ(地元っ子はこう呼びます)からなくなっちゃいましたけど(涙)、このニットの魅力は永久に不滅です!
’40年代のレッドクロスニットを完コピ!
アメリカン・レッドクロスとは、紛争などで苦しむ人々の救済を目的として1881年に設立された慈善団体。そこに所属するお母さんたちは戦争時、戦地へ手編みのニットを贈った。
息子に贈るニットを手編みする母のポスター
手編みによる不均一さも120パーセント再現!
プロの手によってハンドニットの味となる不均一さを再現しつつ、ゆったりしたシルエットでトレンドのエッセンスもしっかり注入。
ゆとりのある今どきシルエット
今季始動の最注目ドメブラ!!
今季20周年を迎えたスロウガンの代表、小林 学氏が新たにスタートしたオーベルジュ。ヴィンテージの蒐集家としての顔も持つ小林さんが傑作と認めたアイテムを、失われつつある日本の職人技に頼って、今の気分を盛り込みながら復活させる。そんなコンセプトの下に作られたニットは、手編みにしかない味とロマンがぎっしり。5万6000円。
(問)ホワイト/スロウガン
☎ 03-3770-5931
https://www.slowgun.jp/
※表示価格は税抜き
[ビギン2018年11月号の記事を再構成]
写真/工藤 恒(アルフォース) 文/黒澤正人