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今さら聞けないサングラス選びのコツ〈後編〉

前編では、半世紀以上に及ぶサングラスの歴史をご紹介しました。後編では、工学製品としてのサングラスに着目し、レンズの種類やカラーについて、さらに高騰しつつあるヴィンテージ市場について解説します。前編に引き続きグローブスペックス代表の岡田哲哉氏、世界的に注目を浴びる国内随一のヴィンテージアイウェアショップであるソラックザーデ代表の岡本 竜氏にお伺いしました。

 
欧米と日本ではサングラスのニーズが違う

欧米ではビジネスマンをはじめ政治家や王族まで、当たり前のようにサングラスを利用していますが、日本で日常的にサングラスを使用している人は極端に少ないのが実情です。キザったらしいとか不良っぽいとか、いまだサングラスに抵抗がある人が多いからです。

「瞳が青や緑の欧米人は、瞳が黒いアジア人に比べて紫外線による悪影響を受けやすい。白内障防止にサングラスが役立つことがわかり、欧米では急速に広まっていきました。彼らにとってサングラスは日常生活における必需品だったのです。そもそも日本人と欧米人では、サングラスの根本的な需要が異なるのです」(岡田氏)

 

前編ではジョン・F・ケネディを紹介しましたが、歴代のアメリカ大統領は頻繁にサングラスを利用しています。バラク・オバマ前大統領はオリバー・ピーブルズのウェリントンを愛用していたようです。また屋外での公式行事やスポーツ観戦などでは、英国王室のウィリアム王子とキャサリン妃もサングラスを着用しています。

 
サングラス用レンズの色について

よほどの粗悪品でない限り、現在市販されているサングラスはほとんどがUVカット加工を施しているので安心です。ただ、実際に眼鏡店でサングラスを選ぶ際に、たくさんのレンズカラーがあるのはなぜでしょうか?

「まず勘違いしないでほしいのが、UVカットと眩しさは関係がないこと。無色透明のレンズでも、UVカット100%のレンズはたくさん出ています。カラーレンズの目的は眩しさを抑えること。基本的におすすめするのは、グレー、グリーン、ブラウンの3色。グレーは見えるものの色をほぼ変えず、均等に明るさを低減するので、最も自然な見え方になります。グリーンは赤系の明るさを減らして、穏やかな視界をもたらします。ブラウンはコントラストが際立つので、遠くのものや動くものが見えやすくなります。ゴルフやドライブに適しているのはそのためです。一方でイエローやオレンジは、明るさを増強する性質があるので、曇天でのスポーツ、特にシューティング競技で使われます。日常生活で眩しさを減らすという意味では逆効果になりますから、注意が必要です」(岡田氏)

上段のグレーからグリーンのレンズは、眩しさを抑えながら自然に見えるのが特徴。中段2列の中で、ブラウン系は動くものや遠くにあるものをくっきり見せる特徴があり、オレンジとイエローは曇天時などで明るくはっきりものが見える特徴があります。下段の薄いカラーは、眩しさを抑える力は低減しますが、薄暗い場所で着用するのに適しています。

 


EYEVAN 7285/アイヴァン7285
華奢なフレームがクラシカルな印象のウェリントン型サングラス。こちらはやや薄めのグレーレンズ。4万2000円。(問)アイヴァン 7285 トウキョウ℡03-3409-7285

 


GLOBE SPECS/グローブスペックス
パイロットグラスで多く見かけるのがグリーンレンズ。ダブルブリッジが特徴のサリバンというモデル。3万1000円。(問)グローブスペックス エージェント℡03-5459-8326

 


GLOBE SPECS/グローブスペックス
黄みがかったクリアフレームとブラウンレンズの組み合わせが秀逸な、ザ・ジョンソンというボスリントン型。3万円。(問)グローブスペックス エージェント℡03-5459-8326

 


