名手、“書く”語りき……
暖冬でニットアウターが再燃の兆し!? 熟練ファクトリーブランドに聞く深淵なるニットの世界
熟練ファクトリーに見る深淵なるニットの世界
名手に聞く「ニットは●●い」!?
暖冬の時代にニットアウターが再燃の兆しアリ。ライトアウターのニーズから、久々に存在感を増しているニットアウター。そして近年は世界のメゾンの生産も担う、日本のニットファクトリーのオリジナルも大人気!
そんな名手たちに、自らのアイテムを例にしつつ、ニットの魅力と可能性を語っていただきました。加えて、あの大物デザイナーのインタビューも必見ですよ!
ディス・イズア・カーディガン
A1:A SWEATER IS ORDINARY セーターはふつうのもの。
カーディガン
軽くふわっとスポンディッシュで、素朴な風合いを併せ持つフレンチメリノに、カシミアをブレンド。ふんわりしていながら上質なヌメリがあるローゲージニットは、米冨繊維ならではの匠だ。3万8500円(ヨネトミストア)
イタリア製の上品な小穴水牛ボタン
The knit is…
代表取締役 大江 健さん
ディスイズアセーターは『セーターとはなんでしょう?』という問いのもと、納得のいくモデルができたらリリース。そのモデルを継続的に作り続けていくブランドです。
シーズンの新作は不定期で、究極のふつうを継続展開
9月発売のカーディガンは『セーターはふつうのもの』という答え。シンプルかつ上質を極めたフレンチメリノ × カシミアのローゲージニットで、ふんわりスポンディッシュな着心地は、ずっと飽きずに着続けられると思います。ポケットも大きめにしているのでニットアウターとしてもオススメ。
フレンチメリノ × カシミアの超贅沢ローゲージ!
このカーディガンのように、いつも丁度良く寄り添ってくれる。それがニットの魅力ではないでしょうか。
[BRAND]THIS IS A SWEATER.
[PROFILE]【ディスイズアセーター】1952年に日本有数のニット産地、山形県山辺町で創業した米冨繊維のブランド。ファッションの嗜好も問わず、あらゆる人に支持されるニットをコンセプトに2020年にスタート。究極の普遍的なニットを追求しており、ベーシック好きなら必見だ。
目が詰まって丈夫なのに心地いい、ニットの理想形
シグニチャー ドライバーズニット
独自のソリッドウールを使い、綺麗な編み目と強度を備え、チクチクしないミドルゲージニットはバトナーの代名詞。ちなみにピリング等級の平均は2級。高品質のメリノウール製で4.5級は破格だ。3万5200円(バトナー)
ハンドリンキングで表地に畦製部が目立たない!
The knit is…
BATONER デザイナー 奥山幸平さん
シグニチャードライバーズニットは、クルーネックと並ぶバトナーの定番です。
目が立って直線的な美しい畦編みがシグニチャー!
同じように見えるかもしれませんが毎年改良していて、今季のソリッドウールは、毛玉ができにくいピリング等級が4.5等級。最高が5級なので、最高クラスの毛玉のできにくさ、耐久性があり、ニットアウターとしても最適な仕上がりです。
もちろん肌触りのよさ、軽い着心地も継承しています。僕は『目が詰まってるのに軽いんだ』『一日着ていて楽だったな』とか、ニットを着たときのテンションを大事にしてる。うまく言葉にできないけど、そんなありそうでない心地いいニットが理想的ですね。
オリジナルの刻印入りYKKエクセラ
[BRAND]BATONER
[PROFILE]【バトナー】1951年に山形県寒河江市で創業、多くのメゾンのOEMを手掛けてきた奥山メリヤスが母体。創業者の孫の奥山幸平氏が、2013年にバトナーを立ち上げた。紡績から縫製まで一貫生産できるニット産地の利を活かした、妥協のないモノ作りで一躍人気ブランドに。
これがニット!? まさかのキルトブルゾン!
ヨンジュウロクゲージ キルトストライプブルゾン
表地はポリエステル × コットンのタイプライター組織。芯地を使わず、中綿と柔らかいニット表地で構築しているため、体のラインを拾って、他にはない独特のアウターシルエットを楽しめる。5万8300円(カネマサフィル)
海外にも多くの顧客を持つことから生地詳細は英語で
The knit is…
代表取締役 百間谷和紀さん
カネマサフィルのアイテムは一見、織物の布帛に見違えるようなハイゲージニットを使っています。このキルトブルゾンでは高密度のタイプライター組織を、46ゲージのスーパーハイゲージニットで表現。
スーパーハイゲージニットで表現したタイプライター
このニット素材でキルト生地を開発し、薄手の機能性軽量中綿を入れ、幅広いシーズンにアウターとして使えるようにしました。ニットなのでストレッチとイージーケアに優れ、ニット特有のオチ感あるシルエットも他にはないものです。
衿には丁寧なパイピングと洒落たステッチが
こうしたアウターができて思うのですが、ニットってとんでもないなと。今後もその可能性を広げ続けていきたいと考えています。
[BRAND]KANEMASA PHIL.
[PROFILE]【カネマサフィル】1964年創業の和歌山のカネマサ莫大小が起源。同社は2010年頃からハイゲージニットに特化。「ハイゲージニットといえばカネマサ」といわれるリーディングカンパニーとなり、カネマサフィルではニットなのに布帛調の画期的なアイテムを展開している。
美しさと温もりに優れたナッピングニット
ウールナッピングジャケット
独自の改良を加えたジャカード編み機で編まれたナッピング裏毛は、フリースのような見た目が特徴的だ。椰子の実を原料にしたナットボタンを使い、ディテールの素材も環境に配慮している。3万8500円(アイガット)
ミリタリーライクな味わいある補強テープ
The knit is…
代表取締役 安宅英宣さん
ニットアウターというと、ウールナッピングジャケットが自信の新作です。ナッピングは通常の起毛に比べて毛抜けしにくく、凹凸のある表情で高級感と保温性を兼ね備えています。これは特別に改良したジャカード編み機で編んだ裏毛素材で、ソフトな肌当たりのよさも抜群。
ウールナッピングをジャカード編み機でふんわりと実現
縫製はフラットシーマで行い、縫い代が当たらない着心地のよさも格別ですよ。ニットは原料の選定から編みまで、他の生地以上にまだ見ぬモノ作りができると思う。
パイピングは肌当たりのいいウール100%
またウチは環境負荷低減の生産をしています。地球の未来へつながる無限の共生。ニットはそうしたアイテムを実現できると思います。
[BRAND]FIVE RULES
[PROFILE]【ファイブルールズ】和歌山の東紀繊維にルーツをもつ、2021年発足のファクトリーブランド。和歌山の自社工場に200台の吊り編み機を保有し、ニット、カットソーアイテムを手掛ける。環境負荷を低減する、5つのルールに基づいて生産を行うことが、その名の由来だ。