極論知らなくても生きていけるけど、モノ好きとしてはわかっておきたい
民藝ってナニ!?[後編]
実際なぁに?そのコトバ「おとなの嗜み」
ライフスタイルやファッションの文脈で飛び交う「ある種の専門用語」。もっともらしく使ったり、「はいはい」と相槌ちを打ったり……その意味分かってます?じつは意味が非常に曖昧なコトバ、案外身の回りにゴロゴロ転がっているものです。もちろん、意味を知らなくとも生きていけますが、知らなくていいことを知っておくのも大人の嗜みでしょ。
というわけで、毎回ワンワードを深掘りし、その意味を明らかにしていく当連載。記念すべき初回は『民藝』。日本の手仕事? 地域の工芸? 一体なんなんだっ!?
小料理屋でヒーローになれる? 民藝やきもの全国カタログ
「民藝ってナニ!?[前編]」で民藝の概要を理解したところで、お次は具体的な器の話。全国に点在する民藝の中でも代表的な焼き物を精選したので、楽しく学びながらその魅力に触れていきましょう!
栃木県
①[益子焼]難しい土を逆手に無二の“ぽってり感”を
濵田窯の8寸皿、小皿、4.5寸皿
益子焼の誕生は江戸時代末期。大正時代に濵田庄司が益子に移住し、窯を開いたことで一躍関東を代表する産地として知名度を上げた。粗く割れやすいため細かい細工に向かない土を原料としているが、その特性を逆手に取った厚手のぽってり感のある土の温もりを感じる器が魅力。
器8寸皿4500円。小皿各1320円。4.5寸皿2200円。すべて参考価格。濵田窯は「ビームス フェニカ」にて取り扱いあり。※ただし同様の器があるかはタイミングによる。
粗くて割れやすい【新福寺示粘土】とは?
益子焼の原料となる粘土。鉄分と砂気が多く、粗く気泡も多いので割れやすい。そのため益子焼の器は厚手に作られる。
ぽってりしてて良い手触りなんだよなぁ
濵田庄司
アクメ ファニチャーのクロックスシリーズ
アクメ ファニチャーの食器を濵田窯が作製したのも衝撃的事件(2019年にBeginでも紹介)。’60年代のアメリカンダイナーで使用されていた食器を参考にデザインを別注したそれは、ボリューム感も色も特徴的。ファッション界が民藝に注目している象徴的な出来事でした。参考商品。
岐阜県
②[美濃焼]遊び心が信条
SAKUZAN×JSFのマグカップ PAT
ボウル Lサイズ SUMI
美濃焼の発祥は平安時代といわれているが、革命的だったのが安土桃山時代。この時期に斬新な技法や新たな釉薬が次々登場、個性的で遊び心にあふれた器を数多く生み出した。本作は「ジャーナル スタンダード ファニチャー」が美濃焼の作山窯/SAKUZANに別注したオリジナルの器。
滑らかな曲線が上品な印象を与えるマグカップ1936円。日常使いしやすい小さめサイズのボウル3630円(ジャーナル スタンダード ファニチャー 渋谷店)
歴史的は「織部」もぐにゃり
滋賀県
③[信楽焼]ザラつきこそ味だ!
アールピース プラスエスの陶グラス盃ペアセット
鎌倉時代から続く日本六古窯のひとつ。原料となる粘土に細かな石粒が多く含まれるため、器表面の素地が粗く、ザラッとした素朴な質感を特徴にする。窯の中で降りかかる薪の灰が自然釉となり器に多彩な表情を与えるのも持ち味だ。
そんな信楽焼をモダンにアレンジしたやきものも登場。この陶グラス盃ペアセットには、信楽町の研究所で開発された光が透ける「透土」を使用。白×水色はスパイラルマーケット限定。8250円(スパイラルマーケット)
ホラ、ザラっとしてるでしょ?
信楽焼のタヌキ
島根県
④[中井窯]服好き魅了のターコイズ
黒釉、白釉、緑釉で3色に染め分ける
中井窯の三色染分皿
1945年に個人窯として開窯。その後、鳥取県出身の民藝運動家、吉田璋也氏の指導により、新作民藝の窯元として作陶を続ける。そんな中井窯を代表するのがこの三色染分皿。コレが和食器? と思うほどとにかくモダン!