THE SPECTACLE/ザ・スペクタクル
’50年代のシューロン社製のヴィンテージを新品同様にレストア。こちらは上品なブルーレンズを採用。10万5000円。(問)グローブスペックス ストア℡03-5459-8377

 
 

サングラス用レンズの種類について

「北米では調光レンズが大流行しています。屋内では無色透明なのですが、屋外に出て紫外線を受けると色が濃くなる機能のレンズのことです。本来、調光を意味する言葉はフォトクロミックなのですが、トランジションズというレンズブランドがあまりに有名で、その名前が調光レンズを意味するほど一般的に認知されています。やはりサングラスが必需品の国らしい傾向と言えます。また、偏光レンズは乱反射する光や雑光をカットする機能があり、ドライブや魚釣りなどに便利です。あまり濃い色でなくても効果があるのも特徴。サングラスを使用するアクティビティの種類と内容によって、レンズの色と種類を選ぶのがポイントになります」(岡田氏)

変化前

 

変化後

EYEVAN 7285/アイヴァン 7285
丸みを帯びた調光レンズを採用したウェリントン型サングラス。直射日光に数十秒当たるとレンズが濃く変化。4万2000円。(問)アイヴァン 7285 トウキョウ℡03-3409-7285

 


OLIVER PEOPLES/オリーバーピープルズ
キーホールブリッジが特徴的なウェリントン型のシェルドレイクというモデルで、偏光レンズを採用。3万3000円。(問)オリーバーピープルズ 東京ギャラリー℡03-5766-7426

 
 

一部で人気が高まるガラスレンズについて

前編の冒頭でも触れましたが、100年以上前から、メガネやサングラスのレンズはガラスしかありませんでした。度入りのメガネは重かったのです。この重さを解消すべく研究開発が続けられ、1960年代後期に登場した新素材がプラスチックレンズでした。

「一般的に眼鏡店ですすめられるプラスチックレンズは、軽くて割れにくく、カラーバリエーションが豊富です。だからビッグサイズのサングラスを作るときや、度数が強い場合でも重くならないのが長所です。しかし、最大の欠点は弱さです。ガラスよりもすり傷がつきやすく、熱に弱い。そして質感が低い。一方ガラスレンズは、まず物としての質感が圧倒的に高い。ガラスレンズのメガネは、テーブルに置いたときの音が全然違います。プラスチックレンズのメガネがチープに感じてしまうのは、この音のせいです。また、ガラスレンズは圧倒的な耐久性を誇り、傷つきにくく、熱に強い。短所としては、重く、割れる可能性があり、カラーバリエーションが少ないこと。このようにガラスレンズとプラスチックレンズの長所と短所は、まさに表裏一体なのです」(岡本氏)

 
 

高騰し続けるヴィンテージサングラスについて

「1940〜’50年代のアメリカ製のセルフレームは、この10年間ずっと価格が上昇しています。10万円オーバーのモデルもかなり多くなりましたし、レアなモデルは20万円オーバーのものもあります。特に価格が高騰しているのは、1950年代のタートオプティカルのアーネルというモデルのアンバーというカラー。ジョニー・デップ着用の影響もあり、今では40万円、ジェームズ・ディーンが愛用していたモデルなら、50万円の値がつきます。ちなみに7年前のソラックザーデでの販売価格は5万7000円でした。ストックが完売して以降は、アメリカ国内での価格が高騰したため、現在は積極的に仕入れていません」(岡本氏)

また、世界的に有名なギタリストのジョン・メイヤーも、ソラックザーデの顧客の一人。同店で購入した、1940年代のマックス・ピティヨンというブランドのヴィンテージを気に入り、ブランドそのものを復刻してしまうほど。10年ほど前に200本くらいあったストックは6年前に完売。当時マックス・ピチョンのヴィンテージは2万円前後で販売していたが、今では40万円まで高騰。現在、ヴィンテージ市場で注目されているブランドとして、1990年代のカルティエ、シャネル、ジャンポール=ゴルチェが挙げられるという。

