服飾べしゃり力が身につく[小林学の小噺学]

なぜ服好きは「VANS」のスリッポンにこれほど魅了されるのか?

服好き同士のしゃべり場で日夜繰り広げられる服飾トーク。知らなくても生きていけるネタを披露し合う瞬間こそ、服好きには至福のジ・カ・ン。ということで、業界屈指の服飾べしゃり力で洒落者を引き込むオーベルジュの小林さんを指南役に迎え、即話したくなる小噺をレッツ・スタディ♪

Profile
オーベルジュ デザイナー 小林 学さん

オーベルジュ デザイナー

小林 学さん

服飾漫談師

1966年生まれ。ヴィンテージにモードにフレンチと守備範囲は宇宙。べしゃり力も業界随一で、自身のYouTubeチャンネルでも服好き垂涎の小噺を軽快に繰り広げる、服飾亭の止め名。ちなみに題字は愛娘の小林凛さん著!

《ヴァンズのスリッポン》
「30年間で100足は履いた自己表現のキャンバス」

VANS ヴァンズのスリッポン

2足のスリッポンを履き回しているという小林さん。サイドが割れたり、踵に穴が空いて、雨の日に浸水したら寿命として処分し、ストックしている1足をレギュラーに迎えるという流れを、かれこれ30年ほど繰り返している。これまでに愛した数はおよそ100足以上。「スカルスパイダー」(中下)のようなレジェンド柄などは、処分せずに保管し続けている。

今月はいつも以上にべしゃり欲が沸きまくり! なんたって、人生で一番多く履いているヴァンズのスリッポンがお題ですから!

本格的に履き始めたのは90年代半ばから。今じゃヴァンズラバーも珍しくありませんが、当時はナイキやアディダスみたいなメジャーどころに比べると、まだ若干マイナーな存在。反対に、西海岸系スニーカーというキャラクターは今より濃かった印象です。

裏原の並行輸入系のインポートショップなんかが、アメリカから直接買い付けてきた現地企画の製品を売っていて、エッジの利いたデザインも沢山ありました。その頃僕はショーツを穿くのがブームだったんですが、ちょうどくるぶし丈のアンクルソックスが登場しだして、相棒たる靴として見出したのがスリッポンだったんです。

裸足みたいに見せられる靴下と、靴下みたいに履ける靴。このゴールデンコンビのラクチンぶりといったら、もう異次元! 1997年から2010年頃まで、自宅⇔オフィスを1日100km運転する生活を続けていたんですが、スケート由来のフラットソールが本当に運転しやすくて、完全にドライビングシューズとして機能してました。

もちろん惚れ込んでるのは実用性だけじゃなくて、この削ぎ落としようのない唯一無二のシンプルデザイン! 広大なアッパーがキャンバス代わりになっていて、最近だと擬似転写シリーズだったり、ちょっと前だとMoMAとのコラボだったり、星の数ほど多くのデザインがあるから、ついつい買い足しちゃうんですよね。ド派手から無地、重厚、アート、おバカと手軽にキャラ変できてしまうから、ホントに手を……じゃなくて足を伸ばしやすい。

スケボーもやらないし、ヴァンズのアンバサダーになりたいわけでもありません。でも便利で洒落てて、自分のライフスタイルにぐいぐい食い込んでくる。街でボロボロのスリッポンを履いてる人を見かけたら、“いいね! あの辺のカルチャーにも通じてるのかな?”なんて無言で語り合えるツールにもなってて、服好きの愛用品としての素養まである。これがわずか数千円なんて、はっきり言って奇跡的。一生自分の玄関からスリッポンが消えることはないだろうなぁ。

はみだし用語解説
 

VANS ヴァンズのスリッポン

❶疑似転写シリーズ
数年前に登場したのが「Vエフェクト」という擬似転写シリーズ。「オールドスクール」などの名作のデザインが転写され、パッと見はスリッポンと気づかない遊び心で人気を博した。
 

VANS ヴァンズのスリッポン

❷MoMA とのコラボ
近年MoMAとのコラボもスタート。こちらは2020年に展開されたモデルで、世界的女性アーティスト「フェイス・リンゴールド」のカラフルな抽象画が、全面にプリントされている。

 
※表示価格は税込み


[ビギン2026年6月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。

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