特集・連載
スーツこそ尾州の“オーセンティック”だ!
尾州で学ぶいいモノ辞典 美酒? 美醜? ビシュウ? そう、尾州です! 最近耳にすることが多くなってきているこの言葉。確かにスーツなどでは頻繁に聞く気がするけど、それだけでもないような……。ちなみに尾州とは愛知県西部~岐阜県の一部を指す地名で、アパレル業界では彼の地の生地が重宝されてるみたい。ってことで、何やら気になる尾州をこのたび掘ってみた次第。尾州、かなり期待大! この記事は特集・連載「尾州で学ぶいいモノ辞典」#01です。
美酒? 美醜? ビシュウ? そう、尾州です! 最近耳にすることが多くなってきているこの言葉。確かにスーツなどでは頻繁に聞く気がするけど、それだけでもないような……。
ちなみに尾州とは愛知県西部~岐阜県の一部を指す地名で、アパレル業界では彼の地の生地が重宝されてるみたい。ってことで、何やら気になる尾州をこのたび掘ってみた次第。尾州、かなり期待大!
明治から積み重ねた毛織の技術がここに!
尾州といえばスーツ。これはまぎれもない事実です。その端緒は明治時代に遡ります。維新後、政府の方針で軍隊、警察、鉄道等の制服が洋装化。さらに戦後、紳士・婦人服の既製品化が急激に進んだことで、紳士服の代表格たるスーツ、すなわち毛織生地の需要が飛躍的に伸びたのです。
当時すでに毛織の一大産地であった尾州では、各工場が切磋琢磨しながら、その技術を高めていったというわけ。
そもそも毛織物の生産工程は、ほかの生地作りに比べてはるかに複雑。原毛を糸にする紡績、複数の色糸を一本にまとめる撚糸、染色、生地へと織り上げる織布。その後の整理加工=フィニッシングまで、基本的に全てが専門企業による分業です。
この複雑さから、ブランドのイメージ通りの生地を生み出すのは一朝一夕では叶いません。尾州で100年超も培われた技術、それが最もストレートに反映されるのがスーツなのです。
100年超の歴史を誇る老舗の風格
これなら着られる!マイクロ千鳥
グリーンレーベルリラクシングのセットアップスーツ
グリーンレーベルリラクシングはもう何年も御幸毛織のウール地を採用。無地にも見える極小グレンチェックが◎。風格も満点。ジャケット3万円、パンツ1万5000円(以上、ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング 自由が丘店)
グリーンレーベル リラクシングのジャケット、同パンツ1万5000円、同シャツ1万円、マイケル ジェイ ドレイクのタイ1万4000円(以上、ユナイテッドアローズグリーンレーベル リラクシング 自由が丘店)その他はスタイリスト私物。
立体的袖つけも風格UP
ハリがありつつ優しい毛羽立ちも
「御幸毛織(みゆきけおり)」とは?
尾州を代表する親機で、最大規模といえばココ
1905年創業。名古屋市に本社を置き、仕入れた原毛から毛織物までの一貫生産を行う尾州最大の服地メーカー。ミユキの通称で知られ、百貨店やセレクトショップからの信頼が厚い。
コチラも尾州生地!
メランジのグレンチェックがPU混でストレッチ!
エディフィスのセットアップスーツ
スーパー100’s原料のウールのトップ糸を使ったオリジナル生地は、色の深み、上品な光沢、柄の立体感が特徴。パンツはモダンなスリムテーパード。ジャケット2万2000円、パンツ1万4000円(以上、エディフィス 新宿)
ユナイテッドアローズのシャツ1万3000円、同タイ1万2000円(以上、ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店)その他はスタイリスト私物。
尾州毛織の基礎知識
イギリスの「ハダースフィールド」、イタリアの「ビエラ」と並ぶ“世界三大毛織産地”のひとつ
尾州のスゴさを知らないのは日本人だけ。それが過言ではないほど、たとえば誰もが知るメゾンブランド(言えないのが残念!)も、じつは尾州生地を重宝しています。
その背景となるのが豊かな水質と水量を誇る「木曽川」ですが、無論それだけではありません。毛織物の各生産工程は専門性が高く、細かな分業が不可避。その各工程を担う工場が全て木曽川周辺に集合しているのが強みであり、世界屈指の品質に繋がっているんです。
Q.尾州ってどこ?
奈良時代から明治初期まで続いた「尾張の国」の別の呼び名。今日の行政区でいえば、愛知県一宮市をはじめにぐるっと名古屋のほうまで。さらに岐阜県・美濃地域の一部も含まれる。
Q.なんで盛んなの?
上のマップの通り、肥沃な濃尾平野に恵まれた水質の木曽川が流れているから。繊維産業では、原料の洗浄や染色で相当な水量を使うのだ。で、昔から桑や綿花の栽培が盛んだった。
Q.いつ頃から?
もとは麻や綿織物を手掛けていたが、約100年前、明治時代の殖産興業政策の流れでウールを選択。一次大戦の影響でヨーロッパの毛織物がストップし、軍需を下支えに発展した。
※表示価格は税抜き
[ビギン2018年11月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。