COOL Begin
Mar-19-2024

フリークスストア

令和時代のセレクトの雄がはじめる、地域に根付いた新レーベルとは?

大手セレクトショップという抜群の認知度を誇りながら、地域に根付く店舗や行政との取り組み、そして民間企業とのコラボレート等々、ここ数年、思いがけないビックネームとの取り組みが続くフリークス ストア(デイトナ・インターナショナル)。この勢いは、きっと読者諸兄も気になっているに違いない! ということで、昨年11月から始動した新レーベル「フリークスビレッジ」を軸に、これからの話と、脈々と受け継がれるフリークスストアのDNAに関して、根掘り葉掘り取材。古き良きアパレル象と両立する新たな組織体系、そしてそこに紐づく魅力ある人が見えてきました。

〈フリークス ストアとは?〉
アメリカンライフスタイルの楽しみ方を提案するセレクトショップとして1986年に茨城県の古河市に創業。現在、全国に約60店舗を展開する。2020年9月に創業の地でもある本店を『“The Camp” FREAK’S STORE』(写真)としてリニューアル。「Life Share Park 〜共に豊かさを⾒つけるお店〜」をコンセプトに掲げ、Relax(寛ぐ)Discover(⾒つける)Share(共感する)をキーワードに、さまざまなコンテンツが発信される新感覚のショップへと進化を遂げる。

 

教えてくれた人:清宮雄樹さん

デイトナ・インターナショナル 執行役員、ブランディング本部 部長 PR/Branding ディレクター。新たに始まったレーベル「FREAK’S VILLAGE」を牽引する。新事業「FREAK’S MOVIE」や「フリークス電気」など、アパレル企業にこれまでなかった取り組みで輪の中に立って旗を振るリーダー。

創業の地である古河市をはじめ、全国各地の地域コミュニティから生まれたモノ・コトを大切にしてきたフリークス ストア。今やファッションの域を超えて、さまざまなカルチャーやローカルなコミュニティを通してつながったクリエイターや地域行政とのコラボレーションなど、年間250以上の企画が誕生。さまざまなコミュニティを巻き込んで、吸収しながら自社の価値を高めていく。これこそがフリークス ストア躍進の原動力なのだという。

昨年11月に渋谷のFREAK’S STORE渋谷に併設される「open studio」にて開催された、同レーベルのローンチイベントにて展示された一点物。アーティストであるしんご氏が作るごんし人形は、一人一人手作りしている人形のこと。同じ時代に生きていることを喜び合い、争いのない平和な世界であるように願いを込めて作られています。

全国各地のショップスタッフと顧客や地域の企業とのコミュニケーションで生れるプロジェクトを多数展開してきた同店。同時多発的に生まれる企画は、決して決まった人が実施するのではなく、オープンなコミュニティで括りながら、仕掛けているという。これらの企画は、地域に特化していたため、そこでしか買えない販売方法をこれまでは取っていましたが、問い合わせや収集家からの熱い声を受け、全国からECを通して買える新たなプロジェクト「フリークスビレッジ」として昨年末にスタートしました。各地の熱い想いを持ったアーティストやクリエイターによるワンオフアイテムの販売を行う「一点物商店」など、ショップとローカルを直結させながら人々を惹き付けて、仲間を増やしていくビジネスを加速させています。

「フリークスビレッジ」のウェブサイト(https://www.daytona-park.com/cp/village/)を覗いてみると、個性豊かなクリエイターやアーティストとのコラボアイテムが並ぶほか、「地域創生」など、大きく3つのカテゴリーに分れて愉しめるようになっています。

行政や地域企業とのコラボ

長野県の耕作放棄地を活用した国産ポップコーン企画。NPO法人シナノソイルの農薬不使用で栽培された「爆裂種」のとうもろこしを使用した『爆裂シナノポップ』 右上/静岡市と協業し、全国わさび生産者大会静岡大会、通称「わさびフェス」のオフィシャルグッズを製作するという企画も。右下/京成電鉄とのコラボアイテム。鉄道×アパレルの異業種コラボレーション、スリッパをはじめ、Tシャツやスウェット、アクリルスタンド等、鉄道マニアにはたまらない限定コラボグッズが多数企画された。左下/着て、食べて長野の名店を応援しよう!というコラボ企画から生まれたスウェットやトートバッグなど。