「国内外の多くのセレブリティやミュージシャンには、この3ブランドの1990年代製ヴィンテージをソラックザーデから購入していただいています。その着用写真がメディアに露出すると、ヴィンテージモデルの希少性が爆発することが値上がりの要因です。このように価格が暴騰したヴィンテージは、昔はたくさん在庫がありましたが、今はもうソラックザーデにはありませんし、再入荷はほぼありません。そして今リーズナブルなアイテムも、同じく近い将来入手困難となり、注目を浴びると価格は高騰していくでしょう」(岡本氏)

 
 

ヴィンテージを購入する際に気をつけるポイント

「状態です。寿命がしっかりあるものかそうでないか。酸化が進んでいたり、セルから水分が抜けすぎていたりしないかを見なければなりません。状態が悪いものですと、すでに酸っぱいニオイがするものもあります。このように劣化した状態は、修理で元には戻せません。1940〜’50年代あたりのプラスチック製フレームは、一部の店では高額で売られているのに状態の悪いものもあり注意が必要です。ソラックザーデでは、どのフレームも厳しく検品をして、状態の悪いものは除いています。たとえコレクタブルなモデルでも、状態が悪ければ1円の価値もないとして販売しないのが我々のポリシーです。万が一、ソラックザーデで買ったものが通常に使用されるなかで、1年以内に状態が急激に劣化したら、支払っていただいたフレーム金額をデポジットとして預かり、別のフレームを代わりとして当てさせていただいています」(岡本氏)

 
 

信頼できるショップスタッフに相談すること

「グローブスペックスでは、お客さんの普段のライフスタイルやファッションの好みをお伺いし、顔だけではなく全身のコーディネートに馴染むことを大切にしています。サングラスを試着するとき、鏡に映った顔だけで判断するお客さんが多いのですが、それでは失敗しやすいのです。サングラス越しに見える色合いと実際の色合いは違いますし、サングラスを掛けた状態で顔の印象がどれくらい変わるのか、自己判断するのはなかなか難しいですから。客観的に見て、似合っているかどうかをアドバイスしてもらうのが、サングラス選びの近道です」(岡田氏)

「やはり信頼できる人に客観的にアドバイスしてもらうことです。ソラックザーデでは、“サイズ”と“強さ”のバランスを見ながら、スタッフがそれぞれの方にベストなフレームとレンズを提案しています。まずメガネを選ぶときはサイズが重要です。1960年代以前のヴィンテージメガネだとひとつのモデルで15サイズくらいあるのです。その中から顔に対してベストなサイズを見立てて提案します。また、サングラスを選ぶときは、レンズの濃さが重要です。1950年代らしい濃さ、1970年代らしい濃さ、1990年代らしい濃さというのがあります。1950年代はそもそも濃いサングラスレンズが作れなかったんです。度入りのサングラスもできるので、室内でも夜でも使える濃さのサングラスを作ることもできます」(岡本氏)

 
 

トレンドや顔型との相性に振り回されない

「最近はクラシックな細身のメタルフレームが人気です。しかし、トレンドが全ての人に似合うわけではありません。我々が重要視するのは、トレンドよりもパーソナリティ。顔の形によって似合うフレーム、似合わないフレームがあるとはよく言われますが、それも一概には言いきれません。どんなフレームでもデザインや微妙なサイズ感の違いで、似合う・似合わないがあるからです。メガネに比べてサングラスはハードルが高いと思っている人も多いようですが、試してみたいサングラスを選んで、イメージをショップスタッフに相談していただければ、必ず似合うサングラスが見つかるはずです」(岡田氏)

 
 

日本人にも似合うボストン型サングラス3選


 

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サングラスの人気の歴史とその真実とは?〈前編〉はコチラ!

 


写真/植野 淳 構成・文/川瀬拓郎 スタイリング/榎本匡寛 イラスト/田中 斉

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