特集・連載
“民藝に精通するレジェンドバイヤー” テリー・エリスさんの一生モノ3選
とことん使える一生モノ また値上げぇ~!?と、こっちが音を上げてしまいそうな昨今の日本経済……。でもしょげてばかりじゃいられない。モノ好き賢者の成功体験を聞きながら、結局得する「一生モノ」をオールジャンルで紹介します。 この記事は特集・連載「とことん使える一生モノ」#03です。
「トラディショナルというだけが民藝の魅力ではありません」―モギ フォークアート ディレクター テリー・エリスさん
雨がしとしと降るロンドンに住んでいましたが、向こうの天気は急変することがありません。日本では急に激しい雨が降ることが多いでしょう? そこで頼りになるのが、パラブーツのミカエルです。
ノルヴェイジャン製法に加えて、タンが左右のアッパーに繋がった作りだから、水が入ってこないんですよ。あまりに便利なので、色違いで3足持っています。今ではもう必需品。ソールを何度も張り替えながら長く愛用していますが、今履いているこれもそろそろ張り替え時かな。
日本で夢中になったものといえば、こけし。宮城県の鳴子温泉の近くに日本こけし館というミュージアムがあり、30年近く前の寒い雪の降る日にここを訪れ、こけしの面白さを知りました。
調べれば調べるほど奥の深い世界で、地域によって系統や作りも全然違うんです。青森のものはちょっとだけアイヌの着物の要素が入っていたりね。違う作家さんのこけしをいくつか並べて、その表情や質感の違いを楽しみながらコーディネートするのもおすすめですよ。
一生モノといえば、“益子”という街とも生涯を掛けて付き合っていきたい。これだけクラフトと結びついた街って、どこにもないですよね。
東京から日帰りで行けるので、窯元や作家さんが今どんな焼き物を作っているのかを、頻繁に見せてもらえる。僕たちからもアイデアを伝えたりしながら、そうして新しいモノが生まれていくのが、楽しくて仕方ないんです。
民藝に精通するレジェンドバイヤー
モギ フォークアート ディレクター
テリー・エリスさん
ビームスのバイヤーとして長年にわたり活躍。「フェニカ」ディレクターを経て2022年、北村恵子さんと高円寺にショップを開店する。
①パラブーツのミカエル
「日本の気候や文化にジャストフィットする一足」
30年前からミカエルを愛用するエリスさん。こちらは色違いで3足あるうちの一番新しい一足。「急な天候変化の多い日本では、雨に強いこの靴を履いていると安心。スリッポンとまではいきませんが、脱ぎ履きがしやすいところも日本の生活に合っていると思います」
②日本各地で収集したこけし
「顔も色も模様も異なるこけしはコーディネートも楽しい!」
30年にわたり収集、インテリアとしてコーデを楽しんでいるというこけし。「職人の佐藤康広さんとお会いして世界が広がりましたね。ブルーの“インディゴこけし”は、彼にオーダーして生まれたもの。背の高いこけしは、青森の有名な職人、盛 秀太郎さんの作品です」
③栃木県の益子
「40年間モノ作りをともにしてきたもっとも身近なクラフトの街」
最初は興味から、後に仕事として日常的に訪れるようになった益子。手に持ったマグは濱田窯にオーダーした最新作だ。「ハケ目という技法で模様を描いているのですが、ハケ目の施し方と茶色が新鮮。古いモノと新しいモノを同時に見られるのも、益子の魅力です」
靴/パラブーツを代表するチロリアンシューズ。現行品が7万9200円(パラブーツ 青山店)
こけし/写真のこけしはエリスさんの私物だが、ショップではさまざまなデザインのこけしを展開。佐藤康広さん作のこけしが3850円〜。
益子(焼)/伝統の登り窯も擁する濱田窯にオーダーしたマグカップが3630円〜(モギ フォークアート)
※表示価格は税込み
[ビギン2023年9月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。