人口減少、少子高齢化、地域経済の衰退……。現在、多くの自治体では政府が主導する「地方創生」を目指して、新しい産業の導入や地域資源の活用など、さまざまな施策を試みるも、なかなか思うような成果につながらない現状があります。

そんな地方都市の抱える課題を、魅力的なモノ・コトに転換させる取り組みで話題を集めているのが地域コラボ企画です。顧客とのコミュニケーションから察知したニーズに適うモノやコトを提案し、個店の持ち味を発揮。全国約60に広がる店舗が地域のハブとなって「ローカル」の魅力を発掘・発信し、行政や異業種とともに地域課題の解決に取り組むケースが生まれているようです。

「『FREAK’S STORE』はもともと地域のお客様とのコミュニケーションが活発で、よりお客様の思いに添った商品やイベントを提供したいという熱量が各店スタッフたちの間に企業文化として受け継がれてきました。『フリークスビレッジ』は、『FREAK’S STORE』がずっと大切にしてきた、 個性豊かなアーティストやクリエイター、ブランド、そしてローカルコミュニティが発信する『好き』や『楽しい』をみんなでシェアし、共に学び、最高に楽しむ、出会いの場。それらの点と点を一つの線でつないで、オープンなコミュニティとして発信していこうというプロジェクトです」と清宮さん。

セントラルバイイングとオリジナルによるMDを基本としつつも、ファッションだけでなく、アートや音楽、フードなど様々なイベントがショップの裁量で企画され、各店の個性を醸成してきた企業風土が根付いています。

ローカルの魅力を発掘し、行政や異業種と協業しながら地域の課題解決を目指す取り組みとして大きな注目を浴びたのが、『爆裂!シナノポップ』と呼ばれる長野県の耕作放棄地から生まれた国産のポップコーン企画です。

「これは、農薬不使用で育てた『爆裂種』というトウモロコシによるポップコーンです。実はこのアイテムが生まれたのは、20年以上地域に根差してきた『フリークス ストア長野』での、あるお客さまとスタッフとの会話がきっかけでした。再エネ企業やNPO法人を巻き込みながら、耕作放棄地の増加を背景にした獣害問題の深刻化を軽減する対策としてトウモロコシを栽培し、我々がパッケージデザインなどのブランディングを行い、『爆裂!シナノポップ』として販売する、という課題解決型のプロジェクトです」(清宮さん)

このように、地域の課題をアパレル企業ならではのパッケージ力を活かして、様々な地域とのコラボレートを実施しています。

クリエイターとのコラボ

左/アーティストのそで山かほ子が手掛ける「青猫ちゃん」ぬいぐるみ 中/アーティストOKI KENICHI氏によるハンドドローイング。 右/THE CREATORS×FREAK’S STOREのオフィシャルスウェット。福岡出身のSaki Morinagaによるアートワークが目を引く。

そしてもう一つ、注目すべき企画と言えるのが地方のアーティストやクリエイターたちとのコラボレーション。なかでも、ゲーム、ファッション、音楽、映画・アニメ、デザインなど、クリエイティブ関連企業が多く、国内外のフィールドで注目を集めるクリエイターがひしめく福岡市との取り組みは必見! 新たな文化やテクノロジーに触れ、最先端エンターテインメントを体験できるイベント、「ザ・クリエイターズ2023」のアパレルパートナーとしてスウェットを製作。さらに、デイトナ・インターナショナルが運営するコミュニケーションメディア「FREAK」ではFREAK’S STOREアミュプラザ博多のオープンを記念して、福岡のクリエイターや地域の魅力にフォーカスをあてた「FUKUOKA ISSUE」を発刊。

また、世の中に一点しか存在しないものという意味を持つ「一点物」。工芸作家の作品に多く用いられる表現で、蒐集家たちは、自らの好みの一点物に出逢うため、様々な作家の展示会に足を運ぶという。