「無名職人の庶民向け日用雑器「民藝」は、テーブル上の一生モノ」にて述べた通り、過去にはビームス フェニカが別注するなど、そのデザインはファッション性とリンクする。お洒落な服好きに好評というのも頷けます。
島根県
⑤[出西窯]やきものをファッションにした出西ブルー
出西窯の5寸ボウル
柳宗悦、河井寛次郎、濵田庄司、バーナード・リーチらの指導を受けた地元の青年5人が、1947年に開窯したのが始まり。出西窯といえば、やはり深みのある青色がシンボリック。じつはもともとの代表色は綺麗な黒色。
ところが、平成元年に青の器が大きな賞を受賞したのをきっかけに、出西ブルーが代表色となった。5寸ボウル2500円。参考価格。出西窯は「ビームス フェニカ」にて取り扱いあり。※ただし同様の器があるかはタイミングによる。
発色のよい青が出やすい灯油窯
島根県
⑥[湯町窯]料理が映える湯町のイエロー
湯町窯の3.5寸花切立皿、7.5寸楕円皿
どんな料理も美味しそうに見える♪と好評なのが、湯町のイエロー。卵の黄身やマスタードを思わせるツヤッとした黄色が、とことん料理を映えさせる。スリップウェアも湯町の器の特徴だ。
これは当地を訪れたバーナード・リーチらから、窯主が直接手ほどきを受けたのが始まりとか。3.5寸花切立皿1800円。7.5寸楕円皿3600円。すべて参考価格。湯町窯は「ビームス フェニカ」にて取り扱いあり。※ただし同様の器があるかはタイミングによる。
私が教えたよ
バーナード・リーチ
大分県
⑦[小鹿田焼]一子相伝の“文様”
小鹿田焼の7寸皿刷毛目
柳宗悦が「世界一の民陶」と賞賛したことでも有名な小鹿田焼。窯元は代々長子が継ぐ、一子相伝を堅守。そのため開陶から300年以上経た今も、昔ながらの技法がそっくりそのまま残されている。
器表面にリズミカルな刻みを入れる「飛び鉋」や、化粧泥の上から大きめな刷毛で模様を描く「打ち刷毛目」などが代表的な技法だ。7寸皿4180円。参考価格。小鹿田焼は「ビームス フェニカ」にて取り扱いあり。※ただし同様の器があるかはタイミングによる。
山間に集まる小鹿田の窯元は今やわずか十軒
沖縄県
⑧[読谷山焼]色彩独特“やちむん”
松田米司氏の7寸皿(左) 松田共司氏の7寸皿(右)
沖縄の言葉で焼き物を意味するやちむん。その始まりは1616年まで遡るが、大発展の契機は1980年に人気作家の大嶺實清氏を含む、4人の陶芸家が読谷村に登り窯を築いたことに始まる。
本作を手掛けた松田米司さんと共司さんは、そんな読谷山焼で抜群の知名度を誇る双子の兄弟。左の7寸皿4500円。右の7寸皿4600円。すべて参考価格。読谷山焼は「ビームス フェニカ」にて取り扱いあり。※ただし同様の器があるかはタイミングによる。
登り窯の屋根には沖縄ならではの赤瓦
A:民藝運動の際、柳宗悦以外の多くは陶芸家だったから
やきものだけが民藝ではありません。漆器、織物、籠、家具、玩具なども民藝の範疇。にもかかわらず、民藝=やきもののイメージが強いのは、民藝運動を率いた中心人物たちが柳宗悦を除いて、ほぼ全員陶芸家だったからです。
A:日本六古窯を知っておく
[越前][瀬戸][常滑(日本最古)][信楽][備前][丹波]
2017年に日本遺産に認定された日本六古窯は覚えておいて損はない。これは中世から現在まで途絶えることなく生産が続く、長い歴史を誇る6つのやきものの産地の総称で、縄文に端を発する日本古来の技術を継承している。
※問い合わせ先が「ビームス フェニカ」の濵田窯、出西窯、小鹿田焼、湯町窯、読谷山焼は、すべて参考価格。価格の変動の可能性があります。
※表示価格は税込み
[ビギン2023年12月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。