スーツケースは“キャスター”で決まる!? 歴史と構造から学ぶ選び方の正解
所持品をひとまとめにするケースを作り、楽に運べるようにそれに車輪を、もっと移動しやすいようにハンドルも付ける……。ご先祖様の偉大すぎる開発秘話をプレイバック!
Q. スーツケースの歴史を教えて
A. 服の一揃い(スート)が入るサイズであることが名称の由来になっているスーツケースは、約2000年前、ローマ軍兵士が各地を転戦する際に所持品を収めたケースに源流を求めることができる。
現在見るハード型ケースの基本構造、すなわち前・後に割れるシェルにフレームや錠前などを備えたスタイルは、1882年に登場したグラッドストーンなる鞄が原型だ。
またトロリーケースは、キャスターおよびプルドライブハンドルなどと呼ばれる伸縮式ハンドルを備えた、スーツケースの最進化型といえる。
これらは日本のバブル期に当たる1980年代末期、航空関係者の業務用として誕生。その後、円高進行や海外旅行ブームの到来により、一般の旅行客にも広まっていった。
Q. スーツケースにキャスターが付いたのはいつ?
A. 源流は1153年にパレスチナで作られた軍用に求められるが、現在主流となっているキャスター付きのルーツは1970年にアメリカのブリッグス&ライリーが試作した横型・4輪式で、その製品化は1972年のこと。そして1974年、サムソナイトがキャスター付きを投入。
ただいずれもストラップを引いて走行させるタイプであり、トロリーハンドル付きの登場はバブル期まで待たねばならなかった。
トロリータイプはまず、業務用として広まった
トロリーケースは1989年頃からノースウエスト航空の乗務員らに使われるようになり、「ステュワーデスバッグ」とも呼ばれるように。’90年代に入ると一般市場にも流通し始めるが、本格的な普及は1994年頃からだった。ちなみに当時は2輪が基本であったが、すでに4輪式も存在していた。
Q. スーツケースを買う時のチェックポイントは?
A.
【①キャスター】
スーツケースにおいて最も重要なパーツはキャスターである。しかし一番壊れやすい部分でもあるため、店頭ではしっかり固定されているかをまずチェックする必要がある。
次に2輪か4輪かだが、一般的に2輪は直進走行が安定しており、4輪より段差に強い。しかし重量を感じやすいのも確かで、傾けたボディで人に引っ掛ける危険性も。一方4輪は立てたまま走行でき小回りも利くため小道に向いている。また、ストッパー付きか、静音設計かも注目すべき点だ。
【②ハンドル】
プルドライブハンドルはグリップした状態で左右上下に動かし、不安定感がないかをチェック。続いては「伸縮はスムーズか」「しっかりロックできるか」。また近年増加中の長さを自由に調整できるものも便利である。
なお軽量化を図り、サイドに付属するメインハンドルが省略されたものもあるが、ないと階段での運搬に苦労する。
【③ソフトケースorハードケース】
ナイロン製などのソフトケースは概してハードケースより軽量で、機内の通路に立てたまま開けられるため、機内持ち込みに適している。ただし雨には弱い。一方ハードケースはより剛性に優れ、ロックシステムがしっかりしている。
軽量な樹脂製が主流だが、伝統的な金属製は凹みにくく、割れ物の持ち運びではより信頼性が高い。旅先や収納するものに合わせて使い分けるのが一番と言えよう。
【④フレームタイプorファスナータイプ】
ハードケースは、この2タイプに大別できる。アルミ製などのフレームタイプは、乗っかって閉じることで大容量の荷物を押し込む大技が可能だ。しかし外から強い衝撃が加わると噛み合わせが悪くなることもあるため注意。
対して軽量樹脂製などに多く見られるファスナータイプは、そのフレームがないためシェルが多少変形してもファスナーを開閉でき、フレームタイプに比べ軽量なのが魅力だ。
フレームタイプ
ファスナータイプ
Q. 最近主流のポリカーボネートとポリプロピレンの違いは?
A. 軽量かつ柔軟で、耐衝撃性、形状復元性に富むという点は両者共通。が、ポリカーボネートの耐衝撃性は合成樹脂のうちでズバリ最強で、しかも耐熱性や耐低温性にも優れるため、ヘルメット、防護楯、防弾窓のカバーなどの製品にも多用されていることを念頭に置きたい。一方医療機器や包装用フィルムなどに使われるポリプロピレンは、水と比べても比重が軽く、軽量性に富むが成型技術が求められる。
ポリプロピレンの“特殊ライトシェル”の元
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キャスター付き普及に貢献したのはサムソナイト
キャスター付きのスーツケースが世界に普及したのは、世界最大のスーツケースブランド「サムソナイト」から1974年に登場した「シルエット」シリーズによるところが大きいだろう。ちなみに、当時は縦型ではなく、グリップを引いて走行させるものだった(上は1975年のポスター)。
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[ビギン2025年6月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。