左/福岡在住のイラストレーター、ハクさんの作品。自然や人をモチーフとし「時代や時間が曖昧な世界」をテーマにイラストを制作。無表情とポップな色合いが特徴。 中/服をつくったり、絵を描いたり、多彩な活動を続けるクリエイターのしんごさんが石塑粘土をこねて作った「ごんし人形」。 右/古着のリメイクやオリジナル商品の製作を手掛けるアーティスト、MIMAEさんのベスト。

多くのものをシェアで済ませ、物を持たない現代人が増えているとも言われる一方で、こうして希少なものを欲する人も多い。一点物であるがゆえに価値が高まり、人気の美術品は、高額な値段で売買されているという噂も……。

さらに、さまざまな観点から大量生産・過剰供給についての問題意識が高まるなか、アパレル業界では製造工程におけるCO2削減や古着回収制度、リユース素材の検討など、サステナビリティに配慮した取り組みをしていくことが重要になる。そんな業界背景からも注目すべき取り組みであると言えるでしょう。

アパレルという範囲を超えて豊かさを提供していきたい

社内での情報共有をうまく行い、コミュニケーションを活性化して多くの社員に気づきを与えるなど、いわゆるナレッジを高めるためにデイトナ・インターナショナルでは、毎月膨大な数の企画案が全国のショップスタッフから本社に集められています。年間(最大)250本以上もの企画が実施されている背景にはそれを実現できる仕組み作りがあったというワケ。

「一方通行ではなく、多方向でのコミュニケーションを実現できるような仕組みを導入しています。人事や経営陣などから全社に向けた情報発信も大切ですが、スタッフ一人一人がアイデアを発信できるという環境はデイトナならではかと。正直、発信元は誰でもいいと思っています。その方が仕事は楽しくないですか?(笑) とにかく全国各地のショップスタッフや色々な部署から様々な情報が集まって、人や情報のコミュニティになるようなイメージですね。社内では『イベント起案センター』なんて名前をつけて活発にアイデア出しをしています。店舗で働いていると色んなお客様に接客して世界が広がるイメージがありますが、実際は自分から能動的に行動しないと広がりません。ただ服を売る人にとどまらず、自分たちの“好き”という熱量を企画や商品イベントなどのカタチに変えて、お客様に提案できることが大事だと思っています」(清宮さん)

トップダウンではなく、個々の社員が自律的に活動し、それでいて強い一体感をもち、相互に妥協せず建設的な衝突をもってムーブメントを興していく、そんな組織を創り上げているよう。

「世の中の流れとしても『店舗』というものの価値がずいぶん変わってきていると思っています。ただの“売り場”ではなく、メディアとしての価値を持ったり、コミュニティの場になったり。そうすると、求められる役割は「服を売る」ということに留まりません。多様化する“好き”を発信していくみんなで意見を出して学び合うことを大切にしていきたいという思いがあります」(清宮さん)

普段は縦割りで分かれている組織を横断して、さまざまな分野の人たちが知恵を持ち寄り、横並びでフラットにアイデアを出し合える企業。さらにはアイデアを出して終わるのではなく、しっかりビジネスにつなげて行くことができる組織作りが、デイトナ・インターナショナルの快進撃の原動力に。

フリークスビレッジの名にあるように、お店と顧客、そして地域やそこに住まうクリエイターが、文字通り横並びでムーブメントをおこしていく。これまで培ってきた企業文化を受け継ぎ、それらを活かしながら、時代の流れに即した組織を創り上げ、魅力的な企画や商品開発に繋げていく好循環と、それらを下支えする仕組みを持つデイトナ・インターナショナルの今後の展開には読者諸兄もぜひご注目あれ。

昨年2023年11月8日~10日に行われた「わさびフェス」全国わさび生産者大会静岡大会が静岡市で開催されたもので、フリークス ストアも全面協力でグッズなどでサポート。静岡の特産であるワサビを世界にアピールした。

 取材・文/伊澤一臣

Begin Recommend

facebook facebook WEAR_ロゴ