日本で手に入るのは一人だけ⁉ バブアーの次なるサステナの一手「RE-LOVED (リラブド)」が事件だ!
ここ数年、ファッション業界のキーワードになっている「SDGs」。持続可能な社会を目指して、多くのブランドで急速に意識が高まってきています。環境に配慮した素材の採用や、長~く使えるようにするためのリペアサービスの開始など、その取り組みの内容は実に多種多様……。本連載では「SDSEEDs(エスディーシーズ)」と称して、ファッション業界のサスティナブルの種を紹介していきます!
さて今回注目するのは、2024年に創業130周年を迎える英国の国民的アウター、バブアーです。英国人には愛用するアイテムを何度も補修しながら、使い続けていく国民性があり、バブアーのワックスドジャケットも例に漏れず。リワックスやリペアを繰り返しながら、祖父から孫へと渡っていくこともあるそうです。
いわば古くからサスティナブルな哲学を宿すアイテムなのですが、2019年から見逃せないプロジェクトが本国・英国で始まっていました。それが「RE-LOVED」(リラブド)プロジェクト。そしてこれが、めちゃくちゃカッコいい! しかもついに日本に上陸したらしいという噂を聞きつけ、気になる詳細をバブアー パートナーズ ジャパンの坂下さんに伺ってきました。
教えてくれたのは……
バブアー パートナーズ ジャパン コミュニケーション ディレクター 坂下康平さん
バーニーズニューヨークを経て、クラシコイタリアを扱うインポート会社や、ヨーロッパの革小物、バッグブランドのPRやコンサルティングを担当。現在バブアーでは営業(兼)PRとして活躍している。
そもそも「リラブド」って?
日本でも一生モノとして知られるバブアーのワックスドジャケット。リワックスやリペアサービスはユーザーにはお馴染みですが、「リラブド」は初耳という人も多いでしょう。
編集部)まずはどういったプロジェクトなのでしょうか?
「リラブドは、もう着られなくなってしまったバブアーのジャケットを回収し、まだ使える部分をつなぎ合わせて、新たな一着として再生する取り組みです。今までと同じく、改めて長く愛用してもらえるようにと、“RE-LOVED”と名付けられました。英国では1921年からリワックスのサービスを行っていて、ジャケットを生産しているサウスシールズ工場にはリペア専門の部署があります。そこにはもうボロボロになるほどに着込まれたジャケットが、毎年200~300着ほど修理の依頼があって集まるんです」。
編集部)そ、そんなに依頼があるんですか!?
「はい。先日僕も視察してきましたが、英国と日本ではマーケットの大きさが全然違っていて、英国で老若男女から支持されるほどの市場規模があります。肌寒いロンドンやスコットランドに行くと、バブアーを着てるおじさんだらけ、という感じです(笑)。女性や若者も着てますしね。そして本当にモノを捨てず、使い続ける国民性があります。最近ではサスティナブルな機運が世界的に高まっていますが、英国では長く使い続けることが、当たり前のメンタリティなんですよ。ただなかには、これはもう直せないというモノもあるそうで。でもバブアーとしては、それも捨てるのがもったいない。ならばそれらを解体して、つなぎ合わせて、着られる一着にしちゃおう。これを改めて商品として販売しよう、というプロジェクトがリラブドです」。
「流れとしては、着られなくなったバブアーをお店で回収し、それらを使って熟練の職人たちが補修を加えたり、パッチワークのようにつなぎ合わせたりして、一着に仕上げていきます。ちなみに日本にも、布を何重にもツギハギして使い続ける、ボロの文化があるじゃないですか? これは親和性があるのではないかと、日本でもやりたいと考えたんですよね」。
そうしてこのたび、リラブドジャケットが5着限定で、日本に上陸することになったのです!
英国工場に潜入! ”リラブド”はどうやって作られてるの?
で、こちらが5着限定で上陸したリラブドジャケット。使い込まれたワックスコットンを利用した、パッチワーク顔がただならぬ雰囲気でしょ?
しかも今回上陸したリラブドビューフォートは、ミドル丈の名作、ビューフォートの誕生40周年を祝して作られた、世界で40着限定のアニバーサリーモデル! これらがどのように作られているか、英国本社の工場に潜入してきました!
1983年に誕生。乗馬用のビデイル、フライフィッシング用のスペイに続き、ハンティング用として生まれた。インナーが露出しない絶妙なミドル丈、獲物を収納するバックウエストのゲームポケットが特徴的。6万6000円。
リラブドは本国・英国の直営店で、バブアーのジャケットを回収。その際に持ち主は次の一着をお得にGETできるクーポン券がもらえます。回収したジャケットはサウスシールズ工場のリラブド専門部署へ。
数々のリペアを行ってきた、少数精鋭のエリート職人の手によって解体され、再利用できる箇所を集めてつなぎ合わせたり、補修用の当て布として使用したりしています。言葉にすると簡単に聞こえますが、扱うのはワックスコットン。これを再び縫製し直して、ジャケットに仕立てることは、もちろんバブアーに精通し尽くしている職人だからこそできることなんです。
ちなみに日本に上陸したリラブドは、もっとも凝った作りの「スーパーリラブド」。リラブド自体が限られた数しか作れず、そのなかでも最上級ランクにあたる、とっても希少な一着です!
ちなみにリペアの依頼は、着用が減るオフシーズンの夏場に殺到。本格的な着用シーズンが始まる秋を前に、補修して手元に戻しておきたいと考えるユーザーが多いからだとか。「その膨大な数のリペアを、短期間にこなせる職人の腕があってこそ、リラブドは実現可能なんです」(坂下さん)。回収されるジャケットはやはり流通量の多い定番、ビューフォートやビデイルが多いらしく、リラブドもその2モデルがほとんどだそう。
どれも世界に一着しか無い「一点モノ」の魅力
こうして作られるリラブドは、なんといっても世界に一つだけの表情が魅力! 経年変化したワックスコットンの表情はもちろんのこと、補修によってそれぞれ異なる顔を持ち、スペシャルなクラフト感が漂う姿に。そんなディテールワークに迫ってみましょう。
リラブドジャケットは、リペアを施すことで、自然とオンリー1なジャケットに仕上がります。「とくに多いリペア箇所は裾、袖口、脇下、ポケットの開口部やフラップの擦れや破れといった損傷ですね。ワックスが抜けて使っていると、生地の強度が弱くなってきて、破れやすくなります。これもリワックスを推奨する理由の一つです。補修はベースとなる個体によって違いますし、回収したジャケットから使える生地をバラしたり、破れている箇所は新しい生地やレザーなどでパイピング補強などをしていきます。また回収したジャケットは生地の色もさまざまなので、パッチワークの表情も独特な雰囲気に仕上がるんですよ」。
「例えばこのジャケットは前立てをリペアしていますが、ボタンも取り替えていて、このボタンだけ他と微妙に色が違うんです。こうした点もリラブドのおもしろさですよね。また裏地も張り替えられていて、オリジナルタータンではない、別のタータンになっています。これもいい雰囲気がありますね」。
またコーデュロイの衿には、ビューフォートの40周年を祝うボタンを。さらにビューフォートのデザイナーであり現在の会長、マーガレット・バブアーと、リラブドを担当した職人のサイン、シリアルナンバーまで書かれたタグが付属。これまたテンションがアガる、世界に一つのタグじゃないですか!
デザインとしても着地しているのがスゴい!
また補修はデザイン的な意味もあるのかと聞いてみると、「いや基本的には補修です。ただいわゆるクレイジーパターンなのに、派手に見えないまとまりも感じられる。すべて一人の職人が一着を仕上げているんですけど、職人ごとにデザイン心もあるのかもしれないですね」。なるほど~。やはりバブアーならではの、リペアというバックボーンがあるからこそ、ルックスとしても違和感なく見えるんでしょうね!
国内で完結させなければ意味がない
このたび上陸したリラブドビューフォート、どこで買えるのかを聞いてみると、「いえ、今のところ販売する予定はないんです」。えっ、どういうこと~!?
「本国に日本で発売したいと打診したところ、『それでは意味がない』という答えが返ってきました。サスティナブルなことではない、と。英国から日本に持って行って販売するとなると、輸送費も燃料もかかる。やるなら日本国内で回収、補修して完結してくれという話になりました」。
そうなんだ! やはりバブアー、めっちゃ筋が通ってるんですね。「そもそも数が少ないというのもありますね。サンプルとして借りるのも大変だったんですよ。今回特別に上陸した5着は、9月にオープンしたフラッグシップストア・バブアー代官山店で展示を行い、リラブドプロジェクトを知ってもらおうという意味もあります。そして5着のうち、1着をプレゼントすることになりました」。
えっ!? それもまた仰天なんですが! 「プレゼントキャンペーンを通してリラブドプロジェクトを知ってもらって、日本でも国内でプロセスを確立して始動したいんです。ただ日本ではバブアーのヴィンテージが人気で、古着屋さんなどへの2次流通が多く、回収が英国ほどスムーズにいかないかもしれない。それに補修できるパートナーも探さないといけない。補修というよりはリメイクに近いし、ワックスコットンだからミシンも油にまみれてしまう。まずは日本での土壌を整えることが課題なんですよね」
リラブドを通じて、バブアーのスピリットに触れてほしい
リラブドプロジェクトを始動するにあたり、まずは、バブアーは長く着られる服、メンテナンスをしながら愛着が湧いてくる服だということを、知ってもらいたいという坂下さん。「リラブドジャケットの展示は代官山店だけでなく、他店舗でも考えていて、お客様とのコミュニケーションツールになってくれればいい。リラブドという取り組みがあるんだということが浸透して、プロジェクトの土壌を整えることにつながればと考えています。ゆくゆくは直営店での回収も行う予定です」。
「またリワックスのイベントも増やしていきます。リワックスをして、メンテナンスをしながら自分のモノとして愛着が湧く服だと、わかってもらえることが第一歩かなと。そうしないと、古着屋さんに手放されたりして、日本でのリラブドも浸透しにくくなると思うので。まずはバブアーに宿る、英国のサスティナブルなスピリットというものに、触れてほしいというのが願いですね」。
見逃し厳禁! 10/19(木)からRe-loved Beaufortの
抽選キャンペーンを開催
リラブドビューフォートは展示されたのち、5着のうち1着を、オンライン抽選を経て、プレゼントするというキャンペーンを実施。応募方法は下記をご参照ください。ちなみにプレゼントされるモデルは下の一着。ワックスコットンの経年変化、パッチワークの処理、裾のレザーパイピングまで、ムード満点!! ぜひぜひ、応募だけでなく代官山店にも、その姿を拝みに行ってみてくださいね。
当たるのはこれ!
応募方法
概要:5着のRe-loved Beaufortのうち1着を抽選で限定1名様にプレゼント。※参考サイズ40相当
抽選期間:10/19(木)~10/31(火)
応募フォーム:こちらから!
応募資格:バブアー公式オンラインストアのメルマガ会員に登録した or している方
問い合わせ先/バブアー パートナーズ ジャパン
☎03-6380-9170
写真/丸益功紀(BOIL) 若林武志 文/桐田政隆 編集/鍵本大河(Begin)